精神科のプログラムで「外部講師」としてではあるが、
毎週土曜一度の90分が唯一の「就業時間」であった。
尚樹は、自分が「健常者」のときに比べると、
とても「働いている」というものでは無かった。
そして、もう一つ彼が自身で「拘束時間」としていたのが、
卒業した大学の「もぐり」での講義受講であった。
ただ、問題は片足の尚樹は「もぐり」での受講は目立ちすぎたが
本人は「卒業しましたが、ひきつづき・・・」と、大学講師にことわって受講していた。
受講している講義の内容は「佛教における時間論」というあまりにも地味であったが
「重箱の隅をつつく」様な学びは尚樹が好むところであった。
この「二つの拘束時間」を除く時間がどのように混乱して乱れていても
寝て過ごすことはなかった。
内心「物足りなさ」を感じながら心は徐々に焦り始めていた。
その二十五に続く・・・