「それにしてもなんだな…都会の空っていうのはいつ見ても星ひとつ見えやしない
そこへ行くと俺の田舎なんて星だらけだ
空一面星で埋め尽くされてる 手で掴めそうなくらいさ
そういや長い間帰ってないな…」
「あら?達也って東京の人じゃなかったの?」
「あれ?言ってなかったかなぁ 俺は長野の山ん中の生まれだよ
田舎では親がスキー客相手の民宿をやってたけど
今じゃ年だし宿も閉めてのんびり暮らしているさ
俺も兄貴も継ぐつもりはなく、こっちに来ちまったしな」
「星だらけか…見てみたいわね」
そう言って空を見上げた私に達也は驚いた顔で
「おまえさんの口からそんな言葉が出るなんて意外な気がする
なんだか今夜はいつもと違うな
いつもは、その…なんだ…シラッとした冷たい雰囲気なのに
今夜はやけに乙女じゃないか あはは」
そう言って達也は大声で笑い出した
「まぁ失礼ね・・・」
口ではそう言って怒ったふりをしたが、
事実いつもの私なら可愛いげのない冷たい女に見えただろうし、
そんな風に装っていると言えるかもしれない
亮介の命日も近いし、素直になりたい気分だった
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携帯で電話をしながら歩いてきた人がいきなり私たちに向けてカメラを差し出した
えっ・・・?
咄嗟に何が起こったのかわからなかったが、相手は私たち二人の姿を写真に撮ったのだった
「おいっ!おまえ!! 何をする気だ?」
達也が慌ててどなったが、相手の男は素早く人込みに紛れてしまった
何が起きたのか? これがどういうことなのか?
その時の私たちには知る由もなかった