リュウ庵

尼崎市住む猫大好き人間。
駄文を書くのも好きです。

令和の今、読むべき一冊

2019-05-05 22:32:42 | 日記
平成から令和に移った今、まことにタイミング良い一冊に出会った。
 
朝井まかてさんの力作「落陽」(祥伝社文庫)である。
 
文庫本の帯に記された短評は、
「平成の天皇から令和へ。まさに、今読むべき1冊」
とあり、
「明治天皇崩御直後に巻き起こった神宮造営の巨大なうねり。
日本人は何を思い、かくも壮大な事業に挑んだのか?
天皇と日本人の絆に迫る著者入魂作!」・・・と続く。
 
   
 
明治天皇の御陵は京都伏見の桃山陵になったため、政府は東京に
ご遺徳をしのぶ場として明治神宮創建を計画、総力を挙げて取り組
む。
大勢の意見は「神宮の森は森厳とした杉と檜など針葉樹林がふさわ
しい」だったが、林学者たちは「東京は気候、土壌的に針葉樹は適さ
ず、常緑広葉樹でなければ育たない」と主張、人工の広葉樹林造成
に決まる。
全国から募った献木は2万本、150年後に神苑を包む森完成めざし
て壮大な植樹計画に着手したのは、ご大葬と新天皇即位が終わった
大正9(1920)年だった。
 
明治神宮の森をつくる運動は、日露戦争の戦死者に心を寄せる明治天
皇の苦悩、明治神宮創建運動、風雲急を告げるヨーロッパ情勢などを交
えながら、新聞記者たちを巻き込み大きなうねりとなった。
小説「落陽」は明治から大正にかけての時代のうねりを書き進む。
 
明治神宮の森は学者の150年の予想よりはるかに速く、100年もしない
うちに人工林が自然林化され、22万坪の広大な土地に247種、17万本
の広葉樹が神域を覆い、現在も明治帝の御霊を護っている。
 
平成から令和へ…日本中が新時代の幕開けをこぞって祝賀したように、
明治から大正にかけての大事業、明治神宮創建もまた大きな時代の節
目となったのだ。
 
京都御所の大正天皇の即位を祝う大群衆は15万人、令和の新天皇を
祝う皇居一般参賀には14万人・・・
直木賞作品「恋歌」の作家は、「落陽」で令和時代の「開かれた皇室」と
日本人の新しい絆のあり方を、問うているように思える。