貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

希元素鉱物タピオライト&グラフトナイト

2024-07-13 21:08:00 | ややレア

「希元素鉱物」なんていうと何かマニアっぽくてかっこいいですな。(中二病かな)
ヤフオクで2種類のレア鉱物が共生している標本が出ていて、しかも1種は希元素のタンタル・ニオブ含有とあったので、「お、面白そう」とポチッ。1個で2種のレアがお手頃価格で楽しめるなんてお得じゃない?(何か貧相な発想)
Graftonite & Tapiolite. Piona Peninsula, Colico, Lecco Province, Lombardy, Italy。
ペグマタイト鉱物。

赤っぽいのがグラフトナイト。Fe3(PO4)2 あるいは Fe2+Fe2+2(PO4)2。
鉄の燐酸塩。つうことはヴィヴィアナイトやラドラマイトと同じ族。ヴィヴィやラドラムは緑なのにこやつはピンク。はて。鉄イオンの色は Fe2+ は淡緑色、Fe3+ は黄褐色とされているけど、2価でピンクとはどういうこと? カコクセナイトやトリフィライトは赤系だったか。わけわからん。



黒いのがタピオライト。(Fe,Mn)(Ta,Nb)2O6。ただし mindat によれば、タピオライトそのものという鉱物はなく、「Tapiolite-(Fe)-Tapiolite-(Mn) Series」で、「Fe2+Ta2O6 to Mn2+Ta2O6」だという。ただしマンガンの方はほとんど出ないみたい。何ですかね、このやたらの厳密さ。「(Fe,Mn)Ta2O6」で何か問題あるのかしら。ここではニオブは必須ではなくなっているし。わけわからん。希土類の鉱物の場合こういう( )を付けて分けるという規則があるらしいけど、鉄とマンガンは希土類じゃないし。
「タンタル酸塩鉱物」ないし「ニオブ酸塩鉱物」。え? そんなんあるの? 野党超少数派じゃん。

で、何だい、タンタルって。
タンタル、英語ではタンタラム。原子番号73。第5族金属。不活性であることが特徴。合金やコンデンサに用いられる。
名前はギリシャ神話のタンタロスから。リュディアの王。神話省略。「欲しいものが目の前にあるのに手が届かない苦しみ」の象徴。あれ、あちきのことかね。リロコナイトとかセルサイトとか。(苦しんでるの?w) 内田百閒のエッセイにもタンタルスというのがあった。大酒飲みの百閒先生が戦時中の酒類統制に苦労する話。まあしかし、人間は大なり小なり皆タンタロスですわな。(まあな)
しかしなんで不活性元素にこんな名前をつけたのか。ウィキに説明があるけどよくわからない。「飲まない」というのと「飲みたいけど飲めない」は全然違うだろうに。遊びが過ぎませんか。

もう一つ、ニオブ。タンタルとそっくりな元素で、タンタロスの娘ニオベーから命名。素人にはほとんど同じ。(雑) まあ要するに二つとも珍しい金属ということですな。(雑)

黒い。ピカピカとしている。ルーペで見ると表面に虹色の光があるようなないような。(どっちだよw)
うーん。ま、とにかく希元素だ。珍しいんだぜ。えへん。(なんかなあ)
確かに若干欲求不満の感じはある。……なめてみようか。(よしなさい)

で、「希元素」とは何か。レア何ちゃらとどう違うのか。はお便利メモとして別項で。


希元素鉱物/レアメタル/レアアース

2024-07-13 21:07:37 | お便利メモ

◆希元素鉱物
「希元素鉱物」という言葉は正確な定義はないらしい。一般的に「あら珍しい」という元素をそう呼んでいるだけのよう。
『改訂新版 世界大百科事典』「希元素鉱物」では、以下のものが挙げられている。
リチウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、トリウム、ウラン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、レニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ゲルマニウム
*リチウム、ベリリウムは希元素なのですかね。クンツァイトやアクアマリンを希元素鉱物と呼ぶ人はいないでしょう。ジルコンなんかも微妙。

