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今回のテーマは、精子の提供 についてです。
産婦人科学会ー「非配偶者間人工授精の臨床実施に関する登録施設」は、普通の人工授精のように不妊治療ができる病院ならどこでも受けられるというわけではありません。
AID(人工授精)は Artificial Insemination of Donor( 非配偶者間人工授精)の略で、夫の精子ではなく、第三者が提供した精子を直接子宮膣内に注入する方法です。
日本で実施しているのはわずか15施設ほどで、しかもその数は年々減少しているようです。
これには、生まれてくる子供が自分の出自を一生知らされなくてもいいのか、本当のことを打ち明けた場合その家庭はどうなってしまうのかという問題が複雑に絡んでいるようです。
ここ有田町から一番近いのは、北九州市八幡西区折尾のセントマザー産婦人科医院 です。
精子の提供元については、民間の「日本精子バンク機構」が有名だと健康新聞の記事で紹介されていました。
『 登録ドナーから無料・無償で提供を受けることができるのでお金がかからないことに加え、ドナーのレベルが高いというおまけ付き。夫婦だけではなく、シングルマザーを希望する未婚女性や同性のカップルからの要望も増えている。...
日本精子バンクのドナーは、各種健康診断や性病検査をクリアしていなくてはならず、結果を証明する書類が面談時に提出される。
しかも、全員が東大や京大など国内の最難関大学を卒業しており、ルックスや運動神経に恵まれた人も多いので「少しでも優秀な遺伝子を残したい」と考える女性には願ってもない条件だ。
ちなみに、自らのHPで精子提供を行う男性も増えているが、この場合は謝礼金が発生するケースが多い。また、性病の検査結果やプロフィールなどの情報が曖昧で身元すらはっきりしないこともあり、安全面で不安が残る。
夫に遺伝性疾患がある場合や、精巣の機能に問題があって精子が作れない場合に利用されるケースが多い。
稀に「少しでも優秀な遺伝子が欲しい」という理由でAIDを希望する人がいるが、本来は夫が無精子症の女性の場合に限られる治療法である。
しかし、現在の日本には生殖技術や不妊治療に関する法律はないので、夫の精子に問題のない女性やパートナーのいない未婚女性に対して精子提供がなされても、...それが法に触れるということはない。』
なんとも、別世界の話ですが 実際に行われていてもおかしくないのかも知れません。
産婦人科学会 の見解
提供精子を用いた人工授精に関する見解
提供精子を用いた人工授精(artificial insemination with donor's semen;AID,以下本法)は、不妊の治療として行われる医療行為であり、その実施に際しては、わが国における倫理的・法的・社会的基盤に十分配慮し、これを実施する。
1. 本法は、本法以外の医療行為によっては妊娠の可能性がない、あるいはこれ以外の方法で妊娠をはかった場合に母体や児に重大な危険がおよぶと判断されるものを対象とする。
2. 被実施者は法的に婚姻している夫婦で、心身ともに妊娠・分娩・育児に耐え得る状態にあるものとする。
3. 実施者は、被実施者である不妊夫婦双方に本法の内容、問題点、予想される成績について事前に文書を用いて説明し、了解を得た上で同意を取得し、同意文書を保管する。また本法の実施に際しては、被実施者夫婦およびその出生児のプライバシーを尊重する。
4. 精子提供者は心身とも健康で、感染症がなく自己の知る限り遺伝性疾患を認めず、精液所見が正常であることを条件とする。本法の治療にあたっては、感染の危険性を考慮し、凍結保存精子を用いる。同一提供者からの出生児は10名以内とする。
5. 精子提供者のプライバシー保護のため精子提供者は匿名とするが、実施医師は精子提供者の記録を保存するものとする。
6. 精子提供は営利目的で行われるべきものではなく、営利目的での精子提供の斡旋もしくは関与または類似行為をしてはならない。
7. 本学会員が本法を行うにあたっては、所定の書式に従って本学会に登録、報告しなければならない。
今回、平成18年4月の会告「非配偶者間人工授精に関する見解」で用いられている「非配偶者間人工授精」という表現を、より適切な表現である「提供精子を用いた人工授精」に修正した。この会告がより正しく理解されることを目的とし、以下の解説を付した。
提供精子を用いた人工授精は不妊の治療として行われる医療行為であるが、その影響が被実施者である不妊夫婦とその出生児および精子提供者と多岐にわたるため、専門的知識を持った医師がこれらの関係者全て、特に生まれてくる子供の権利・福祉に十分配慮し、適応を厳密に遵守して施行する必要がある。
1.本法は、本法以外の医療行為によっては妊娠の可能性がない、あるいはこれ以外の方法で妊娠をはかった場合に母体や児に重大な危険がおよぶと判断されるものを対象とする。
(解説)
女性側に明らかな不妊原因がないか、あるいは治療可能であることが前提条件となる。臨床的にこれ以外の方法では妊娠が不可能、あるいはこれ以外の方法で妊娠をはかった場合に母体や児に重大な危険がおよぶと判断される、と医師が臨床的に判断した場合に適応となりうる。しかしながら、原則として本法の施行は無精子症に限定されるべきである。
慎重な配慮なしに他の治療法で妊娠可能な症例に本法を行うことは、厳に慎まなければならない。さらに、本治療開始前に、夫婦にカウンセリングの機会を可能な限り提供することが推奨される。
