映画「パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト(2013年ドイツ・イタリア)」の印象が非常に強く
残っています。天才ニコロ・パガニーニを演じたのがデヴィッド・ギャレットというヴァイオリニス
トで演奏シーンもとても良かった。19世紀ヨーロッパのロウソクやガス灯に頼った明かりの乏しい空
間に、光指すようなパガニーニのヴァイオリンの凄まじいテクニックに酔いしれる聴衆が見事に描か
れていました。
パガニーニの伝記は殆どないらしいようで、そういえば何処かで目にしたことが無いと思いました。
長身で全身黒づくめ、ルックスもよく、超絶技巧の演奏で聴衆を驚嘆させ大金を稼いだ初めての演奏
家だったそうです。バッハもモーツァルトも請われて作曲、演奏をする言わば勤め人、ベートーヴェ
ンが比較的裕福になった市民に支持された最初の作曲家、演奏家でしょう。その後に登場したパガニ
ーニはエンターティナーで、イタリア各地を制覇し、ウィーン、ベルリンで圧倒的多数の聴衆の喝さ
いを浴び、満を持してイギリスに上陸します。
パガニーニのヴァイオリンのむせび泣くようなカンタービレにシューベルトは「天使の声を聴いた」
と語り、ロッシーニは生涯にたった三回しか泣かなかったのが、その一回がパガニーニの演奏を聴い
て号泣した時だったという。リストやベルリオーズなどそうそうたる作曲家、演奏家にも影響を与え
ていたとは驚きでした。
今でもパガニーニの超絶技巧曲は何人もの優れた演奏家によって演奏されています。アッカルド、パ
ールマン、五嶋みどり、ヒラリー・ハーンetc。次は誰の演奏を愉しみましょうか。
悪魔と呼ばれたヴァイオリニスト パガニーニ伝 浦久俊彦 新潮新書