※2010年07月26日の記録より
「さめざめ」といっても、ルーベンスの絵を見ながら、愛犬と共に少年が短い一生を終えた場面を見て、はらはらと涙を流して泣いているのではない。
地方によっては、「わにわに」であり、「ふかふか」にもなるだろう。
察するとおり、「鮫々」である。宮城の県北で、岩手との境にある「気仙沼」へと、所用で向かう夫にくっついて行ってきた。
以前に行った時は、霧のたちこめる中で、神々の上陸したという言い伝えの岩場もあり、別世界へと足を踏み入れたかの様な、幻想的な雰囲気だった。
今回は空と海は青く、木々の緑も町も、どこもかしこも輝いて鮮やかである。
ふと、丸干しイワシを思い浮かべ、自分が干物になってしまいそうだなと、潮風の吹く強い日差しに、帽子の下から汗が流れる暑さの中で、夏の海はやはり爽快であった。
影を濃くして、輪郭を鮮明にする強い日差しに、港に停泊する船の白さも際立っていて、海の表の揺れるのが銀色に輝いており、その様を眺めて気分も清々しくなる。
さて、夫が所用を済ませる間に、一人で南気仙沼駅前の「仲町」あたりをぶらぶらし、「リアスシャークミュージアムと海の市」まで来て館内を廻って歩いた。
丁度、そろそろ昼餉にしませんかと、声を掛けるようにお腹が鳴った頃、夫と合流。
海の市にも、色々と美味しいものがあり、以前に2階のレストランでメカジキステーキを食べたが、今度は、少し先の所にある「お魚市場」で食べたいものがあったので、足を伸ばした。
今回は、「お魚市場」内の食事処「鮮」での、揚げ物や焼き物にフカヒレと、鮫々の昼餉が我らの目当てである。
シャークナゲットと、
手ごろな値段で提供されるフカヒレラーメンや
シャークステーキを頂くのだ。
日頃つましく暮らして、年に数回ご馳走を食べるという、庶民のささやかな楽しみを存分に味わう。
とはいえ、物凄く高価ではなく、この鮫々の昼餉は、定食や麺とナゲットを、合わせて2500円程で食べられるという嬉しい値段である。
弾力の有る、歯切れ良い食感のフカヒレはもちろんだが、下ごしらえで適度に水分を取った鮫の身も、しっとりとした食感で、鯵のような魚の旨みがあった。揚げ物も焼き物もとても美味しい。
シャークナゲットは、持ち帰りもできて気軽に食べられる品だ。ほんのり香る香辛料と揚げたての芳ばしさに、一つ食べればまた一つと手が伸びる。
毎年、何とか時間をやりくりして、お盆休みには故郷を訪ね、父母と一緒にあちこち出かけてみるのだが、今年は気仙沼に行こうと決めているのだった。
※現在のお魚いちば(2011年12月29日の記録より)
津波で、売り場の1階全てが浸水し、破損したという。その後、職員の方々が懸命に土砂を片付け、店の改装と修繕を行うなどし、2011年7月に再開している。
売り場の加工品は、以前より限られた物になるが、新鮮で見事な魚が並ぶ様からは、以前のように三陸の海の豊かさが伝わってくる。
店内の奥にあった食事処「鮮」は、「港町レストラン鮮」と名を改め、献立も新たにして再開。
以前は、海の市の店にもあったが、海の市もお魚いちばも、津波の影響で休止したため、一度メカジキの「メカステーキ」は見かけなくなった。しかし今、再開した「港町レストラン鮮」の献立にある。
かつてのシャークナゲットは見当たらない。
だが、フカヒレラーメンは今も大事な気仙沼の味として提供されている。
「鮮」では、フカヒレスープを使ったあんかけ丼や、新鮮な刺身の乗った丼の他、「気仙沼ちゃんぽん」や「港町ロコモコ」などの新たな品も作り出されている。