〈諦めの哲学・慰めの哲学〉(1)…〈保護者のための不登校セミナー〉について思うこと
▼今年度も昨年に引き続き官民連携による「保護者のための不登校セミナー」その〈パート1〉を9月14日、その〈パート2〉を11月4日にそれぞれ開催した。〈パート1〉は埼玉県教委が主催で民間側がサポートにまわり子どもたちの不登校からの立ち直りの姿を披露し、〈パート2〉は逆に民間が主体で県教委の側がサポートにまわってオープニング・セレモニーで元不登校の子どもの歌、不登校の子どもを持つ親の体験談、不登校支援者側からの話などを組み入れた。
不登校セミナー自体は〈分かり易かった〉と好評だったようで、それはパート2のセミナー後の民間側の懇親会でも確認できたことであった。
▼このセミナーはパート1ではその目的は明確であった。教育委員会側と民間の機関や団体が協力し合ってなるべく早期の不登校の状態からの脱却を図ることが暗黙の了解としてあった。しかし、パート2で見られた壇上での語りや懇親会で出てきた様々な問題は多々の疑問を残すものとなったのではないか。そういう意味でも、このセミナーが自画自賛の良かった良かったでまとめて良いものかどうか。
特に早期の段階から月刊教育雑誌『ニコラ』やその読者の会(ニコラの会)を中心に埼玉県や東京都を舞台に長らく不登校相談会や実践報告会を開いてきた者からすれば、この20年間に及ぶ不登校支援の歳月は何であったのか、暗澹たる思いで眺めるものとなったことは否めない。
▼特に2部の親の話や3部の支援者側から出た「不登校から8年目で動き出した」「父母で勉強を教えている」というような話は、単に不登校になったというだけで〈失われたその子の8年〉を思う時、その両親の嬉しそうな笑顔とは逆に、何ともいたたまれない思いにさせられたものである。8年…余りにも長過ぎるのである。
たとえば、樹木に喩えるならば8年経てばもう若木ではない。人としての生を形成する最も根本的な時期に、それが家庭という場所であれ、彼は実質的に一種の軟禁状態の中で8年間を過したのだ。それはもはや埋めようがない。取り返し用がない時間の流れである。
▼このセミナーが官民連携による〈不登校の子どもを持つ保護者のための公開セミナー〉である以上、少なくとも当日壇上で語る人達は、その〈成功者〉であるべきではなかったか。参加された保護者の方々も〈たとえ今不登校であろうとも、こうすればいいんだ〉という脱不登校の体験談を聞きたかったのではないか。
しかし、実際にその時聞いたのは不登校になってから8年、それでもまだ完全に不登校を脱却できずにいる話や3人のお子さんが皆不登校となった事例などが当日のメインのように語られた(私どもから推薦した親御さんはお子さんが今映画の仕事に熱心に取り組んでいるが近親の葬儀が飛び込み参加中止となった)。今、不登校の子どもを抱え不安な思いに駆られている親御さん達に救いとなったであろうか。まずは親御さん達に元気になってもらおうという取り組みは成功したのだろうか。
▼そこで参加された親御さんが聞かされたことは、〈子どもを信じてひたすら待つ〉ということ。そうすれば子どもはやがて自分の足で歩き始める…というわけである。この心構えは決して間違ってはいない。我が子と接する時の大切な心構えである。だが、何かが足りない。お気付きだろうか。
それはカウンセラーや精神科医が取る〈カウンセリング・マインド〉という技法ではないか?方法論としては実に正しい。しかし、それは飽くまでも技法なのである。そしてそこには〈技法はあるけれども心がない!〉
不登校相談を職業とし、子どもやその家族の相談に役立てるならばそれでいいかも知れない。受容と共感の心を持って温かく見守りましょうというように。しかし、繰り返すが、それは当事者の思いにはなんにも答えていないのと同じである。
当事者にとって、それは〈諦めの哲学〉であり〈慰めの哲学〉に他ならないのではないか。8年もひたすら待つと言うこと、それは一種の〈死の宣告〉に等しい。保護者達は〈不登校セミナー〉の会場に〈救い〉を求めてやって来たのではあるまいか?単なる慰めや諦めを聞きにやってきたのではあるまい。納得していただいただろうか?
