「ビ」だったり「ヴィ」だったり、「ストーン」だったり「ストン」だったり、「・」があったりなかったり、表記はばんらばんらですね。製造元表記では「ビクトリアストン」「ILストン」のようですけど。
化学者・飯森里安によって創作された一連の人造宝石の名称。
飯盛里安(いいもり さとやす)は1885年金沢市生まれ。東京帝国大学・大学院卒業後、1917年理化学研究所に入所、主に放射性鉱物と希元素の研究を行う。1919年イギリス留学、帰国後、日本に放射化学を導入し基礎を確立させた。太平洋戦争中は、理研の原子爆弾開発研究に加わり、ウラン鉱の探索・採掘・精製を行なった。戦後は占領政策により放射化学の研究が禁止されたため、陶器釉薬の研究に進み、そこから人造宝石を着想し、「メタヒスイ」、「ビクトリアストン」などを合成製作した。1962年に人造宝石の製造販売会社飯盛研究所を設立し、商業規模の生産を行った。1982年没。ウィキペディアに詳細な記事があります。けどこの記事ちょっと長すぎね?(こら)
「メタヒスイ」は透明度の高い翡翠様輝石、「ビクトリアストン」は石英の基質中に様々な鉱物の繊維状結晶を凝縮させたもの。その他、トルコ石、ジルコンなどの類似石を作成、総称して「イイモリラボストン」「ILストン」と呼ばれる。
1969年にアメリカの宝石業界誌「Lapidary Journal」が紹介記事を掲載、1970年のトゥーソン・ショーで紹介され、欧米では人気を博したが、日本ではあまり注目されなかった。
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おなじみパーフェクトストーンさんが、どっかから掘り出してくるらしく(掘りはせんだろ)、時々どっと出品なさる。中でも「紅葉石」と呼ばれるものは超人気で、十数秒のうちに売り切れる。ほんとにあっという間に焼野原。
常々、「オジジには無理ぽ」と横目で見ていたのだけど、先日、何の拍子か「いっちょ参戦してみようか」と思い立った。
最初狙ったのはあえなく撃沈して今回も駄目かなあとごそごそやったら、何と一つスナイプできた! へえ。そんなこともあるもんですねえ。(自分であきれてどうする)
百戦錬磨のスナイパーたちのフロント・ターゲットではなかっただけに、ちょっと暗めなのだけど、強い光を当てると不思議な紅葉模様が浮かび上がる。何かの結晶なんでしょうけど、何なんでしょう。
さらに不思議なことに、光の当たり具合でところどころラブラドレッセンス風のシラーが揺れる。
シラー? けっこう複雑な構造をしているということでしょうかね。人造宝石でキャッツアイというのはあるけど、ラブラドレッセンス風シラーというのはあまり見たことないような。
磨いていない断面の輝きも変わっている。やっぱ複雑そう。
紅葉模様といい、シラーといい、こんなものがどうやってできるのか。
どうも「晶癖調整剤」=「媒晶剤」に秘密があるらしい。「晶癖」は結晶のでき方のこと。何らかの成分を加えると、それに応じて結晶の姿が変わるらしい。
まあ結晶というのはわけわからんもので、同じ鉱物でも生成環境や微細な付随物質によって結晶の姿は千差万別になったりする。それをコントロールするのは至難の業。「触媒」と同じで理論的に解明されているわけではないので、とにかく試行錯誤していくしかない。大変な作業ですね。
飯森さんは優れた知性と強靭な探究心を持ちながら、戦争に翻弄された生涯を送った方のようですけど、その探究精神がこうやって美しい石となって残っている。すごいものですね。今頃あちらではどういう創造に加わっておられるのだろう、と夢想してみたり。(は?)
しかしパフェさん、どっから掘って来るんだろう。(掘っては来ないだろうよ)