異形の仲間たち見聞録

私が見てきた精神疾患者たち

小説『呆け茄子の花 その十三』

2016年06月11日 05時33分11秒 | 小説『呆け茄子の花』

面接も無事終えて、後は結果を待つだけであったが、

尚樹は「合格するもの」と、勝手に思っていた。

自惚れでも他人から高評価を与えられた過去があったわけでもないのだが、

尚樹は十二分に三十数年間あまりにも重いものを背負ってきた自負があった。

案の定、結果は合格。

大學に入学してみると、以前の大學とは違い自然体でいられた自分があった。

「ここでなら4年間すごせるだろう」と。

しかし、病からくる「希死念慮(死にたいという思い)」は、頭の中で渦を巻いていた。

尚樹の中だけならいいものを回りの社会人学生にも訴えることさえあった。

時に体調が良い日などは、猛烈に資料をコピーし読みふける尚樹もいた。

いわゆる「そう状態・うつ状態」が、尚樹の中で表裏一体となっているのだ。

ただ、尚樹を自殺から思い止める最後のブレーキは

「どこで自死しようと、家族や他人に迷惑を掛ける」という一点だった。

 

  

その十四に続く