▼〈救い〉の方法とは何か?それは次回に触れたいと思う。
(続く)
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「いきいきニコラ」のサイト
http://www.os.rim.or.jp/~nicolas/
▼今年度も昨年に引き続き官民連携による「保護者のための不登校セミナー」その〈パート1〉を9月14日、その〈パート2〉を11月4日にそれぞれ開催した。〈パート1〉は埼玉県教委が主催で民間側がサポートにまわり子どもたちの不登校からの立ち直りの姿を披露し、〈パート2〉は逆に民間が主体で県教委の側がサポートにまわってオープニング・セレモニーで元不登校の子どもの歌、不登校の子どもを持つ親の体験談、不登校支援者側からの話などを組み入れた。
不登校セミナー自体は〈分かり易かった〉と好評だったようで、それはパート2のセミナー後の民間側の懇親会でも確認できたことであった。
▼このセミナーはパート1ではその目的は明確であった。教育委員会側と民間の機関や団体が協力し合ってなるべく早期の不登校の状態からの脱却を図ることが暗黙の了解としてあった。しかし、パート2で見られた壇上での語りや懇親会で出てきた様々な問題は多々の疑問を残すものとなったのではないか。そういう意味でも、このセミナーが自画自賛の良かった良かったでまとめて良いものかどうか。
特に早期の段階から月刊教育雑誌『ニコラ』やその読者の会(ニコラの会)を中心に埼玉県や東京都を舞台に長らく不登校相談会や実践報告会を開いてきた者からすれば、この20年間に及ぶ不登校支援の歳月は何であったのか、暗澹たる思いで眺めるものとなったことは否めない。
▼特に2部の親の話や3部の支援者側から出た「不登校から8年目で動き出した」「父母で勉強を教えている」というような話は、単に不登校になったというだけで〈失われたその子の8年〉を思う時、その両親の嬉しそうな笑顔とは逆に、何ともいたたまれない思いにさせられたものである。8年…余りにも長過ぎるのである。
たとえば、樹木に喩えるならば8年経てばもう若木ではない。人としての生を形成する最も根本的な時期に、それが家庭という場所であれ、彼は実質的に一種の軟禁状態の中で8年間を過したのだ。それはもはや埋めようがない。取り返し用がない時間の流れである。
▼このセミナーが官民連携による〈不登校の子どもを持つ保護者のための公開セミナー〉である以上、少なくとも当日壇上で語る人達は、その〈成功者〉であるべきではなかったか。参加された保護者の方々も〈たとえ今不登校であろうとも、こうすればいいんだ〉という脱不登校の体験談を聞きたかったのではないか。
しかし、実際にその時聞いたのは不登校になってから8年、それでもまだ完全に不登校を脱却できずにいる話や3人のお子さんが皆不登校となった事例などが当日のメインのように語られた(私どもから推薦した親御さんはお子さんが今映画の仕事に熱心に取り組んでいるが近親の葬儀が飛び込み参加中止となった)。今、不登校の子どもを抱え不安な思いに駆られている親御さん達に救いとなったであろうか。まずは親御さん達に元気になってもらおうという取り組みは成功したのだろうか。
▼そこで参加された親御さんが聞かされたことは、〈子どもを信じてひたすら待つ〉ということ。そうすれば子どもはやがて自分の足で歩き始める…というわけである。この心構えは決して間違ってはいない。我が子と接する時の大切な心構えである。だが、何かが足りない。お気付きだろうか。
それはカウンセラーや精神科医が取る〈カウンセリング・マインド〉という技法ではないか?方法論としては実に正しい。しかし、それは飽くまでも技法なのである。そしてそこには〈技法はあるけれども心がない!〉
不登校相談を職業とし、子どもやその家族の相談に役立てるならばそれでいいかも知れない。受容と共感の心を持って温かく見守りましょうというように。しかし、繰り返すが、それは当事者の思いにはなんにも答えていないのと同じである。
当事者にとって、それは〈諦めの哲学〉であり〈慰めの哲学〉に他ならないのではないか。8年もひたすら待つと言うこと、それは一種の〈死の宣告〉に等しい。保護者達は〈不登校セミナー〉の会場に〈救い〉を求めてやって来たのではあるまいか?単なる慰めや諦めを聞きにやってきたのではあるまい。納得していただいただろうか?
▼〈救い〉の方法とは何か?それは次回に触れたいと思う。
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