石橋みちひろのブログ

「つながって、ささえあう社会」の実現をめざす、民主党参議院議員「石橋みちひろ」の公式ブログです。

NTT労組沖縄分会の新たなスタートに寄せて

2013-09-22 23:59:23 | 活動レポート

9月20日(金)から21日(土)に、沖縄に行ってきました!

今回の沖縄訪問、メインの目的は、NTT労組「沖縄分会」の結成記念レセプションに出席することでした。沖縄の皆さんは、これまで「沖縄総支部」として西日本本部の下、運動を展開されてきたわけですが、今年、西日本本部総支部組織の再編成によって、九州総支部と統合して新たな九州総支部が立ち上がり、沖縄は「沖縄分会」として新たなスタートを切ることになったわけです。

実は、8月末に沖縄総支部解散大会が開かれたので、その時に私もぜひ参加したかったのですが、どうしても日程の調整がつかず、断念した経緯がありました。なので、今回は何としても参加しようと前々から調整していて、首尾良く、結成大会後に開催された記念レセプションに参加することが出来たのです。よかった!
 


(結成記念レセプションで挨拶する砂川分会長)


冒頭、分会を代表して挨拶に立った砂川分会長は、「分会となって、これからは今まで以上に組合員の皆さんに近いところで運動を展開していく必要がある。諸先輩方が築き上げてきた組織の伝統を受け継ぎ、さらに発展させていくために、力を結集してがんばっていきたい」と強い決意を述べられました。長年取り組んでこられた平和運動のさらなる展開や、ICTを中心とした沖縄振興への対応など、今後も間違いなく、組織全体を牽引して頑張っていただけると確信しています。

で、私も、沖縄への思いを込めて連帯の挨拶をさせていただきました!

今回、挨拶の中で特に触れさせていただいたのは、やはり、私自身の沖縄振興にかける思いと、そして普天間や辺野古の問題をはじめとする米軍基地問題への対応など、これまで沖縄の皆さんに教えをいただき、一緒に取り組んできた課題についてです。

実は、沖縄振興については、昨年、沖縄振興法が改正されて以来、沖縄県を中心とした取り組みが進められていて、最近では、企業の景況感が大幅に改善するなど、いい兆しも見られてきているのです。しかし、最も重要な「雇用の質の改善」、つまり県民の皆さんの「暮らしの改善」にはまだまだ結びついていないのが実情で、今後、この点に重点的に取り組んでいかなくてはなりません。

例えば、先頃公表されたデータでは、沖縄市の非正規雇用率はなんと、45%にまで上昇しています。雇用が生まれても、その多くが非正規雇用という実態が浮き彫りにされているのです。これでは、恐らく、若年層の非正規雇用率は半数を超えているでしょう。沖縄の未来のためには、何としても若年層の人材育成が必要だと言っているのに、残念ながらこれでは全く反対の方向に向かってしまっています。

繰り返しますが、経済が成長すれば(企業が儲かれば後から)自動的に雇用も良くなるなんていうのは、一部の新自由主義論者のたわごとなのですよ。沖縄の課題はそもそも、成長というよりは公正な分配であって、そのためのきちんとした政策的対応が不可欠なのです。そしてまた、今後、沖縄経済が上向いていけばいくほど、それを県民生活の向上に結びつけていくための沖縄労働運動の役割が大きくなることは言うまでもありません。

そして、普天間、辺野古、オスプレイ配備や訓練、ヘリパッド建設などなど、米軍基地にかかわる諸問題への対応も引き続き大きな課題です。

自民党・安倍政権は、現行憲法は米国からの押しつけだから変えなければならない、自衛隊を国防軍にして、集団的自衛権も行使出来るようにしなければならないなどと主張していますが、それを言うなら、まず真っ先に、日米地位協定の問題に取り組み、沖縄の、そして日本の主権を回復すべきなのではないでしょうか? 戦後68年経って、未だに、沖縄の土地や空海域が米軍の自由にされている現状、そして米軍専用基地を抱える東京を含む日本各地でも、実は同じ問題が存在している現状こそ、国民的議論を喚起しつつ、国を挙げて改善に取り組むべき課題ではないかと思います。
 


(視察に訪れた「宜野座ITオペレーションパーク」から望む辺野古一帯の海。素晴らしい自然です!)

