五輪「日本大躍進」報道のウソ、日本がメダル量産国になれない理由

2018年02月23日 | 政治社会問題
五輪「日本大躍進」報道のウソ、日本がメダル量産国になれない理由
2/22(木) 6:00配信 ダイヤモンド・オンライン
五輪「日本大躍進」報道のウソ、日本がメダル量産国になれない理由
「メダル量産」などという報道に酔うばかりでは、本当の量産国になるのに必須の条件と言える競技人口増加や選手サポートの充実といった、必要な対策が疎かになる恐れがある Photo:REUTERS/AFLO
 平昌五輪を巡る報道にインチキが散見される。日本はメダル量産国ではないのに、見出しに「メダル量産」の文字が踊り、競技人口が少ない種目なのに「戦力が厚みを増している」との解説も。戦中の大本営発表にそっくりな報道に慢心するばかりでは、不足している競技人口の増加や選手サポート体制強化という、本当の量産国になるために必要な課題を見えなくさせる。(ノンフィクションライター 窪田順生)

● 日本は「メダル量産国」ではない マスコミ報道のインチキぶり

 なぜこの国のマスコミは、アスリート個人の功績を「日本の功績」にすりかえようとするのだろうか。

 ご存じのように、テレビや新聞では朝から晩まで、メダリストたちの感動の瞬間をレポートしている。彼らの素晴らしいパフォーマンス、これまで歩んできた苦難、支えてきた周囲の方たちの絆を知って胸が熱くなった、という方も多くいらっしゃることだろう。筆者もまったく同じ思いだ。

 が、そのような個人にスポットライトを当てた報道に紛れ込ませるような形で、読者や視聴者が「日本ってすごいんだな」と錯覚してしまう、かなり盛りに盛った話があふれているのは、見ていて不安しか感じない。日本人を気分良くさせるためには多少の行きすぎたハッタリをかましてもお咎めなし、というあまり褒められない環境になってしまっているからだ。

 たとえば分かりやすいのが、先日の産経新聞だ。

 『日本メダル量産、最多タイ「戦力に厚み」 スピードスケート牽引 どこまで伸びるか』(産経ニュース2月19日)

 こう聞くと、なんとなく「日本の快進撃が止まらない」みたいなイメージを抱くだろうが、2月21日現在、平昌五輪公式ホームページの「Detailed Medal Standings」を見ると、日本は韓国、イタリアに続く11位。30個のメダルを獲得しているノルウェー(1位)や、23個のドイツ(2位)という本当のメダル量産国の背中すら見えない。

 国際オリンピック委員会(IOC)のデータで平昌以前の冬季五輪の獲得メダル総数を見ても、100個以上が当たり前となっている西側諸国と比較して日本は45個。ダブルスコア以上の差をつけられていて、アジア勢の中国・韓国(共に53個)よりも少ない。

 「そういうレベルなんだから、はしゃいだらみっともない」、とか意地の悪いことを言いたいわけではない。日本のウインタースポーツを盛り上げるためにも、お祭り騒ぎのような「自画自賛報道」だけではなく、冷静かつ客観的に自分たちの置かれた状況も解説すべきだと申し上げたいのだ。


● 「大本営発表」と見まがうばかりの 欺瞞あふれる自画自賛報道

 また、この産経ニュースの記事では「躍進の一因は、スピードスケート勢の復権だ」とうれしそうに述べているのだが、これもかなりビミョーなもの言いだ。

 「復権」とは、ひとつの時代を築き、栄華を誇った者が衰退して、また復活した際に使われる言葉だが、平昌以前の日本のスピードスケートのメダル獲得数は15個だ。オランダのように、これまで獲得したメダルが107個もあるような国が、低迷期を経て乗り越えたというのなら「復権」と言うのも分かるが、「まだまだこれから」というレベルにある日本が言うことに違和感を覚える。

 実際、オランダから見れば、日本は「スケート途上国」である。ソチ五輪後に、代表選手の強化のために招聘されたオランダのヨハン・デヴィット氏のアシスタントはこう述べている。

