胃生検の小部屋 Cottage for Gastric Biopsy

胃生検からはじまる消化管病理の美しい世界

平滑筋が絡みつく (線維筋症、fibromusculosis)

2008-09-10 | 消化管全般
 粘膜筋板から平滑筋束が固有層内に伸びてくることがあります。英語の教科書では
「fibers of the muscularis mucosa extend high into the lamina propria」
などと説明されている現象です。
 ・線維筋症
 ・fibromusculosis
 ・fibromuscular obliteration
等という用語を病理医がしばしば用います。例えば、MPSと言えばfibromuscular obliterationと、○○のひとつ覚えになっています。しかし、平滑筋束が粘膜筋板から固有層に伸びてきて上皮に絡みつく所見は、程度の差はありますが、MPSだけではなく色々な病変でみることができます。例えば
(1) Chemical/reactive gastritis (欧米的にはChemical/reactive gastropathy):逆流胆汁やNSAIDsなどによる胃炎です。
(2) 憩室の周囲にみられるポリープ様組織:redundant tag, redundant mucosal fold, polypod tag, nipple-like tagなど呼ばれています。
(3) Inflammatory myoglandular polyp(東北の大親分のポリープです)
(4) MPS
(5) Peutz-Jeghers(型)ポリープ
などです。
 (5)は過誤腫ですからちょっと話が別になりますが、(1)-(4)には共通性があります。いずれも物理的・化学的な慢性刺激がその発生に関与している可能性があるのです。(2)や(4)では機械的牽引力という言葉でよく説明されます。(3)のIMGPについて東北の大親分は「微小な過形成病変に慢性刺激が関与する・・・」と説明されています。他にも脂肪腫の先っぽの粘膜に似たような所見がみられることもあります。
 写真は逆流胆汁が目立ち、発赤の強い前庭部粘膜からの生検組織、Chemical/Reactive gastritisです。腺窩上皮過形成と平滑筋の増生が目立ちますが、炎症細胞浸潤はごく軽微で、H. pyloriもいません。


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