 

民主党としても、野党に転落した今だからこそ、今一度、沖縄県民の皆さんの声をしっかりと受け止めながら沖縄政策を見つめ直し、政府与党に対してしっかり物申していくことが必要です。私も微力ながら、新生・沖縄分会の仲間の皆さんと共に、「経済成長も基地問題の解消も」という二兎を追い求めて、引き続き、頑張って行く決意をあらたにした今回の沖縄訪問でした!


「NTT労組退職者の会」第15回全国総会に参加!

2013-09-18 23:55:51 | 活動レポート

今日(9月18日)、大阪で開催された「NTT労組退職者の会」第15回全国総会に参加して、全国からご参集の代議員・傍聴の皆さんに連帯のご挨拶をさせていただきました。
 


(開会にあたって挨拶に立つ中央協・岩河会長)


私からは、まず、この1年間のご支援に対する御礼と、とりわけ、7月に行われた参議院選挙の取り組みについての感謝の言葉を述べさせていただきました。その上で、参議院議員としての残り3年間の任期にかける決意として、退職者の会の先輩方をはじめとする高齢者の皆さんが、これからも引き続き、安心して生活し、将来に不安なく暮らしていける社会を守っていくこと、そしてそのために、現在、安倍政権が進めようとしている、高齢者の皆さんに給付減と負担増を強いるばかりの社会保障制度改革(改悪)の流れには、断乎、反対して対峙していくことを申し上げました。

10月中頃から始まる次の臨時国会、そして来年1月からの通常国会と、私たち民主党にとっては大変厳しい政治状況の中での闘いとなりますが、ここがまさに私たちの踏ん張りどころ。生活者、勤労者のための政党としての民主党を再生させるためにも、今日の全国総会で多くの先輩方からいただいた温かい激励を胸に抱いて、しっかりがんばっていきます!


本日でインターン無事終了(インターンだより)

2013-09-18 16:28:30 | 雑記

9月18日をもちまして、石橋みちひろ事務所インターンシップを無事終えることができました。

10日間があっという間で、私にとって宝物となった期間でもあります。 

本当に色々な業務をさせていただきました。

視野も今まで以上に広げることができ、特に、今後重要となる「電子書籍」については、会合にも出させていただき、大変興味が湧きました。

 

議員事務所のインターンシップを行く前は本当に不安でむずむずしておりました。

しかし、そんな緊張も一気にほぐしてくれたのが石橋議員、田中秘書、佛石秘書です。

丁寧に何もわからない私に1つ1つ教えてくださり、インターンへ行くのが楽しくなりました。

その中でも毎回楽しみにしていたのが、お昼の時間です!

参議院議員会館や国会議事堂の食堂へ連れて行ってくださいました。

中でも、国会議事堂内のおそば屋さんはボリューム満点で、午後の業務にカツがはいり満足でした。いちおしは、なんと言っても、おそばです。

また行く機会があればパワーをもらいにいきたいと思います。

 

私が、インターン1日目から決意していた「作業は手際よく正確に」という目標を最終日にまでには到達することができました。目標を決めて物事を進めるということは、以前からも認知していましたが、改めて重要性を感じました。目標を決めて最後まで突っ走るという最大の決意があったからこそここまでこれた気がします。

10日間みっちり貴重な体験をしたことが私の中で誇りとなりました。

2年後は就職活動をし自分の人生を決めていく時期にもなりますが、石橋みちひろ事務所インターンシップで得た、「手際よく正確に」という意識を大事にし、議員事務所でインターンシップができたことに自信を持って、さらに前に進んでいきたいです。