 「日本には才能に恵まれた選手はたくさんいたが、彼らはそれを生かすことができていなかった。日本は世界2位のスピードスケート大国になれる可能性を持っているのに、その可能性を生かしていなかった」(AFPBBニュース2月10日)

 ちなみに、「ショートトラック大国」だと自画自賛している韓国は、これまで同競技で42個のメダルを獲っている。日本の15個で「復権」はいくらなんでも盛りすぎだ。

 ただ、なによりもこの記事で筆者が危ういと感じるのは、「戦力に厚み」というタイトルだ。

 大会前はメダル候補だと思われていなかったフリースタイル男子モーグルの原大智選手が銅メダルに輝いたことを受け、JOC関係者による「戦力が厚みを増している」という分析から引用したわけだが、これは太平洋戦争の大本営発表にも負けず劣らずの誇張ぶりである。

 スキーの競技人口は激減しており、フリースタイルモーグルとピンポイントになるとさらに厳しい。ソチ五輪時には600人弱ではないかと報じられている。小平奈緒さんや高木美帆さんのようなスターを輩出しているスピードスケートですら、笹川スポーツ財団のホームページによると、「競技人口は約2500人」だという。

● サポート体制が不十分な中で メダルを獲った選手の凄み

 日本のマスコミが勝手にライバル視しているオランダは、日本の8分の1程度の人口しかいないにもかかわらず、スピードスケードの競技人口は1万人以上。複数のプロチームがあって切磋琢磨している。こういう国が「戦力に厚みを増してきている」と言うなら分かるが、ペラペラの薄い戦力層しかない日本が言っても強がりにしか聞こえない。

 なんてことを言うと、「こいつは反日サヨクだ!」、「メダリストの活躍を素直に讃えられないなんて日本人じゃない!」とすさまじい誹謗中傷にさらされてしまうので、断っておくと、筆者は日本代表アスリートや彼らを支えている方たちをディスっているわけではなく、彼ら個人の功績を、さも「日本の功績」のように語っている現状がおかしいと指摘しているのだ。

 平昌五輪に出場しているアスリートのほとんどは、自助努力で競技者人生を続けている。自分の限界に挑みながら、家族、友人、篤志家などに頼り、「資金集め」にも悪戦苦闘しなければいけない。

 小平さんの競技活動やオランダ留学費用などをサポートしていた相澤病院が注目を集めているが、大企業から支援を受けられるのは、フィギュアスケートの一部選手やプロスノボーダーのみなさんなど、ほんの一握り。なかには資金面で夢を諦めざるをえないプレーヤーもいる。

 強化費や代表選手のサポート体制も以前よりは整ってきているものの、いまだに日本のマイナースポーツは「個人のがんばり」に依存している、という動かしがたい事実がある。

 そういうブラック企業にも似た環境のなかで、小平さんや高木さんは、戦力の厚みもあり、国や大企業から十分なサポートを得ているメダル量産国の選手たちよりも素晴らしいパフォーマンスを見せたのだ。

 これは選手個人の努力はもちろん、それを支え続けた家族や周囲の人々の協力もあって成し遂げたすさまじい偉業である。もちろん、これまで冬季五輪で45個のメダルを獲得してきた選手たちや、残念ながらメダルに手が届かなかった選手たちにも同じことが言える。


● 「日本すごい」報道が スポーツ振興の邪魔になる理由

 だが、なぜか日本のマスコミでは、そのような「個人」を讃えながらも、ちょいちょい「日本メダル量産」とか「戦力の厚み」なんて言葉を用いて、「日本全体が成し遂げた偉業感」をぶっこんでくるのだ。

 「すごい」と評価されるべきは、小平選手であり、彼女の夢を支え続けた相澤病院や、スピードスケートの関係者という「個人」であり、「日本」がすごいわけではないのだ。メダルの数と色ばかりにこだわっているマスコミによって、それがいつのまにかごちゃまぜに語られるようになってしまうのだ。

 そんな屁理屈こねて面倒くさいヤツだなと思われるかもしれない。ただ、なぜ筆者が個人の功績を「日本の功績」とごちゃまぜにしてはいけないとここまで強く主張をするのかというと、マイナースポーツが今まで以上に衰退してしまうからだ。

