垂秀夫駐中国大使は中国から強い抗議を受けた(写真・時事通信)
8月22日、中国外務省の汪文斌副報道局長は記者会見で、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出決定に「汚染リスクを世界に拡散するもので、強く反対する」と日本政府を批判。処理水について「核汚染水だ」とあらためて主張し、「海洋の環境や食品の安全を守るために必要な措置を取る」と表明した。
同省は同日、垂(たるみ)秀夫駐中国大使を呼び、日本政府の決定に抗議。垂氏は中国側の抗議に対し「科学的根拠に基づかない主張をおこなっていることは残念だ」と反論した。
中国の影響下にある香港政府トップの李家超行政長官も同日、放出決定に「強い反対」を表明。香港政府高官は、福島や東京など10都県の水産物を24日から輸入禁止とすると発表した。中国メディアによると、マカオ政府も10都県からの水産物や野菜、果物などの輸入を禁止するという。
中国はすでに7月上旬から、日本から輸入した水産物に対し全面的な放射性物質の検査を開始。中国税関の発表によると、7月に日本から輸入した鮮魚(切り身を除く)は、2263万元(約4億5000万円)で、前年同月比53%の大幅減となっている。
自民党の小野寺五典元防衛相は8月20日、『日曜報道 THE PRIME』(フジテレビ系)に出演。科学的根拠を示さず処理水放出に反発している中国に対し、「中国は政治的に利用している」と述べたうえで、こう批判した。
「危険だ、危険だと言っているが、中国や台湾の漁船は、大挙してサンマを獲りに来ている。言っていることと、やっていることがまったく違う。外交的にこういう矛盾を指摘して、政治的にしっかりと対応すべきだ」
近年、サンマ漁では記録的な不漁が続いている。その原因としてあげられるのが、海水温の上昇で魚群が北方海域に移ったことに加え、中国や台湾の大型漁船による乱獲で資源量が減ったことだ。
8月21日には、北海道の札幌市中央卸売市場で、サンマが初競りにかけられ、1kg23万円、1匹あたりおよそ2万8000円の高値がつけられた。
同日に東京の豊洲市場に初入荷したサンマの卸値は1kg20万円、1匹あたりおよそ2万5000円で、同市場のサンマとしては過去最高値となった。
中国が全面的な放射性物質の検査で事実上、生鮮魚の輸入を制限し、香港が10都県からの水産物を輸入禁止にする一方、日本近海で漁を続けていることに、SNSでは批判的な声が多く上がっている。
《処理水流すから、危険だと言ってる中国は日本近海に漁業に来んな》
《処理水の海洋放出にブチ切れてはいるんだが 開始後に日本近海で漁業やってたらそれはそれで酷い話になりそうでなぁ 表向きは非難しつつも自分らが獲る分にはお咎めなしか下手すると産地偽装(日本近海で漁をしてないと言い張る)しそうでねぇ》
《中国、これを機に、処理水が広がる海域での漁から撤退してくれたら良いのに》
日本からの輸入を制限する一方、日本近海での漁を続ける中国の二枚舌には、誰しもが疑問を抱くところだ。
【パリ=三井美奈】24日にも始まる東京電力福島第1原発処理水の海洋放出をめぐり、欧州の主要メディアは放射性物質トリチウムを含む処理水の安全性について詳報した。23日付仏紙フィガロは1面で「中国は放出に反対しているが、健康や環境への影響は取るに足りないレベルになる」と伝えた。
欧州連合(EU)は先月、福島第1原発事故後に日本産食品に対して発動した輸入規制を撤廃したばかり。フィガロ紙はフランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)の専門家の話を引用し、放出されるトリチウムの量は年間22兆ベクレルで、韓国の古里原発のほぼ半分、中国の秦山原発の6分の1に相当すると紹介した。フランスで使用済み核燃料を扱うラアーグ再処理施設では1京ベクレルを超えており、「比較するのがバカバカしい」レベルだと位置付けた。問題は健康被害よりも、日本食品のイメージだとして、漁業者が処理水放出を強く懸念している現状を報じた。
仏紙ルモンドは、国際原子力機関(IAEA)が安全基準に合致すると位置付ける中、中国が処理水放出に強く反対し、韓国でも反発が広がっていると紹介した。日本政府は英語、中国語、韓国語などで情報発信しながら、懸命に反論していることを伝えた。日本では「中韓の批判は偽善的という批判もある」とした。
福島第1原発事故後、「脱原発」を決めたドイツでは、環境保護団体が処理水放出に失望を表明し、日本が原発再稼働に動くことに抗議したことを公共放送ARDが報じた。一方で、フランクフルター・アルゲマイネ紙が、福島沖でとれた魚を食べても「トリチウムは体内で蓄積されることはない」とする放射能学者の解説を掲載した。
産経新聞
23日午前10時半ごろから、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の領海に中国海警局の船4隻が相次いで侵入し、同日午前11時55分ごろから順次、領海外側の接続水域に出た。中国当局の船が尖閣周辺で領海侵入したのは今月20日以来で、今年26日目。 領海外側の接続水域を含め、尖閣周辺で中国当局の船が確認されるのは19日連続となった。
産経新聞