そして大学生にしかできないことをたくさん挑戦します。

石橋議員、田中秘書、佛石秘書に感謝の気持ちでいっぱいでございます。

本当にありがとうございました。


「印刷文化・電子文化の基盤整備に関する勉強会」会合を開催

2013-09-16 23:00:23 | 活動レポート

少し報告が遅くなりましたが、9月13日(金)に、「印刷文化・電子文化の基盤整備に関する勉強会(通称、中川勉強会)」の会合を開催しました。この勉強会、これまでにも何度かこのブログで紹介をしていますが、電子書籍の流通促進と海賊版対策の強化のために、著作権法上の出版者に対する権利付与のあり方について、多くの関係者の参加を得ながら議論を重ねてきている重要な場となっています。
 

 
この日の勉強会は、今年4月以来の開催となりましたが、この間、この問題に関して文化庁の審議会が検討を開始したり、超党派の国会議員連盟を立ち上げたりするなど、いくつか重要な動きがありました。そして、その文化庁の審議会で、出版者への権利付与のあり方に関する「中間取りめとめ案」が9月5日(木)に論議、確認されたことを受けて、その内容について検討するために集まったのが今回の会合です。

ここで、今一度、なぜこの問題への対応が重要なのかについて、簡単に説明しておきます。

現行の著作権法上、著作者と出版者との契約によって成立する「出版権」制度は、紙媒体の出版物を出版することのみを対象としています。つまり、電子書籍は対象となっていないのです。今のままでは、出版者が電子出版を行うための権利を得て、自ら権利者として主体的に配信事業者(プラットフォーマー)等と契約交渉を行ったり、海賊版に対して権利を行使したりすることができないわけですね。

これがなぜ問題かと言うと、そこに「中抜き」の問題が生じてしまうからです。

私たちユーザー(読者)の側から見ると、印刷された紙の書籍であれ、電子書籍であれ、目にするのは著者の作品の最終形であって、そこに至るまでのプロセスは目に見えません。しかし実際には、私たちが手にする最終形の出版物が出来上がるまでには、出版者(をはじめとする多くの関係者)の多大なる労力と、リスクテイク(売れるか売れないか分からない本を出版するリスク)が関わっているわけです。

著者が書いた(描いた)ものが、そのまま私たちに届くわけではないのですね。

当然、出版者は、そうして市場に流通させた書籍の売り上げで、投資を回収して利益を得て、それによってまた新たな出版物を世に出すわけです。世の中には、数多く売れてたくさん利益が出る本ばかりでなく、あまり数は売れないけれど、少数の読者が待ち望んでいる本もあるわけで、総体として出版者が利益を確保することで、印刷・出版文化が成り立っているのです。つまり、私たち読者(国民)にも大きなメリットがあるわけです。

ところが、今、電子書籍が流通し始めたことで、この仕組みが揺らいできているのです。

具体例で考えてみましょう。出版者は、これまで通り、著者の作品を手間暇かけて完成品に仕上げて、出版物として売り出します。ところが、その出版物がそのまま電子書籍化されて、アマゾンや楽天のようなプラットフォーマーのオンライン書店でも売りに出されたとします。さて、どういうことが起こるでしょうか?

これまでであれば、書店で紙の書籍として売れていたのが10,000冊としましょう。そして例えば、その10%、1,000冊が、あるプラットフォーマーの電子書店で販売されたとしましょうか。そうすると、これまで通りのコストをかけて紙の出版物を制作した出版者の利益は減少して、その出版物の創造(やリスクテイク)には何ら関与しなかったプラットフォーマーは、その出版物の電子版を流通(公衆送信)させただけで、利益を得ることになります。

そして、もし近い将来、その10%が、20%、40%と拡大していったらどうなるでしょうか? その時に、果たして出版者はどうなるでしょう? いや、出版という大切な行為自体がどうなってしまうでしょう?

