愉快的生活~上海~

2009年4月から始まった上海生活の中での新たな出会いや発見、中国語の勉強法など。

建築家、走る

2013-05-18 21:40:42 | 読書


隈研吾著 新潮社



この本は、建築家・隈研吾氏の「建築家」という職業と「建築」に対する自身の思想や、クライアントとの熱苦しいまでに向き合う情熱的な仕事っぷリが、飾ることなく率直に語られています。

隈研吾氏といえば、この4月に新しくなった歌舞伎座の設計や、北京・万里の長城近くの「竹の家」をされたことで有名な建築家ですよね。

バブル期の箱モノブームによる建築ブームの最中、その波にのまれるように仕事は多忙を極め、その波が過ぎ去ったバブル後の不況の10年間、バブル期に設計した建築をめぐる世間の冷たい評価によって、まったく「中央」からはお声がかからなくなったという。その間、日本各地の地方都市に目を向けて仕事をしていたんだとか。氏いわく、この「苦悩の時代」こそが、自分の建築家としての新たな基盤作りができた大切な期間だったそうです。

また、この本は「建築」を通して、世界の国・民族・文化を語り、世界経済の潮流に翻弄される建築家の世界だったり、各国各民族の建築に対するとらえ方がとても分かり易く語られています。
隈研吾氏は、日本にまったく留まることなく、むしろ海外の方が彼の本来の「ホーム」のように生き生きと仕事をされてるように感じます。

建築家、という人種は普通の人からしたら、あんまり縁のない人たちだけれど、この本を通じて、建築家という人たちがどんな人たちなのか、建築家の仕事とはどんなものなのかを、その温度が伝わってくるように感じることができました。
といっても、図面の上の設計図だけで仕事をするのではなく、そのクライアントとの信頼関係構築から、そのクライアントの本当に望んでいるものを掘り下げて追求しまくる、こんなド真面目な建築家ばかりではないと思いますが。

建築家という仕事に関わらず、他の仕事にも通ずるヒントがいっぱいの一冊だと思います。
この本の根底に流れているエッセンスは、お客様・仲間との絶対的な信頼関係だということだと感じました。

「何かが生まれるプロセスを、真剣な思いの人たちと共有する楽しみの方が、結果の完成度よりはるかに上である。しかし、それは表裏一体で、プロセスが楽しい方が結局完成度も高くなる」と氏は書いています。本当に、その通りですよね。

地に足をつけて、その職業に向き合う姿は、とても格好良いものです

おススメの本です


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