2.被実施者は法的に婚姻している夫婦で、心身ともに妊娠・分娩・育児に耐え得る状態にあるものとする。
(解説)
本法の対象者が法律上の夫婦であることを確認するため、戸籍謄本を提出することが望ましい。本法の実施にあたっては、同意書を各施設で責任をもって保存する。
3.実施者は、被実施者である不妊夫婦双方に本法の内容、問題点、予想される成績について事前に文書を用いて説明し、了解を得た上で同意を取得し、同意文書を保管する。また本法の実施に際しては、被実施者夫婦およびその出生児のプライバシーを尊重する。
(解説)
本法において夫婦の同意を確認することは、生まれてくる子どもの福祉を考える上で極めて重要である。そのため治療開始前に、本法により出生した子どもは夫婦の嫡出子と認めることを明記した同意書に、夫婦が同席の上で署名し、夫婦とも拇印を押すなど本人確認を行ったのちに治療を開始する。この同意書等は各施設で責任をもって一定期間保存する。また治療中夫婦の意思を再確認するため、本法を施行するごとに、夫婦の書面による同意を得ることとする。
本法は、当事者のプライバシーに関わる部分も通常の医療以上に大きいため、医師をはじめとした医療関係者が、被実施夫婦および出生児のプライバシーを守ることは当然の義務である。
4.精子提供者は心身とも健康で、感染症がなく自己の知る限り遺伝性疾患を認めず、精液所見が正常であることを条件とする。本法の実施にあたっては、感染性を考慮し、凍結保存精子を用いる。同一提供者からの出生児は10名以内とする。
(解説)
精子提供者は、感染症(肝炎、AIDSを含む性病等)、血液型、精液検査を予め行い、感染症のないこと、精液所見が正常であることを確認する。また、自分の2親等以内の家族、および自分自身に遺伝性疾患のないことを提供者の条件とする。その上で提供者になることに同意する旨の同意書に署名、拇印し、提供者の登録を行う。
実施にあたっては、HIV-1/2をはじめとする感染症にwindow期間が存在し、実際に新鮮精液使用によるこの期間の感染が報告されていることを考慮し、少なくとも180日凍結保存してその後提供者の感染症検査を行って陰性であった凍結保存精液のみを使用する。
同一の精子提供者からの出生児数は10人を超えないこととし、実施施設では授精の記録および妊娠の有無を把握するよう努力する。
また本法の実施者は提供者が本法について理解して提供することができるよう、十分に説明をし、提供前後にわたって必要があればプライバシーを厳密に保持しつつカウンセリングを受けられる体制を整備する。
5.精子提供者のプライバシー保護のため精子提供者は匿名とするが、実施医師は精子提供者の記録を保存するものとする。
(解説)
精子提供者のプライバシー保護のため、提供者はクライエントに対し匿名とされる。実施医師は、授精のたびごとに提供者を同定できるよう診療録に記載するが、授精ごとの精子提供者の記録は、現時点では出生児数を制限するために保存されるべきものである。但し、診療録・同意書の保存期間については長期間の子どもの福祉に関係する可能性がある本法の特殊性を考慮し、より長期の保存が望ましい。
6.精子提供は営利目的で行われるべきものではなく、営利目的での精子提供の斡旋もしくは関与または類似行為をしてはならない。
(解説)
本法は、これ以外の医療行為によっては妊娠の可能性のない男性不妊に対して適応されるべきであり、その施行にあたっては医学的立場のみならず、倫理的、かつ社会的基盤が十分に配慮されるべきである。営利目的で本法の斡旋もしくは関与またはその類似行為を行うことは許されるべきではない。本法の商業主義的濫用は、生殖技術の適正利用が保障されなくなると同時に被実施夫婦や提供者のプライバシーや出生児の権利も保障されなくなる。
7.本学会員が本法を行うにあたっては、所定の書式に従って本学会に登録、報告しなければならない。
(解説)
本学会員が本法を施行する際、所定の書式に従って本学会に登録、報告することとする。
(“「非配偶者間人工授精と精子提供」に関する見解”として発表、
平成9年5月、会長 矢嶋 聰)
(平成18年4月改定、理事長 武谷雄二、倫理委員会委員長 吉村泰典)
(「提供精子を用いた人工授精に関する見解」として改定
平成27年6月、理事長 小西 郁生、倫理委員会委員長 苛原 稔)
今回はここまでにします、次回は 卵子の提供 についてです。
有田町で適切な情報提供を行い、カップルの最適な選択の支援ができるよう「生殖医療の基礎知識」「明日の生殖医療を学ぶ」「カウンセリングとケア」を鍼灸師として綴って行きます。受精し易い状態に 心、精神、身体 を整えることが大切です。薬を使うこともあるでしょうが、少ない量にできる環境状態に整えるのが鍼灸師にできることだと考えています。不妊治療に、出産準備に、産後の復帰にと多様な支えを皆さん求めておられます。鍼灸による気血の流れを整える治療を併用した計画を考えてみませんか。
治療院の場所は、コメリ有田店さんの西隣りですので来院時の目印になります。
来院される前に、0955-42-2655 へ
予約の電話 をお願いします。
2016年 6月から 日本不妊カウンセリング学会 カウンセラー養成講座を 受け始めました。
最新の正しい情報をお伝えする為、年間 2回計画されている 養成講座を経て、受験・面接を受け、不妊カウンセラーの認定取得を目指し始めています。
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