異形の仲間たち見聞録

私が見てきた精神疾患者たち

小説 『呆け茄子の花 その二十三』

2016年11月07日 21時31分41秒 | 小説『呆け茄子の花』

尚樹(なおき)には二つ年下の弟がいる。

尚尊(なおたか)という。

兄の尚樹とは違って、人付き合いは良いが気が強く暴力沙汰も気にしないたちだった。

その為、父親からは疎まれ、時には手を上げられることも珍しくなかった。

だが、尚樹の言うことは素直に聞き入れるという一面もあった。

尚樹にしても時折親から手を上げられる尚尊に対して慰めるという

「兄貴らしい」一面もみられ、兄弟の関係は蜜であった。

それは、尚樹が尚尊の剣道の師という一面もあったのであろう。

尚樹は道場で、他の道場生以上の厳しい稽古をつけた。

しかし、尚尊は「これは己の為」と、兄弟の意識の共有が出来ていたので、

剣道がもとで言い争いになることはなく、逆に尚尊が酒を飲めるようになってからは

兄弟で「剣道談義」に花を咲かせていた程である。

もう一つは、労災事故で片足を失った尚樹に対して献身的に尽くしていった。

事故当初は、持ち前の気性の荒さから、「会社へ殴り込む」と、言い張って

尚樹を困らせたが、再三の尚樹からの説得にようやく矛を収めた。

 

その二十三に続く・・・