 たとえば、今日にいたるまでのテレビ・新聞の平昌五輪報道で、みなさんはどれくらいの日本代表の名前を覚えただろうか。特に熱狂している方でなければ、メダルを獲得した8人にプラスして、レジェンド・葛西紀明さんや、フィギュア男女、「カー娘」くらいで、ざっと20人ほどではないか。

 しかし、平昌五輪で戦っているアスリートは124人いる。マスコミは「がんばれ日本!」と絶叫しているわりに、ほんのひと握りのアスリートの活躍しか報じていないのだ。

 つまり、アスリート個人の功績を「日本の功績」と混同してしまうと、どうしてもメダルの数や色に国力を重ねて、増えた減ったと大騒ぎする五輪報道に終始してしまうのである。

 これはサッカーW杯と同様に「愛国エンターテイメント」なので、「にわかファン」は瞬間風速的に増える。だが、その競技の面白さや、アスリート個人のパフォーマンスの偉大さを伝えているわけではないので、本当のファンは定着しない。当然、競技者人口も増えず衰退していくというわけだ。


● 選手個人のがんばりを ナショナリズムに利用するな

 ひたすら個人にのみがんばらせるという、ブラック企業のような発想で、スポーツ振興などできるわけがない。

 一方で「国力」によって、選抜されたアスリートをサイボーグみたいに強化するだけ、というのも考えものだ。かつてのソ連など共産圏諸国では、そうして悲劇のアスリートが量産された。東京五輪に向けて強化予算が増えて、才能のある子どもをサポートする体制もつくられてきているが、それだけでは不十分だ。愛国エンタメではない五輪報道が行われ、スポーツを真に楽しむことができるファンが増え、競技者の裾野が広がってはじめて、国家による後押しの意味があるのだ。

 今回の平昌五輪では、選手個人のがんばりとナショナリズムをごちゃまぜにしたことで、韓国と北朝鮮の南北合同チームが結成されるなど、さまざまな醜いトラブルがあったが、日本も同じ穴のムジナだ。個人の手柄を国がかっさらうような環境を改めない限り、東京五輪でも残念な報道が垂れ流され、世界に恥をさらすことになるだろう。

 日本人が大好きな「がんばれ日本!」という言葉は、実は1964年に公開された映画のタイトルに端を発する。これは「ナチスの宣伝五輪」といわれたベルリン五輪の記録映画「民族の祭典」から日本人選手の活躍を抜き出して編集したものだ。総指揮は、多くのナチス・プロパガンダ映画でメガホンを取ったレニ・リフェンシュタールがつとめている。

 まずはこの全体主義丸出しのスローガンから卒業することから始めないか。

窪田順生
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残業100時間超、残業代ゼロ、過労死認定も困難にー裁量労働制 先行事例から知る本当の怖さ

2018年02月23日 | 政治社会問題
残業100時間超、残業代ゼロ、過労死認定も困難にー裁量労働制 先行事例から知る本当の怖さ
志葉玲 | フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
2/22(木) 11:34
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第196回通常国会での施政方針演説。安倍首相は、働き方改革も言及(写真:ロイター/アフロ)

 安倍晋三首相が「一般の労働者よりも労働時間が短くなる」と国会で答弁したものの、その根拠となるデータが重大な誤りがあることが発覚、安倍首相が謝罪するという顛末で、にわかに注目されるようになった裁量労働制。安倍政権は、「働き方改革」関連法案の柱の一つとして、現在、一部の専門職のみに適用されている裁量労働制を、営業職などにも拡大しようとしているが、果たして本当に長時間労働の是正につながるのか?既に裁量労働制を導入しているITやデザイン、ゲーム開発など業界の現場では、どんなに長時間働いても、残業代が支払われず、一定の時間以外は労働したという事実すら無かったことにされるという、最悪のブラック労働環境となっているという。

