自宅で家族を介護している人の約7割が精神的・肉体的に限界を感じていたことが毎日新聞の調査で分かった。約2割は介護疲れなどから殺人・心中を考えたことがあるとし、被介護者に暴力をふるった経験を持つ人も2割を超えた。負担や孤立に悩みながら、愛する家族を支える介護者の姿が浮かび上がった。

 毎日新聞は1〜2月、介護者支援に取り組む全国の8団体を通じ、在宅介護者にアンケートを実施し、245人(男性62人、女性181人、性別不明2人)から回答を得た。

 介護によって精神的・肉体的に限界を感じたことが「ある」とした人は73%(179人)に上った。全体の22%(54人)は介護中に被介護者に暴力をふるった経験があると回答した。

 さらに、介護している家族を殺してしまいたいと思ったり、一緒に死のうと考えたりしたことがあると答えた人も約2割(48人)いた。どんな時に殺人・心中を考えたかを尋ねると(複数回答)、77%は「介護に疲れ果てた時」と答えた。

 介護による不眠状態が「続いている」(42人)と「時々ある」(104人)を合わせると、全体の約6割に上った。この146人に、一晩に起きる平均回数を尋ねたところ、1〜3回が約7割(104人)を占め、4〜9回も14%(20人)いた。不眠状態が続いている人の38%(16人)、時々ある人の22%(23人)が殺人・心中を考えた経験があると答えていた。

 認知症などの症状のために夜間の介助が必要な人は多く、介護者も不規則な生活を強いられる。在宅介護の現場では、介護者の不眠状態が深刻な問題の一つであることを裏付けた。

 回答者の年代は60代以上が69%を占め、50代は22%だった。介護年数は「5年以上10年未満」の24%が最多で、「3年以上5年未満」(22%)が続いた。「10年以上」も19%いた。【渋江千春、向畑泰司】

 ◇地域の支援が必要

 介護家族を訪問支援している北海道栗山町社会福祉協議会の吉田義人事務局長の話 在宅介護者の7割が限界を感じたという結果は深刻だ。相談相手もいない人は多い。地域全体で介護者に寄り添うことが必要だ。

 ◇調査の方法

 8団体を通じて在宅介護者約1000人にアンケート用紙を配り、245人から回答を得た。選択式の質問の他、自由記述欄も設けた。

 8団体は次の通り。

 栗山町社会福祉協議会(北海道栗山町)▽介護者サポートネットワーク・ケアむすび(宮城県塩釜市)▽杉並介護者応援団(東京都杉並区)▽てとりん(愛知県春日井市)▽つどい場げんごろう(大阪府八尾市)▽つどい場さくらちゃん(兵庫県西宮市)▽男性介護者の会ぼちぼち野郎(同県三田市)▽認知症の人と家族の会福岡県支部