繰り返しますが、これをユーザーの側から見ると、電子書籍という新たな選択肢の追加と利便性の高まり、そしてそれが料金の低廉化を伴うものであればなおさら、諸手を挙げて歓迎すべき話に聞こえるかも知れません。しかし、そのやり方次第では、「出版者」、ひいては「出版行為」の存続を危うくし、ひいては、書籍文化そのものの発展を阻害することにもなりかねないのです。

そのために、これまで著作権法上で認められていなかった、出版者に対する権利付与のあり方について早急に答えを出し、著作権法の改正を行う必要があるわけです。

と、解説が長くなってしまったので、今日はこの辺りでとどめておきますが、ではどのような形で出版者に権利を付与するかという点については、複雑な利害の絡んだ話で、なかなか簡単に結論が出せるものではありません。だからこそ、この中川勉強会でも1年半かけて検討をしてきましたし、文化庁の審議会でも、半年以上かけて議論を進めているわけです。

この日の中川勉強会でも、出席者からは方向性の異なる意見が出されました。しかし、私個人としては、1つの方向性が導き出せたような手応えを感じています。あとは、最終的な結論をその方向に持って行けるかどうか、ですね。次は、議連の役員会を開催する予定ですが、何とかいい方向で決着できるよう、対応を進めていきたいと思います!


シンガポールICT事情視察から無事、帰国しました!

2013-09-13 23:27:28 | 活動レポート

9月8日(日)から三日間、シンガポールに情報通信(ICT)事情視察に行ってきました!

今回、同行してくれたのは、同期の難波奨二参議院議員と斉藤嘉隆参議院議員の2人。現地での活動は正味2日半という強行日程ではありましたが、盛りだくさんの内容で、充実した視察となりました。以下、写真を使いながら主な視察内容を報告します。


①シンガポール建築建設局(BCA)「ゼロ・エネルギー・ビルディング(ZEB)」
 


まずは、エネルギー分野でのICT利活用視察ということで、シンガポール建築建設局(BCA)が実証実験を行っている「ゼロ・エネルギー・ビルディング(ZEB)」を訪れました。
 


このZEBは、既存の古いビルを全面改装して、エネルギーを自給自足する新しい「グリーンビル」へと転換することを実証実験しているテストベッド用ビルです。土台とか躯体はそのままに、内外装をグリーンビル仕様に転換することで、シンガポールのグリーン基準に適合させるわけです。太陽光エネルギー発電、太陽光の照明への有効活用、植物外壁や屋上菜園、各種センサーやモニター、そしてエネルギー・マネージメント・システムなどの最新技術をフルに活用して、全体として効果的・効率的な省エネ・創エネを実現しています。

シンガポールでは、2030年までに全ての建物の80%をグリーン環境基準に適合させることを国家目標に掲げているそうです。このZEMで得られた成果を、今後、シンガポール全体に普及させていく計画ですね。


このテストベッド用ビルには、最新のBEMS(ビルディング・エネルギー・マネージメント・システム)が導入されていて、あらゆる箇所に設置されたセンサーからの情報をモニターしながら、ビルのあらゆる部分のエネルギー需給状況が完全に見える化されています。また、建物内の各所で、異なる省エネ部材やモデルが実験されていて、それぞれの省エネ効果が長期的なデータ解析によって分析され、その結果が蓄積されているのです。最適なものを明らかにして、今後、導入を進めていこうということですね。

 


とりわけ、建物のあらゆる所に太陽光発電パネルやフィルムが設置されていて、その発電効果(フィルムの場合は遮光・断熱効果も)が検証されていました。私も、太陽光発電パネルはあちこちで見ていますが、窓にビッシリと発電・遮光フィルムが貼られているのを実際に見るのは初めて。大変興味深いテストベッドでした。

先ほど説明した通り、シンガポールでは2030年までに、建物全体の80%を国のグリーン環境基準に適合した建物とすることを国家目標としているわけですが、課題は、既存の建物をどう改築していくかです。新規で建設するビルは最初からこの基準に合致したものになるわけですが、古いビルの改修には多額のコストもかかるため、よりハードルが高いわけですね。そのため、より効果的・効率的なシステムを創り出していくことが必要で、この実証施設が大変重要な役割を果たすことが期待されています。

現在、さらなる最新技術をテストするための新しい実験棟も建設されていて、説明していただいた所長さんからは「ぜひまた2年後に訪問して欲しい」との自身に溢れた言葉もいただきました。確かに、今後の展開が楽しみですね。まだ、日本との連携・協力はスタートしていないようですが、ぜひ今後、検討していければと思います。

