２６年目の訂正・気づいたら変える

7月18日の東京新聞1面に、印象的な写真が掲載されていた。

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原子力明るい未来のエネルギー

写真の彼は、小学６年生のとき、自分の標語がコンクールで選ばれ、看板になった。自分でも誇らしかった。
しかし、原発事故が起き、２５年たった今、標語が紹介されるたび、胸がいたんだ。
そして、一時帰宅した今月１５日、防護服に身を包んだ彼は、看板の前で持参した画用紙を大きく掲げ、標語を訂正した。

原子力破滅未来のエネルギー

自分が信じていたことを「間違っていた」というのは悲しいし、勇気も必要だ。
しかし、気づいたら、変わること。私達の多くは、事故が起こるまでは、便利さのために危険と隣り合わせの力に、無防備に頼っていた。みな愚かだったのだ。
だから、誰かを責めるんじゃなくて、気づいた人から変わればいいだけだと思う。
原子力に頼っていた人だって、原子力で利益を得ていた人だって、ただ、未来の為に変わればいいのだと思う。

以下、東京新聞より記事全文

２６年目の訂正 　双葉町の標語考えた少年後悔 「原発はいらない」

「原子力明るい未来のエネルギー」。福島県双葉町の中心街の入り口に掲げられた看板の標語だ。二十五年前、当時小学六年の大沼勇治さん（３６）が町のコンクールに応募し、選ばれた。大沼さんは、一年四カ月の避難生活で「脱原発」を確信した思いを伝えたいと、今月十五日、一時帰宅した際、自ら標語を「訂正」した。

　大沼さんは東京電力福島第一原発の事故後、身重の妻せりなさん（３７）と地元を離れ、現在は愛知県安城市で避難生活を送る。町が原子力標語を公募したのは一九八七年。原発が町の未来をつくると信じた言葉が入選。第一原発から約四キロの自宅近くに鉄製の看板が電源立地交付金で建てられ、誇らしかった。

　大学を出て就職などし、二十九歳で帰郷。不動産会社に勤める傍ら、看板の横にある土地にオール電化のアパートを建てて、東電社員にも貸していた。ずっと町の発展が原発とともにある「安全神話」を疑わなかった。

　しかし事故後、町は警戒区域となり、全町民が避難。「平穏な暮らしが町ごと奪われた現実」にさいなまれ、テレビで標語が紹介されるたびに胸を痛めた。自らを責め悔いる日々から「原発の現実を話す権利はある」と考えた。脱原発を行動で示し、その姿を長男勇誠ちゃん（１つ）に将来伝えたいと思った。

　夫婦が一時帰宅した今月十五日、記者も同行した。防護服姿の大沼さんはまず、標語にレッドカードを突き付け「退場」と叫んだ。その後、看板の手前で持参した画用紙を高く掲げた。すると、そこに書かれた「破滅」の二文字が「明るい」に重なり新しい標語が読み取れた。「原子力破滅未来のエネルギー」。二十六年目の訂正の瞬間だった。

大沼さんは「原発事故で故郷を奪われることが二度とあってはならない。日本に原発はいらない」と話した。　

（野呂法夫、写真も）

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