目つき、表情
人間の顔はよくできている。先ず、目である。
白目があるのは人間だけ、白目があるからどこを見ているか、どんな気持ちでいるか全て分かる。
「目は口ほどにものを言い」である。
表情も、顔の筋肉が随意筋のため、気持ちの動きを反映する。
しかし、顔は笑っていても、目の冷たい人もいる。
ものの言い方も丁寧に気配りの行き届いた話かただと、聞く方も安心する。
逆に乱暴なものの言い方であれば育ちまで気になる。
アイコンタクト(目線)
複数の相手に話す場合、大切なのが「アイコンタクト」(目線)である。
「目配り」、相手の目を見て話す方法である。
聴き手を説得し共感を得るためには、アイコンタクトが極めて重要である。
アイコントでは瞳の反応をよく観察すること
・相手の目を見る「アイコンタクト」、要は瞳の反応を見ることである。
・瞳は、一般的に暗いところでは大きく開き、明るいところでは小さくなる。
・明るさが同じであっても、関心のないものを見るときは小さくなり、
興味のあるもの、好感がもてるものをみると気は大きくなる。
・瞳が小さく、しかも輝きがないとき、関心が低く、拒否的な意識が強い。
いやなもの、自分の意志に反したものを見るときの表情に現れる。
・瞳に変化がないとき、無関心、疲労、睡眠状態。
緊張感がない状態なので暗示にかかりやすい。
人を説得する場合、説得力次第では、こちらの考えを効果的に理解させることができる。
相手の“受け”を 判断するためには瞳の反応をよく観察するとよい。
アイコンタクト(目線)の目的
・聴き手を惹きつける。
・聴き手の反応を探り、対応する。
・何かを聴き手の心に伝える。
話すときは目を見て話す!
目は語る
●「目は口ほどに物をいう」
何も言わなくても、目は、口で言うのと同じくらい相手に気持ちを伝えるということ。
また、言葉でごまかしても、目を見れば、真偽のほどはわかってしまうということ。
●「目はこころの鏡」
目はひとの内心を映し出す鏡であるの意から、目を見れば、
その人の心の正、不正や言うことが本当かどうかがよく分かる。
目は心の窓、目は口ほどに物を言う。
文楽「文七」 座頭役のかしら
性根は人知れぬ悲しみを内に秘めた
豪快な中年の武将に使う。
平凡社「世界大百科辞典17」(1968年7月10日)
文楽「舅」
表面は冷たく装うが、内はやさしい性格の人物
平凡社「世界大百科辞典17」(1968年7月10日)
謙虚に誠実に
●「目は豪毛(ごうもう)を見れどもその睫(まつげ)をみず」
「豪毛」は「毫毛」と同じで、ごく細い毛のこと。
(目は細い毛筋のような細かいもの間で見ることができても、自分の睫を見ることは出来ないから)
他人のことは小さな欠点までよく見えるが、
自分自身のことはわからないものであるということ。
●「目を掩(おお)うて雀を捕らう」
(雀をつかまえようとするには、雀が自分の姿を見て逃げてしまうのを恐れ、自分の目を隠して雀に近づくことから)
愚かな策を弄して人をごまかしても、
相手にはすっかり見すかされているということのたとえ。
大勢の前で話す場合のアイコンタクト
一対一の対話においても、相手の動き、変化がつかみにくい。
相手が大勢になると、それに応じて視線のつながりは更に複雑になる。
その場合は次のように目線を移動させたらいい。
聞き手が数十人、数百人となると、聞き手の一人ひとりに目を合わせることはできない。
“目を中心に、顔全体を見る” ことはとてもできない。
それでもなお、聞き手全員に話しかけられる目配りをして話す必要がある。
このためには、できるだけ多くの人に目を向けるよう、
左右、前後に目線を移動させるのも一法である。
例えば、ある数人、5、6人から10数人をひとブロックに分けて、
そのブロックに目を向けるようにする。
そして次のブロックに目を移し、目の軌跡が左右、前後になるようにする。
後のブロックを左から右へ、または右から左へと横に移動し、
端のブロックから斜めに前のほうへ移動させ、
それから一番端のブロックをまた左から右へ、
または右から左へと移動していく。
このとき、ある一つのブロックの中で、
反応を適切に返してくれる一番聞き方のよい人を中心に目を向けて話すと、
こちらも適切な間をもって話しかけることができる。
また、よい聞さ手に話しかけると、プレッシャーを感じなくて話しやすくなる。
一つ一つのブロックの中からよい聞き手を探し出すのがこの場合のポイントである。
ブロックに分けて、ブロックからブロックへ
「目」はいろいろなことを表す
アイコンタクトを効果的に働かすためには、
「目」が何を意味するか、人間関係でどのような働きをしているか理解しておく必要がある。
「目」に関連した言葉は多数あるが、下記はその一部である。
「目顔で知らせる」
(目顔は目つき、目の表情)あることを、視線の動きでそっと知らせる。