 

②日立アジア社

 

 
続いてお邪魔したのは、日立アジア社。日立グループのASEAN地区統括本部です。こちらでは、ASEAN地域における日立グループの展開、とりわけ、ICT分野での取り組みについてお伺いするとともに、現在、シンガポールで政府との協力・連携によって取り組んでいるいくつかのプロジェクトについて、その概要を説明していただきました。 

 


日立アジア社は、シンガポールで経済開発庁(EDB)をはじめとする政府諸機関との協業を推進していて、特にEDBとはMOU(覚書)を締結し、社会インフラとICTとを融合させた新しい事業の拡大を推進しているそうです。シンガポールは、国自体が小さいために、国内企業を保護・育成するよりも、世界のあらゆる企業と協業しながら最適なソリューションを自国に導入していくという戦略をとっているわけですね。

今回のヒアリングでは、特に、交通分野でのICT化の取り組みについて、大変興味深いお話しを聞くことが出来ました。これについては、今、シンガポール国内での新しいプロジェクトに応札しているところだそうなので、中身をあまり詳細に説明しませんが、コミュニティーにおいて電車やバス、そしてプライベート移動システムの運行情報をICTで結んでより効果的・効率的な運用を実現し、まちの中での人の移動(特に高齢者や障がい者など)を支援し、最適化していくというもの。う~ん、面白い。今後の日本での取り組みにも参考になると思われるので、ぜひ頑張っていただきたいですね。

この他、日立アジアさんでは規制改革の話や、ビッグデータの利活用の話など、私たちの今後の取り組みも大変参考になる意見交換をさせていただくことが出来ました。

 

③NTTシンガポール社
 

 
続いて、NTTシンガポール社にお邪魔して、風見社長からシンガポールのICT事情や、社会インフラ開発の状況、さらにはNTTグループの取り組みなどについてお話しを伺いました。
 

 
シンガポールは、電気通信市場の自由化という点では日本よりずっと遅れて、2000年にようやく自由化が始まっています。その後、政府の主導によって積極的な情報通信政策が進められて、特に電子政府やICT教育など、利活用面で大きな進展を見せています。風見社長のお話によれば、特に「国民ID制」の導入が、国内におけるICT利活用の促進に大きく貢献したとのこと。この点は、日本でもようやくマイナンバーの導入が決定して、2016年以降、電子政府をはじめとする将来的な利活用促進につながることが期待されているわけですが、そのことを実証的に裏付けるお話ですね。

また、通信事業者の競争環境や、インフラ事業の収益性の問題などについても意見交換をさせていただいたのですが、日本の状況と似通っている部分も多く、共通の課題に直面しているという印象を受けました。やはりシンガポールでも、インフラを持つ通信事業者がいかに土管化を防ぎ、OTT(上位レイヤーのサービス提供会社)と競い合いながら収益モデルを維持・確立していくかが大きな課題になっています。先頃、シンガポール政府が、今後新築する全ての住戸に1GbpsのFTTH設置を義務づける方向を打ち出したのですが、ではその上で、どのようなICTサービスを提供するのかはまだ不透明とのこと。この辺は、これからの取り組みにとっても大きな課題になるのではないでしょうか。

 

④ シンガポール国立教育研究所(NIE)

 


今回の視察の目玉は、私がこの間、政策的な取り組みを進めてきた「教育現場におけるICTの利活用」に関する視察でした。大変残念ながら、この時期、小中学校が休みに入っていたために、実際の授業風景は見ることが出来なかったのですが、訪問した国立教育研究所(NIE)と教育省からのヒアリングで、シンガポール政府の基本的な考え方や具体的施策について、大変示唆に富んだ話を聞かせていただくことが出来ました。
 

 

最初に訪問した国立教育研究所(NIE)では、ICT教育コンテンツの利用や開発のための訓練に関するプレゼンテーションを受けたのち、ICTを活用した教育政策に関するプレゼンテーションを受け、その後、「Classroom of the Future(未来の教室)」というショウルームを見学しました。

