本当は飛び出すつもりなんかなかった
それなのにアイツったら
今思い出しても何度もムカつく
大体何が原因だったのかすら思い出せない
それでも裸足でなかったのは幸いした
まだ肌寒い日が続いていた季節
とりあえず
身の回りの必要なものは持って出たつもりだったけど
あの日あの場所で花(はな)に出会わなければ
今ごろあたしはどうしていただろう
大きな眼鏡が印象的で、
つい声をかけてしまったのだった
眼鏡のなかの大きな目は、注意深げに見つめていた
何故かどこかで会ったことのある
懐かしさを感じたのだった
この街には初めて来たと言っていたが
あたしには確かに遠い昔会ったことのある
不思議な確信があったのだった