むしろ今はレアメタル、レアアースという言葉の方が頻用されているようで。そりゃ何じゃい。

◆レアメタル レアメタルは和製英語で、これも厳密な概念ではないらしい。ウィキに挙げられているのは以下。
リチウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、ガリウム、ゲルマニウム、セレン、ルビジウム、ストロンチウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、インジウム、アンチモン、テルル、セシウム、バリウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、白金、タリウム、ビスマス、希土類(次項)
*トリウム、ウランがここには入っていないですな。マンガンやニッケルがレアというのはいささか奇妙。

◆レアアース(希土類) 17種。これは厳密な定義らしい。
スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム

石の場合と同じで、「レア」というのは曖昧模糊とした概念のようですね。

◆おまけ:不適合元素(例)
ルビジウム、セシウム、ストロンチウム、バリウム、ジルコニウム、ニオブ、ハフニウム、タンタル、ランタン、ウラン、トリウム


アイアン・タイガーアイ

2024-07-10 21:11:26 | 単品

タイガーズ・アイは前にブルー・タイガーアイというのを上げました。
基本的に「角閃石仮晶石英」とされている。ところが mindat にこんな記述がある。

《私たちの研究では、タイガーアイの輝きの原因となるテクスチャは仮晶を表していないことが明らかになりました。むしろ、タイガーアイは、亀裂シール鉱脈充填プロセス(a crack-seal vein-filling process)を介して同期的に鉱物が成長する典型的な例であると主張します。》Heaney, Peter J., Fisher, Donald M. (2003) New interpretation of the origin of tiger's-eye. Geology, 31 (4)

タイガーアイは角閃石の繊維状結晶が石英に交代されることでできる「仮晶の典型」として様々な本で紹介されているけれど、そうではない、と。じゃあ何だ、と。この文章ではよくわからない。石英と角閃石が同時に形成したということなのか。
ううむ。本当でしょうか。よくわかりません。

で、今度はヤフオクの同じ出品者さんから、美しそうな「アイアン・タイガーアイ」というのが出ていたのでゲット。
丸玉などの磨き石としてあちこちで見る。赤い層が特徴。

原石のままだと粉っぽくて白茶けているけれど、水で濡らすと色が鮮やかになる。

横の部分は鮮やかな色の層の重なりが見える。

赤、青緑、黄色の薄い層が重なっている。赤はライモナイト? 青緑は緑泥石か何か? 黄色の部分が磨くと金色になるのか。

しかしこれ、ほんとにタイガーアイ?
特有の繊維状のテクスチャーはがとんど見えない。ブルー・タイガーアイでは層に対して直角に繊維構造が見えたけれど、これは層が薄くて繊維構造はよく見えない。むしろ「片麻岩」ではないか。いや、こんな薄い層の片麻岩なんてないか。

まあタイガーアイというのは純粋鉱物種ではなく岩石の名前。岩石だからいろいろなものがある。中には「仮晶」のもあるのかもしれないし、こういう片麻岩ぽいものもあるのかもしれない。
よくわかりません。
しかしこれはこれでとても美しい石です。水石的に飾るととても映える。謎めいて面白いし。


きらきらと

2024-07-07 18:20:20 | 漫筆

いや凄い暑さですねえ。じっと籠るしかない。(暇なのね)

オジジのくせにと言われそうだけど、あまりにかわゆいのでついポチっとしてしまいました。
サファイア。ベリリウム添加。1つは2ミリくらい。



現物はもっときらきらなのですけどね。一応サファイアだし。
縁日の夜店の気分。楽しい。

おまけ。Xに「#七夕なのでお星様見せて2024」というハッシュタグがあったのでついお調子こいて。
アイオライト・サンストーン。

きらきらはいいですね。(さっきのは渋すぎたね)