〇「定額働かせ放題」の実例
 裁量労働制とは、実際の労働時間がどれだけなのかに関係なく、労働者と使用者の間の協定で定めた時間=「みなし時間」だけ働いたとみなし、労働賃金を支払うという制度だ。仕事の段取りや時間配分を自分の判断で決められる働き手が対象となり、SEや、デザイナー、メディア関係者などの19業務が対象となる「専門業務型」と、企業活動の企画や立案、調査業務などを行う「企画業務型」の2種類に大別される。

 裁量労働制は、一見、働く人が時間に縛られず、自分のペースで仕事ができるように見えるが、実際の案件では、労働者に選択の余地はなく、ひたすら働かせ続けるということが起きている。中でも最近、人々の注目を集めたのは、ゲーム制作等を手がけるIT企業サイバードでの労働争議だ。裁量労働制での労働問題の相談に応じている「裁量労働制ユニオン」の坂倉昇平氏が解説する。

 「私達が相談を受けたAさんは、2016年にサイバードに入社、専門業務型裁量労働制を適用され、1日10時間8分をみなし労働とし、ゲーム用ソフトウェアの創作を業務とすることになりました。ところが、『ゲームの体験イベントの開催』、『ゲーム宣伝用のサイトおよびSNS運用』など、裁量労働制が禁じられている仕事もさせられたりするなどして、時間外労働が100時間を超える月もあるなど、長時間労働を強いられました。しかし、どんなに働いても毎月の給料は変わらず、正に『定額働かせ放題』という状況に陥りました」

 


裁量労働制ユニオン@無料労働相談
@SairyoUnion
「裁量労働制なんて高年収の一部の労働者だけだろ?」という誤解があるが、間違い。裁量労働制に年収要件はない。今ユニオンで受けている専門業務型裁量労働制の案件の多くは、基本給が月20万円台前半で、年収300万円いくかどうか。誰でも対象にできる。

8:18 - 2017年11月18日
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いわゆる残業代ゼロ法と異なり、高収入でなくても「定額働かせ放題」

 「しかも、裁量労働制なのに、長時間労働で適応障害になったAさんが就業時間から大きく外れた出勤をしていたことを理由として、サイバードはAさんを退職勧奨で辞めさせています。同社では、就業時間が10~19時とされていましたが、裁量労働制の対象者については、雇用契約上は『基本とし労働者の決定に委ねる』とされていたにもかかわらずです」(同)。

 Aさんの相談を受けた、坂倉氏ら裁量労働制ユニオンは、渋谷労働基準監督署に申告。同署はサイバード側にも調査を行ったうえで、Aさんの労働実態が、本来の業務以外の仕事もさせられるなど、裁量労働制を適用できないものと判断。サイバードに対して2017年8月、行政指導を行った。これに伴い、裁量労働制を免罪符とした月70時間以上の残業や、残業代未払いも労働基準法違反として是正勧告された。

〇蔓延する裁量労働制の悪用
 坂倉氏は「裁量労働制の対象業務の規定自体が曖昧でザルであるため、ITやデザイン、ゲーム開発などの業界を中心に、裁量労働制が悪用される例が後を絶ちません」と言う。「しかも、労働相談を受ける側にも、裁量労働制について理解している人が少なく、Aさんのケースでも、サイバード側の弁護士、Aさんが最初に相談した法テラスの弁護士、東京労働局の斡旋担当の弁護士ですら、Aさんの業務に裁量労働制が適用されることの問題点に気が付かなかったのです」(坂倉氏)。

 Aさんの事例では、上司の指示で徹夜での業務を余儀なくされたりすることもあった。坂倉氏は「裁量労働制なので、本来、上司が指示できること自体がおかしいのですが、現実には働き手が裁量できない、というケースが多いのです」と指摘する。

 


裁量労働制ユニオン@無料労働相談
@SairyoUnion
先日、労基署に申告に行ったら「たとえ裁量労働制が適用されてる人でも、上司から「今日は何時までにこれをやれ、何時までにあれをやれ」って指示を受けてる証拠があれば、少なくともその日の裁量労働制は無効だから残業代を払うよう指導できます」と言われたので、皆さんも証拠をとっておきましょう。

20:52 - 2018年1月20日
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5,864人がこの話題について話しています
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いざという時のための証拠集めが重要。

