福井7人の工芸サムライ

福井県にある国指定7つの伝統的工芸品の職人やモノづくりや産地、福井にまつわる事がらをご紹介します。

鯖江のメガネは板から作られているの知っていましたか?

2019-07-20 07:49:30 | ブログ

鯖江のメガネって最初はどんな形状でしょう?

歩み行程

めがねは板から作られている画像を探していたらお客さんである
マコト眼鏡様のポスターが良い見本でした。

鯖江プラスチックメガネの製造工程

ポスターの写真に沿って説明します
  1. 畳一枚くらい大きなプラスチック板材をメガネサイズの短冊状に切る
  2. 1の板を先アール付け(湾曲させる)
  3. メガネに合わせた内径削り+業界用語でヤゲン入れ(レンズを入れる溝を掘る事)
  4. メガネに合わせた外形削り
  5. 蝶付け  ※鼻パットに削ったものを貼る場合が多い
  6. 完成


実は5-6の間には

  • 丁番埋め込み
  • シルク印刷
  • レンズはめ込み
  • 研磨
  • ねじ込み
  • 調子取り
  • テンプル加工
  • シューティング

    などなどなど、、あります。(いつもメガネの行程を書くときは行程が多すぎて嫌になります。

だいたいプラスチックのメガネで工程が150〜200工程くらいあるのではと言われています。


チタンメガネもそうですが大半は板状の材料から削り出してメガネにしていきます。

板から作られるメガネ以外には最近ではアジア産のビヨンビヨンの樹脂製のメガネがあります。メガネが作れる金型にドロドロに溶かした樹脂を流し込んで大量生産されています。
ウルテム

メリットは行程が少ないのでメガネを作れる金型さえ作れば安くあがります。
ただしフィッティングと言われる調整ができないのでメガネが斜めになったり
その柔らかさゆえレンズが飛び出てしまうことがあります。

 詳しい記事はこちらに

www.yumakumamoto.work

 

メガネのまち鯖江で使われる板・メガネ材料の写真

  大理石のようなマーブル調のメガネ材料もあります。 

 作り方はこちらから

www.yumakumamoto.work

 



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上記の色違いのメガネ材料です。

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フォークリフトとメガネ材料を並んで置きました。
大きさは分かりますか?

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 掲載した大きな材料はイタリアのメガネ材料職人の手作業で作られます。
大きさは畳1畳分ほどあります。

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 こちらはピアスを作ったのですが、まず材料をサイズに直角に切断します。

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 バレル研磨に入れるとツヤが出て、カドが取れます。
見違えるほど綺麗になります。

 

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このツヤを出す製法はメガネを作る技術を使っております。
逆にツンツンにカドを尖らせた(エッジを効かせた)プラスチックメガネは加工が難しいのです。

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 このように鯖江のメガネは畳1畳くらいある大きな板から、
何百ともある工程を経てメガネになるのです。

その間に各職人さんの手作業が加わると同時に職人の想いも込められています。
約110年続いているメガネの産地では外部の方に紹介すると意外な製法で作られている事も多かったです。

今ではメガネに使われていたチタンの細微加工技術を使った医療業界への進出も目立ちます。メガネも作れる鯖江という事で異業種への進出も鯖江のこれからの課題です。

先人から培った技術を世界に
 

 

 材料の大きさ

www.yumakumamoto.work

 

 材料の着色の仕方

www.yumakumamoto.work

 

メガネ材料・技術を使った靴べら 

www.yumakumamoto.work

 

金属メガネの作り方 

www.yumakumamoto.work

 

 

www.yumakumamoto.work

 

 

www.yumakumamoto.work

 


グニャグニャ眼鏡ウルテム、TR90の違いって?

2019-07-17 20:13:55 | メガネ

どんなメガネをかけていますか?

