他叙伝：横山由依

製作サイドがAKBのことを深く知ってる。隠れた愛情すら伝わって来る。しっかりとした取材と有意な情報量の多い良番組。とても興味深い内容だった。というか、これまでの公式情報や、小出しにされていたリーク情報のようなものを越えて、ニュアンス的な部分も含めて、横山さんの総監督継承の実態が、よく理解できた。

これであらためて確認できたのが、やはりまずは秋元氏の指名だったと言うこと。背景とか多少とも知っているなら、高橋さんが進言するはずもないことは明らかなわけで、この辺りがその機微も含めて、高橋さんによる直々の一次ソースで明かされたのは、これが初めてじゃないだろか。

ここにかつての高橋さんと大島さんによる横山さん評を重ね合わせるだけでも、AKBにおける横山さんという「構造」が、鮮やかに見通せることになる。この「構造」こそが、恐らくはメンバーの誰もが異論なく納得する、横山ジキソーの内部的な説得力ということになる。

ここは見えずらくても決定的なところで、かつての高橋さんの立場が、個々人の一所懸命、努力の先に現れた、あたかも自然発生的な自己組織化共同体の結節点とも表現すべきものであったこと、それが「総監督」として見える化されたこと。とば口とは言え、あれとの近似というか相似形になってると見なせる。もっとも「今、一人ずつ面談してる」はいかにも横山さんらしいかな。

さらには現状、SKEに宮澤さん、NMBに山本さん、HKTに指原さんが配置されてるという妙も、計画的という見方も偶然という見方も可能ではあるけど、そういう動的平衡の流れの中で、運営サイドの「先読み」的な意図せざる意図が働いたものとも考えられる。つまりは動的組織における集団的知性の発露とでも言うか。

複雑系あるいはカオス理論的な行動様式を、まず間違いなく理詰めとかではなく経験によって、そして何より生まれ持った特異才能によって掴み取ってきた、日々掴み取り続けてる、そんな秋元氏による１ミリ先へのベット、横山ジキソーという一手もまた、ギャンブラーとしての面目躍如な一手であったことになる。