第12話 コメットトラッカーの登場
マークX赤道儀のモータードライブ(MD)が音叉、水晶、5速型と進展していった様子は、8話から11話でお話しました。80年代も中ごろになると水晶発振のモーター回路が1rpm以外でも自由にできるようになり、MDのコストダウンが進みました。それまで内部に4枚構成のギアで恒星時を出力していたものが、2枚のギアで出せるようになったのです。この結果誕生したのがP型MDでした。コントローラーがすっぽり手のひらに収まるほど小さく、技術の進歩に感激したものでした。
ちょうどそんな頃、1986年にハレー彗星が地球に接近することになりました。これに合わせて開発されたMDがコメットトラッカーです。2軸のMDですが、速度を4桁の数字ダイヤルで可変できるようになっています。これは水晶発振の分周回路を制御しているもので、5,000が恒星時、4,986が太陽時になります。赤経・赤緯とも0から9,999まで設定でき、彗星など恒星とは違った動きをする天体に合わせて追尾ができるようになっていました。これによって彗星の微細な流線構造なども写真に捉えようとしたのです。
肝心のハレーはぱっとしない彗星でしたが、私は今でもこのコメトラ(当時社内ではそう略されていました)を大切に愛用しています。しかし全国のマークXのご愛用者も、そろそろ電装系が寿命を迎える時期ではないかと感じています。いま私たちはマークX赤道儀用に2軸MDを開発中です。これは当時のMDの復刻ではなく、現在の新しい技術を盛り込んだMDになります。それによってマークXがこの先また数十年生きることになると思っています。この2軸MDは近日中にプレスリリースできる予定です。
8話から12話でMDのお話をして参りました。次回からはちょっと別の視点でマークX秘話をお話したいと考えております。(suzu)
画像 P型とコメットトラッカーのハンドボックス