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 柔らかい素材のメガネとは・・・
踏んでも壊れないというようなメガネがありますね。
小さなお子様にメガネを壊されるので、とにかく耐久性の強いメガネが欲しい、スポーツとかでボールが当たっても壊れないメガネが欲しい。そんなメガネユーザーに知って欲しい豆知識です。

柔らかいメガネ素材の材料特徴

ウルテム:SABIC・本社サウジアラビア 
TR90    :EMS・本社スイス 

素材が共通していること
  • 本社が外資系
  • 原材料が石油系
  • 射出成形※で製造される
  • 金型はが高い
  • 強度な衝撃にも耐える
  • 軽い
  • デメリット:柔らかいためフレームからレンズが飛び出したり、 芯がないためフィッティング(顔のカタチにあった調整)ができない
  • 芯がないためフィッティング(顔のカタチにあった調整)ができない


射出成形

ウルテムの多くはこのようなマークが印刷されているが
一部のメーカーが印刷しているだけでこのマークがなくてもウルテムは供給可能である。
ウルテム

柔らかい眼鏡・ウルテムが売れたきっかけ

実はウルテムのメガネは数年前から存在していたが
当時はオモチャみたいだということで相手にされなかった。
きっかけは某メガネ量販店が大体的に宣伝したことから始まる。

金型が高価なため射出成形が得意な韓国生産がほとんどである。
最近では中国も技術進歩し安価な金型ができ生産も一部できるようになってきた。

鯖江でも昔は射出成形会社がたくさんあったが金型、人件費の安い海外生産に移行していった。
いまでは鯖江に数社と奈良県に存在するだけとなった。
ウルテムとTR90は同じ樹脂系で製造方法※も特性も似ているが
決定的な違いは色、値段、耐熱性である。

※射出成形とは金型を作ってそこにドロドロにした樹脂を流し込み冷えたら製品になる製法です
※韓国にもテグというメガネの産地がある。韓国は射出成形とステンレス加工が得意です。

 

ウルテムの特徴 
  • 異業種が主体
  • メガネの歴史は浅い
  • 材料が黄色の透明
  • 耐久性・耐熱性・柔軟性といった点に優れている
  • 宇宙関連で使用されていた
  • とにかく柔らかいこと
  • 金型が高い

大きく広げたり折り曲げても壊れないため1日中フィットした快適さで過ごせます。
そのため、メガネ界の中では最も注目を浴びる特殊プラスチック素材です。
原材料に濃いカラーを混ぜればクリアーのフレームも製造可能。
成形大国の韓国で13~14年前から塗装、印刷技術を改良させ、進化させてきました。
最近は中国でも真似する工場もあります。
こちらの写真は着色する前の黄色いものです。右の写真は透明な色ができないので不透明な着色をしています。

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TR90の特徴
  • 耐熱性はウルテムより低い 
  • メガネの歴史は古い 
  • 材料は透明
  • クリア系の色が使える
  • メガネの装飾技術が進化している 

主に使われているのが「グリルアミドTR900」。
軽くて、安くフィットしやすいため、数多く商品が出
ていますが、アレルギーを起こしやすいといわれています。また独特の光沢があるためチープなイメージでが技術も進歩し印刷や2層塗装などいろいろな技法が出てきている。

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柔らかい眼鏡ウルテムとTR90の値段の違い

すべてのことに言えますが誕生が古いものは競合先が出て、コピー品が出回ります。そうなると価格競争が激化し価格が落ちていきます。
同じような道理で材料としてのTR90は底値まできている状況である。
ただ、金型の技術も発達してきており、より複雑なデザインができるようになってきた。
今後TR90を使った複雑なデザインを使ったメガネが市場を賑わす可能性がある。
鯖江のメガネ産業の市場が小さくなっているのは、海外産の安い樹脂系が市場シェアを奪っているのが大きな原因である。
残念ながらしばらくこの傾向は続く。
いずれにしても大量に同じ精度のメガネができるので
大手の大量生産向けのメガネとなります。

めがねのまち鯖江は価格競争になる商品を作るのでなく、先人たち自分たちが培った職人技で世界との差別化を図っていくのが世界の鯖江が残る道です。


鯖江のメガネ工具は手作りが多い?

2019-07-15 11:05:30 | ブログ

眼鏡を作るときの工具について

 

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今回は、眼鏡の部品を作る際に使われる工具について紹介します。

 

 いきなりですがこれなんでしょう?

実は、プラスチックメガネのテンプル製造に使われます。
アセチの尖ったカドを落としたり、キズを落としたりするものです。(下記写真参照)
削るというよりか、削ぎ落とすという感覚が近いです。
周りのゴミみたいなものは削り取られたアセチ(メガネ材料樹脂)です。

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メガネの作業工程も業界用語があります

めがね業界用語で【ケガキ、キサギをかける】という。

目的はバレル研磨(通称:ガラ)でも落ちない傷等を手で削り取っていきます。
バレル研磨とは長時間回転させてアセチのカドを取っていきます。
こちらがバレル研磨。

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手磨きだと時間がかかるのと、手作業のムラができるのでガラ研磨は必ず入れます。

メガネの工具はどうやって手に入れる?

