AKB48の旅

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クローズアップ現代9月9日「私たちは”内向き”ですか?~変わり始めた若者たち~」

2015年09月11日 | AKB
9月9日の「クローズアップ現代」に注目、と書いてしまった手前、スルーはできないよなあ。いやこれは困った。いちおう高橋さんの発言には何の問題もなかったとか書いてお茶を濁したいところだけど、番組としての問題意識、問題設定が何ともアレ過ぎて、なんか天を仰ぐしかなかった。

批判の意図はないよと前置きした上で、番組内容には直接触れずに、不肖私なりにもう少しましな問題意識、より生産性の高い問題設定など、以下つらつら書いてみることに。

というか、ある意味決定的なキーワードは番組中に出てたわけで、フリースペースの主催者という方が語っていた言葉「ネガティブな情報をシャワーのように浴びてきた」そして「負の遺産」がそれ。なんでそこを掘り下げないの(←批判ではない為念)。

その正体が何かと言えば、ぶっちゃけ「歴史負債」と「経済負債」、そして「人口負債」の最恐トリプルタッグと言うことになるんだと思う。ほとんどの日本人にとってはあずかり知らぬ、70年も前の敗戦に起因してると考えられる「歴史負債」と、バブル崩壊後の失われた20年と少子高齢化に起因してる「経済負債」。卑近の実例としては、つい先日の世界遺産登録騒ぎを初め枚挙のいとまがないし、「国の借金が1000兆円を越えた」という恐ろし過ぎる報道も、繰り返し突きつけられ続けてる。少子高齢化そのものは紛れもない現実。

けれども、いざ自身の身近な生活を通して感じられる日本の社会の実態、そして自身の置かれた現実は、そんなトリプルの負債の重圧からは一見無縁に見える。少なくとも大多数の人にとって、日々の生活を通して感じることのできる日常という名の小さな幸せを妨げるようなものとしては、それらはほとんど視界には入っては来ない。

それどころか、若者という括りを越えて一般的な日本人の現実感覚として、自然災害であればともかく、当たり前のように飢えることは想定すらしてないし、犯罪に巻き込まれたり殺されたりする恐怖は他人ごとでしかない。ましてや戦争なんてリアリティの欠片もない。ISISは全く無関係の遙か遠いニュースに過ぎないし、シリア難民なんて関心すらない。

けれどもこれでもかとばかりにマスコミが、そして時に学校が、大人が強いる世界認識には、とりわけ「歴史負債」と「経済負債」に関する情報がてんこ盛りになってて、もうお腹いっぱい。そんなとても受け入れられないほどの「負の遺産」なのに、それが自身の生活空間から見えるリアルであるはずの世界認識と、全くと言って良いほど整合しない。だから矛盾のない自己了解像が形成されがたい。

指原さんの評価で、世界認識と自己了解像について何度か触れたけど、これは人の存在様式として決定的なものとなる。ここが確立しないと、人は外部との関係性をうまく構築できなくなる。その結果、すべてが曖昧になり、様々な相対関係に依拠して流動することになる。あるいは逆に、外部性に対して攻撃的になる。

前者の場合、言葉としては「自信がない」とか「社会への関心がない」、それこそ「内向き」とかになってしまうかも知れないけど、その根っこは、むしろ悪意や敵意からの逃避という表現の方が、より真相に近いだろう。

しかも厄介というか救われないのが、この「負の遺産」のうちの喧しい方、「歴史負債」がほぼ虚構というか冤罪であること、そして「経済負債」がほとんど詐欺紛いであること。逆に遙かにリアルなはずの「人口負債」が、むしろ放置されがちであること。結果、必然的に現実認識に気の遠くなるような歪みが現れてしまう。しかもそれが一向に解消される気配がない。

この「クローズアップ現代」という番組もまた、そんな歪みを平然とマッチポンプよろしく、拡大再生産してる。問題設定が根本的に間違ってることに気づこうともしない。なんか天を仰ぐしかない。