異形の仲間たち見聞録

私が見てきた精神疾患者たち

小説 『ボケ茄子の花 その三十二』

2018年04月22日 17時30分50秒 | 小説『呆け茄子の花』

尚樹が「反撃」に動く前から、部長から再三「二人でお話しできませんか?」という

誘いがあったが、メールではあるが尚樹は「今は部長とお話しできる精神状態ではありません。」

と、断ってきた。

そして、尚樹は診察時に「実は・・・」とNに見せた文章と同じものを差し出した。

そして、その文章を補うように言葉で補足した。

相談は10分を超えた。

Dr.は、様々な提案を出してくれた。

最終的に「私はこの病院の『産業医』でもあるから、私から部長に話しをするわ!」

とのことだった。

その日以来、部長からメールが来ることはなかった。

ある日、毎週朝からある会議のために『本部』といわれる部屋に

会議室の鍵を借りに行ったところ、なんだか私の顔を見てニヤニヤしていたのが気になった。

『本部』の奥には専務の部屋があり、いつも開け放たれていて専務は気になる人が来ると

呼び止めて、『専務室』へ招くのだ。

いつものように「会議室の鍵を貸していただけますか?」と、これまたいつものように

鍵を借り受けて、『本部』を出ようとすると、「尚樹さん!」と専務の呼び止める声がした。

尚樹は思わぬ呼び止める声に戸惑いながらも、

招きに応じて『専務室』へ入り、直立で立っていると専務は、

「いろいろな事があるけど、これからはDr.と相談しながらやっていってね。」

とのことだった。

単なるパートの尚樹と部長のトラブルで専務にまで話しが及んでいるとは思いもせず、

自分の知らないところで大きな話しになっているようで不安になった。

 

 

三十三につづく・・・

 

 

 

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小説 『ボケ茄子の花 その三十一』

2018年04月12日 16時14分12秒 | 小説『呆け茄子の花』

しかし、尚樹は勤め先の障害者パート職員という身分でしかない。

対して上司は『部長』という役職で、役員であってもおかしくない地位にあった。

朝夕、起き上がれなくなった尚樹はベッドの中で「頭重」に苛まれているだけであった。

全く思考は働かない状態だったのである。

ようやく、正月も月末になり尚樹の脳の中はしだいに鮮明になってきた。

思考も回り始めた。

今までの経験で尚樹なりに考えると、自分の考えだけで先行することは失敗が多かった。

そこで、気の置けない職場の友人に相談してみた。

彼は『N』といい、いつも冷静な答えを出してくれる友人であった。

彼に尚樹がPCで書き連ねた文書を手渡し、意見を聞いた。

年下のNはいつもの冷静さで尚樹に答えた。

「尚樹さん、この文章で良いと思います。

まずは尚樹さんの主治医に相談してみてはどうでしょうか?」と。

「Nくん、ありがとう。」といって、職場を後にし自室で思った。

「さぁ、反撃だ!」と。

 

 

その三十二に続く・・・

 

 

 

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小説 『ボケ茄子の花 その三十』記念号

2018年04月04日 01時04分49秒 | 小説『呆け茄子の花』

今日は少し長く書くことにしよう。

その電話は年末も押し迫った師走の30日でった。

上司からであった。

年末のあいさつかと思いきや「勤務をサボっている」という内容の注意であった。

その内容は「障害者雇用」ということをないがしろにして、

「健常者並に働け!」というものだった。

詳しく述べると「体調を悪くして、他の人に仕事をお願いしてきながら、

早退せずに就業時間通り勤務するとは何事だ!」ということだった。

尚樹にしてみれば、「体調が悪いながらも遅れている仕事をやっていた。」

という言い分だったのだが、上司は全く聞く耳を持たず、

「健常者職員だったら、もっと厳しくしている。」とまで言い放った。

しかし、上司のデスクがある部署の実態を尚樹は知っていた。

上司がいない時は、空き時間を見つけては職員間の談笑やお菓子をつまんで

和気藹々とした雰囲気だったからだ。

それを『就業報告書』という文面だけで「時間いっぱい働け!」というわけだ。

普段は笑顔が絶えない尚樹であったが、上司と電話口で口論となるほど、

ヒートアップしてしまい、暗澹とした年越しから新年を迎えることとなった。

尚樹は、元旦・二日と勤務であった。

『病院ならでは』といったところである。

その時、尚樹の頭の中には、上司との嫌な口論の記憶は薄かった。

元旦・二日、それから任されていた集計の仕事に気を集中させていたので、

それ程に不快な感じは無かったが、正月も二週目になって、

集計の仕事も終わり、一段落着くとあの忌まわしき記憶が

尚樹の頭の中をなめ回すように巡り次第に床から起き上がることが困難になった。

結果、尚樹は一ヶ月半ほど寝込むことになった。

尚樹は床の中で思った、「このままでは済まされぬ・・・」と。

 

その三十一に続く・・・

 

 

 

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