天川産ペロブスカイト

2024-07-07 10:26:16 | ややレア

ずっと探していた石に出会いました。意外なことに国産もの。
ペロブスカイト。灰チタン石。CaTiO3。
ありそうで、ない。エヌズさんにも Vec さんにもない。一時パフェさんが出していたようですけどもうない。
それが先日、ヤフオクで出て、何とか落札。それほど高くならずに済んだのは幸い。微小結晶ですけど。
奈良県天川村洞川五代松鉱山産。
《八面体結晶をしています。五代松鉱山では磁鉄鉱は12面体結晶ですので、区別出来ます。》とのこと。



なかなか渋ーいですな。

ペロブスカイトは話題の石。
太陽光発電の新しいテクノロジーに必須だとか。
また地球のマントル下部はこれでできているとか。
けれど、それらはこのペロブスカイトでは、全然、ない。
マントル上部下層が「スピネル」だと言われるのと同じように、マントル下部のペロブスカイトは「相」の名前。鉱物の名前ではない。スピネル相がスピネルでできているわけではないし、ペロブスカイト相がペロブスカイトでできているわけではない。
太陽光発電のほうも同じで、問題なのはペロブスカイト構造の結晶であって、ペロブスカイト自体ではない。
何じゃそりゃ? ですわな。
鉱物の名前というのは、もともとはある組成から成る、ある結晶構造のものを指していたはず。ところが最近の鉱物学では組成元素はどうでもよくて結晶構造で名前を決める傾向が強くなっている。
たとえばガーネットは、(鉄/マグネシウム/マンガン/カルシウム)+アルミ+SiO3 の鉱物を言うのではなくて、X3Y2Z3 の結晶構造を持つ鉱物を指す、というふうに。
元素主義から構造主義に変わったと言えるかも。何となく元素=実在主義は古くてださくて構造主義は新しくてかっこいい、と皆が思ってるからかもしれない。(まさか)
で、鉱物のペロブスカイト=灰チタン石と同じ構造を持つものをペロブスカイトと呼び、鉱物のスピネル=尖晶石と同じ構造を持つものをスピネルと呼ぶ。ええええ? まあ厳密には「相」を付けているけど。
「分けろよ」とド素人は思う。いや、こういうことをしているから地球科学者ですら「マントルはスピネルでできている」なんて書いてしまうケースも出てくる。
と一介のオジジが文句を言っても仕方がない。

そもそもさ、マントルなんて、見ることもそのままの姿で採取することもできないものでしょ。スピネル相とかペロブスカイト相とか言っているのも、あくまで地震波などの観測データから理論的に推定しているだけで、そこにほんとに何がどういう姿であるのかはわかっていないわけでしょ。むちゃくちゃ高温高圧だし。
それを「スピネルです」「ペロブスカイトです」と言ってしまうのは少し言語的に無神経過ぎませんかね。
マントルや核は、人間には絶対知ることができないもの。遠い宇宙よりも全然不可能。いくら計算しても、「事実」はわからない。そういう仮想のものにはもっとファンタジックな特別な名前をつけたほうがはるかにいいのではないですかね。漉し餡とか粒餡とか。(どこがファンタジックじゃい)

さて与太はともかく。(与太かよ)
これはペロブスカイトですけど、マントル下部のペロブスカイトが噴き出してきたわけではありません。それはあり得ないし、そんなものが出てきても灰チタン石成分にはならないでしょう。
カルシウムとチタンと珪酸がおそらく熱水の中で結合したものでしょう。ちなみにペリドットの美しい結晶なんかも、ほとんどはマントル橄欖岩が噴き出したのではなく熱水の中で改めて結晶したもの。のはず。
でもね、やっぱりペロブスカイトはペロブスカイトなんですわな。この石の構造は、地球の秘密の一端を明かしてくれるものなのかもしれない。ナノテクノロジーの観点からも特殊なものなのかもしれない。
そう思って眺めると、実にありがたーい石のように思えて来るではありませんか。え? 来ない?
まあいいんです。ともかくレアストーンなのだわ。えへん。