二つのプレゼンテーションの後では、質疑応答の時間があったのですが、いずれも時間をオーバーしながら活発なやり取りをさせていただきました。先方も、まさかこれだけ具体的かつ専門的な質問が飛んでくるとは予期していなかった(笑)ようで、質疑終了後には「私たちにとっても、大変、参考になる意見交換だった」と喜んでくれました。

実際、日本のアプローチとの最も大きな違いは何かというと、ソフト面が圧倒的に重視されている、ということに尽きるのではないでしょうか。ここでソフト面というのは、ICT機器などのハード面以外の部分を全て包含していると考えていただいていいのですが、とりわけ、「教授法(=ICTを利活用して何をどのように教えるのか)」と、それを基にした「教員養成・育成」に力を注いでいるということです。NIEは教員養成学校なのですが、シンガポールで教員になるほぼ全ての学生がNIEを卒業するということで、その中で必ずICT教育法についてのカリキュラムを修了しなければなりません。つまり、全ての生徒が共通のICTスキルをもって実際に教師になるわけで、全ての学校でICTを使った授業が展開できるわけです。

また、ICT教育を授業で実践する上で「学習者(学生)本位の授業」を行うことは日本でも共通なのですが、その際に使うICTツールとして、インターネット上のWeb2.0アプリケーションを最大限に活用しているという点が大変新鮮でした。つまり、プログラミングしたりパワーポイントを作ったりするのではなく、SNSなどのソーシャルメディアを使いながら工夫を凝らした授業を行うというのです。先生の作業労力を極力減らしていこう、かついつでもどこでもアクセス可能なものを教材にしてしまおうという考え方で、大変共感を持ちました。

今後の私たちの議論でも、この辺の考え方をぜひ取り入れていきたいと思います。

 

⑤ シンガポール教育省(MOE)ヘリテージ・センター

 

 

そして最後にお邪魔したのが、シンガポール教育省(MOE)のヘリテージ・センター。こちらは、シンガポール教育政策全般に関するギャラリー(展示館)で、英国統治時代から1965年の建国を経て現在に至るまでの教育の歴史を時系列を追って紹介しています。

 

 

シンガポールも日本と同じで、まだまだ貧しい国だった時期から教育に力を入れてきていたことが良く分かります。さらに、シンガポールには中華系、マレー系、インド系など、異なる人種や宗教が混在をしているわけですが、教育政策やその実践の中で、いかにその民族的・宗教的違いを克服し、統合して一つの国づくりを進めてきたのか、その中でいかにお互いの文化を尊重しあい、保存して継承すべきものは代々引き継いできたかという点も大変興味深く学ばせていただきました。

 


ちなみに、展示物の中には、30年ぐらい前のテレビやラジオ、そして学校の学習机などが展示されていました。しばし、とっても懐かしい雰囲気に浸りながら説明を聞いてました(笑) そうそう、ちゃんとICT教育の歴史を紹介した部分もありましたよ。すでに1990年代からICT教育に取り組んできたという歴史を見ると、いかに日本が遅れているかがよく分かります・・・。

 

⑥その他

実は、シンガポール滞在中、他にもいろいろとプログラムがありました。シンガポールの労働組合連合組織(日本の連合と同じ位置づけ)であるSNTUCへの訪問、SNTUC出身の国会議員との意見交換、連合が加盟する国際労働組合連合組織であるITUCのアジア太平洋組織事務所への訪問と鈴木則之書記長との懇談などなど。いずれも、今後の我々の活動に参考になる意見交換をすることが出来ました。

 

今回のシンガポールICT視察、学校の授業風景を見ることが出来なかったことなど、正直言って100%満足のいくものではありませんでした。しかしそれでも、シンガポールにおけるICT教育政策の現状や今後の取り組みなどをはじめ、私たちの今後の取り組みにとって大きな収穫を得る事ができました。今回得られた知見については、何としても、今後の活動に活かして行きます!

以上、シンガポールICT事情視察の報告でした。今回の視察を支援していただいた皆さん、ありがとうございました!