こういった専門的な道具は実は売っていなく、
みなさん手作りで自分たちの手に合うように作っています。
鉄工所などで刃の無くなったノコギリの残骸などを使うらしいです。

ちなみに当時、私が所属してアクセサリー開発に携わっていた時の商品。
ブレスレットでもこの技法が使われいます。

ブレス

 

最後に。。
今では私はメガネ業界から離れてしまったのですが
過去に投稿したメガネ業界の裏側を改めて現代に合わせて
紹介できたらと思っております。


伝統工芸のこれから?福井7人の工芸サムライ

2019-07-06 09:44:14 | ブログ

 

【福井7人の工芸サムライ】福井・匠百景

伝統工芸の世界は苦しい状況が続いています。
30年前に比べ従事者、売上とも1/5という状況です。
そこでどうしたら打開できるか考えてみました。


2017年にリメイク侍を立ち上げ
その後の結果を報告します。

まず、福井県に7つの国指定の伝統工芸があるのご存知ですか?

福井県には国指定の伝統的工芸品が7つあります。

 私たちは「福井の伝統工芸を次世代に!」

をモットーに2014年から地元福井で活動しています。

その結果、伝統工芸が本当に売るのが厳しい時代に突入していると実感しました。

 

その理由は・・・

▫️価格の安い100円ショップなどの台頭

アジア製安価な商品クオリティが上がって十分私たちの期待に応えてくれます。

▫️ネット販売の普及=リアル店舗の苦戦

私たち伝統工芸品のメインの売り場は百貨店でした。
外出して買わなくてもネットでアジア製のクオリティの良い商品が買える。

▫️高い、遅い、受注ロットがある

この三重苦は今の市場に向かうには厳しい状況です。
それは新しいネットで仕入れも、オリジナル発注もできる時代になったからです。

  

わかりますよね?

【2017年に書いたブログから抜粋】

「モノを売る」から「技術を売る」

モノを売る以外に商売になる方法を考えた時、

私たちは伝統工芸士という国から認められた技術があるのだと。

毎日、毎日何十年と鍛錬された技術があるではないかと。 

技術を売ることができないかと新しいビジネスモデルにチャレンジしました。

単純にモノを売るより難しいことは沢山ある。

お客様の意向をうまく汲み取れるか、お客様が満足出来るものに生まれ変われるか。

やってみないとわからない。

思った以上に時間と手間がかかるという前情報もある。

福井でお金を循環させる地元ならではのビジネスになればと思う。
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当時は伝統工芸の新しい取り組みとして
地元新聞・メディアも取り上げていただきました。

職人の技集結家具リメイク・福井新聞様

朝日新聞様は伝統工芸について私個人にも取材いただきました。

朝日新聞様は二日連続で掲載いただきました。

本当にありがとうございます。

伝統工芸の侍職人が家具修繕・日刊県民福井さま


その後WBCさんからも取材依頼があり、
取材を受けました。

ただ、伝統工芸品、家具のリメイクには大きな障害がありました。

▫️技術的な問題

新しく作るより、商品のクセ、リメイクしたい商品を作った職人のクセ
を踏まえて修正することはパズルの謎解きのようで難しかった

▫️コスト、納期がかかる

当然パズルを解いてから作業となるので
時間がかかります。そうなると当然コストも上がります。

▫️破損の恐れ

貴重な家具、豪華な家具などは細かく高度な技術を要する
高価=技術が難しい、その上パズルを解かないといけない。

▫️まるで注文住宅

貴重な家具は依頼者の思い入れが多く
注文が多かった。コストがすごくかかる

結論、高価な家具は現状維持がいいのではないか。
そして万が一依頼主のイメージと違うとなった場合元も子もない。
最初からオリジナル家具として作るという代替案が多くなりました。

伝統工芸のリメイクとは形は違えども
「技術を売る」というコンセプトには間違いありませんでした。
これからの伝統工芸は自分の確かな腕を売る!
そうシフトしていくべきではないでしょうか。

わかったけど伝統工芸の技術売るのに
「集客どうするの?」「どう仕事取るの?」「どう宣伝するの?」
当然ですよね。

それは次回、書こうと思います。