トヨタ自動車は14日、米国の5工場に7・5億ドル(約840億円)を投資し、生産を拡充すると発表した。4月にも始まる日米通商協議を意識した対応とみられ、新たに雇用する従業員は600人に達する。

 「おめでとうトヨタ! 米自動車産業の労働者たちにとってビッグニュースだ!」。トランプ大統領は早速、ツイッターで歓迎した。米国での自動車生産や部品調達を増やすことを求めてきたトランプ氏。我が意を得たり、という感じだったに違いない。

 トヨタが新たに投資するのはケンタッキー、ウェストバージニア、アラバマ、ミズーリ、テネシー各州の工場。ケンタッキー工場では高級ブランドのレクサス「ES」のハイブリッド車(HV)を年1・2万台、スポーツ用多目的車のRAV4のHVを年10万台規模で新たに生産する。その他の工場ではエンジンやHV向け変速機の生産能力を上げる。

 トヨタは2017年1月、5年間で米国に計100億ドル投資すると表明していたが、マツダとの合弁工場や今回の案件などで投資総額を約130億ドル(1兆4500億円)に引き上げる。

 ログイン前の続き米政権は自動車への追加関税を検討しており、日米通商協議では米側が日本に圧力をかける最大の切り札になる。追加関税を避けたいトヨタは、効果的なタイミングを見計らって米国経済への貢献を打ち出した格好だ。東海東京調査センターの杉浦誠司氏は「驚く金額ではないが現地生産を強調し、米政権の意向に沿った投資だ。トランプ氏に演説などで『3割増』と使ってもらえればと考えたのかもしれない」。

 米国、カナダメキシコによる北米自由貿易協定NAFTA)は昨年11月、「米・メキシコカナダ協定(USMCA)」として3カ国が署名した。今後、域内の部品を使うよう求める「原産地規則」が厳しくなり、基幹部品や電子部品は北米域内や米国内の生産を増やす必要がある。北米トヨタのジム・レンツ最高経営責任者(CEO)は14日の電話会見で、今回の投資について「通商問題を意識していないと言えばうそになるだろう。USMCAも要因の一つだ」と認めた