親の同伴なく米国への入国を試みる未成年の移民が米南西部のメキシコ国境に押し寄せ、人道的な移民政策を掲げるバイデン米政権が苦境に立たされている。移民に強硬だったトランプ前政権からの政策転換に移民らは期待するが、収容施設は逼迫(ひっぱく)し、劣悪な環境下に置かれている。「人道的危機」(ペロシ下院議長)ともいわれる状況には民主党内からも批判が出ている。
米税関・国境警備局(CBP)によると、南西部国境で2月に入国を試みて拘束された移民の数は10万441人で、1月に比べて28%増加した。過去1年で最少だった昨年4月の約5・9倍に上る。
この中でも、親の同伴のない未成年者は1月から6割の大幅増加となった。米CNNテレビによると、こうした未成年者で、CBPに拘束後、国境地帯の施設に収容されているのは4000人以上に上るという。
バイデン大統領は米ABCテレビとのインタビューで「(国境を)越えてこないで」と訴え、サキ大統領報道官も記者会見で「国境は開かれていない」と繰り返すなど、政権は移民の増加に危機感を強めている。
移民の出身国は、主に中米の「北部三角地帯」と呼ばれるグアテマラ、ホンジュラス、エルサルバドルが中心で、新型コロナウイルス流行に伴う経済情勢の悪化やハリケーン被害が原因とされている。
特に未成年が増えている背景には、人道的見地からバイデン政権が未成年者を送還せずに保護していることがあるとみられる。法律では72時間以内に厚生省に引き渡して親族などを探す必要があるが、同省側の施設は新型コロナ対策の影響で空きがなくなっており、移民らは国境地域の施設にとどめ置かれている。
共和党のマッカーシー下院院内総務は「この危機は新政権の政策によるものだ。バイデン(大統領)による国境危機と言わざるをえない」と非難。身内である民主党のカンナ下院議員は、劣悪な環境にとどめ置かれている状況に「人権侵害だ。われわれは彼らの入国申請を認める必要がある」と主張している。 産経新聞