〇裁量労働制で過労死認定が困難に!
 裁量労働制の恐ろしさは他にもある。「あらかじめ定めたみなし時間以上の労働は、労働とみなされず、企業側がタイムカード等、労働時間の記録すらしてないことが多々あります。つまり、膨大な量の仕事を押し付けられ、長時間労働の結果、労働者が過労死しても、それを立証することが非常に難しくなるということです」(坂倉氏)。厚労省の統計によれば、一部の企業で既に行われている裁量労働制で、2012年から2015年の間に13人の過労死が労災として認定されているものの、それですら、氷山の一角であるかもしれないということだ。

 安倍政権は「働き方改革」の一環として、裁量労働制の適用範囲を拡大しようとしているが、これまでの事例を観ても、むしろブラックな労働環境がさらにはびこることになりかねない。国会での審理に大いに注目する必要があるだろう。

(了)
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<ウィキ>「エンゲル係数」ページ凍結で編集不能 その訳は

2018年02月23日 | 政治社会問題
<ウィキ>「エンゲル係数」ページ凍結で編集不能 その訳は
2/22(木) 19:30配信 毎日新聞
<ウィキ>「エンゲル係数」ページ凍結で編集不能 その訳は
2人以上の世帯のエンゲル係数と消費支出総額
 ◇投稿履歴「首相答弁にそった改変側と阻止側の“編集合戦”」

 一定のルールのもとで誰でも自由に編集できるインターネット百科事典「ウィキペディア」で、生活水準を測る指標の一つとしてなじみ深い「エンゲル係数」のページが凍結され、編集できない状態となっている。投稿履歴をたどると、係数上昇の理由について安倍晋三首相が国会で答弁した直後、これに合わせて内容を改変しようとする側と阻止を試みる側の“編集合戦”が過熱していた。【和田浩幸】

【漫画で解説】ウィキペディアって誰が書いてるの?

 「エンゲル係数」は中学校で習う経済指標だ。家計の消費支出総額に占める食料費の割合で<一般に値が高いほど生活水準は低い>とされる。総務省の家計調査によると、2人以上の世帯の係数は2005年に22.9%で底を打ち、その後は横ばいが続く。第2次安倍政権以降は13年(23.6%)に上昇に転じ、16年(25.8%)まで4年連続で上昇。17年も高止まりだ。

 「これは物価変動のほか食生活や生活スタイルの変化が含まれている」。1月31日の参院予算委員会で、野党の「生活が苦しくなっている」との指摘に、首相はそう反論した。

 突然、ウィキペディアが書き換えられたのは翌2月1日午前。昨年10月の直近更新時は冒頭の太字部分を含む簡潔な説明だった。これが<現在では(係数の)重要度が下がっている>などと首相答弁を踏まえた内容に改変。経済小説が出典とされた。

 他のユーザーが<小説をソースに書かれることではない>と、すぐにこれを削除。今度は別の人物が<昨今では核家族や一人暮らしが増えて中食(なかしょく=弁当や総菜など)が増え、一概に値が高いほど生活水準は低いとは言えない>などと応戦。<外食は交際費や遊興娯楽費などに該当するので食費には入らない>と虚偽の書き込みをしたが、これも削除された。“編集合戦”は19回続いた。

 ニッセイ基礎研究所の櫨(はじ)浩一専務理事は「ここ数年の上昇は、所得が伸びない中で食品値上げの影響が大きく、生活が苦しくなったと見ることができる。高齢者や共働き世帯が増え、外食や中食が食費を押し上げているのは長期的要因だ」と分析。「今は食費以外に光熱費や医療費など不可欠の支出も多いが、所得上昇でエンゲル係数が下がるのは明らかだ。生活に密着した指標として今も重要な意味がある」と話し、<重要度が下がっている>などの改変内容を否定した。

 神戸女学院大名誉教授の内田樹さんは言う。「議論の土台となる事実が書き換えられると対話が成立せず、社会全体の知性が腐る。ファクトチェックに労力がかかり必要な政策論議も始まらない。道徳上の問題というより経済合理性を欠くと言うべきだ」
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