・おおっぴらな言動がはばかられるときなどに用いられる伝達手段である。
「目頭が熱くなる」
(目頭は、目の、鼻に近いほうの端)強い感動などで涙腺が刺激され、涙が出そうになる。
「目頭を押さえる」
感動したり悲しみを覚えたりして出てくる涙を、指でそっと押しとどめようとする。
「目が据わる」
目を動かさずじっと一点を見つめる。
・思いついた様、酒に酔ったさまを表すのに用いる。
「目が散る」
(見て興味がそそられるものがあって)心が落ち着かず、視線が定まらない。
「目角が強い」
(目角は目じり。転じて、物を見る鋭い目つき、眼力)物をよく見る。
眼力があり、鋭く見抜く。
「目が飛び出る」
(目の玉が飛び出しそうな気がするくらい)ひどく驚く。
また、ひどく叱られさまにいう。
・「目の玉が飛び出る」「目玉が飛び出る」ともいう。
「目角を立てる」
鋭い目つきで見る。睨みつける。「目角に立てる」ともいう。
「目が細くなる」
うれしさや満足で、目を細くして微笑む。表情がゆるむ。
「目が回る」
めまいがしてくらくらする。非常に忙しいさまや速いさまのたとえ。
「目が物を言う」
口に出していわなくても、目つきで相手に気持ちを伝えている。
「目くじらを立てる」
「目くじら」は目の端、目じり。目を吊り上げて鋭く相手を見る。
細かなことをとがめだてる。
「目先を変える」
見た目の趣向を変えて新しさを出す。
「目先を暗ます」
当座の処置をやりくりしてしのぐ。その場を取り繕って誤魔化す。
「目尻を上げる」
「目尻」は、目の、耳に近いほうの端。まなじり。
鋭い目つきで相手を見る。緊張した面持ちで目を見張る。
「目尻を下げる」
満足して、表情を崩して喜ぶさま。
また、男性が女性に見とれて好色そうな顔つきをするさま。
「目で知らせる」
口で言わず、目つきで意思、気持ちなどを伝える。
目で教える。目で物をいう。目を使う。
「目で物を言う」
口に出して言わず、目配せで意思を伝える。
「目と目を見合わせる」
呆然としたり、あきれかえったりして顔を見合わせるさま。
また、共通の思いを持つ者どうしが、ひそかに意味を込めて目配せをする。
「目に物言わす」
目つきで自分の気持ちを相手に伝える。
「目端をつける」
「目端」は、才知、眼力。
その場に応じて、素早く適切な判断を下す。
機転を利かす。
「目を配る」
不行き届きのないようにあちこちをよく見る。
目で合図する。目配りをする。
「目を凝らす」
じっと見つめる。凝視する。 「目を皿にする」
驚いたり、物をよく見ようとしたりして、目を大きく見開くこと。
「目を三角にする」
怒った目つきをする。怖い目つきをする。
「目を白黒させる」
ひどく驚いたり、あわてるさま。
また、苦しくて激しく目玉を動かす。
「目を据える」
目を動かさず、じっと一点を見つめる。
ひどく思いついたり、怒ったり、酒に酔ったりした時の状態をいう。
「目を注ぐ」
目をある方向に向ける。
注意を向けて見る。注目する。
「目を側(そば)める」
嫌悪・恐怖・畏怖などのために正視できず、視線を脇にそらす。
横目で見る。
「目を欹(そば)だてる」ともいう。
「目を背ける」
まともに見ることもできず、視線をそらす。
転じて、ある事態や現実に対して正面から対処せず、逃避する。
「目を逸らす」
視線をわきへ逸して他の物を見る。
「目を外す」ともいう。
「目を使う」
目つきで知らせる。目で相図する。注意して見る。
「目をつぶる」
目を閉じる。眠る。転じて見なかったふりをして見逃す。
知らないふりをして好きなようにさせる。
また、気に入らない点があってもがまんする。
「目を止める」
注意してよく見る。
注目する。「目を留める」とも書く。
「目をなくす」
目がほおにうずくまってしまうくらい目を細くして笑う。
嬉しそうな顔をする。
「目を離す」
視線を別の物に移す。脇見をする。
また、一時的に注意を怠る。
「目を光らせる」
監視の必要があると感じて、気をつけて見る。
「目を引く」
人の注意・視線を向けさせる。
人の目を引きつける。
「目を細くする」
うれしくて目を細くしてほほえむ。
「目を細める」ともいう。
埴輪 男子頭部 (「日本原始美術6」㈱講談社)
「目を丸くする」
驚いて目を大きく見開く。
埴輪 踊る男女
(東京国立博物館蔵)
「目を回す」
気絶する。忙しい思いをする。
「目を見張る」
驚いたり感動したり、また、怒ったりして、目を大きく開いて見つめる。
「目を剥(む)く」
怒りや驚きのために、目を大きく見開く。「目玉を矧ぐ」ともいう。
「目を向ける」
その方向を見る。視線を向ける。ある方向に注意や関心を向ける。
「目を遣る」
注意を引かれたほうへ視線を向ける。
そのほうを見る。
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