白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

幽玄の間・次の一手

2017年02月23日 21時54分24秒 | 幽玄の間
皆様こんばんは。
本日の対局は勝ちました。
面白い場面もありましたが、それは明日にでもご紹介するとしましょう。

本日は幽玄の間にて、国内戦6局が中継されました。
木曜日にしてはかなり少ない日でしたね。
さて、それでは次の一手クイズを出題してみます。
解答は示しませんので、幽玄の間の棋譜をご覧ください。



1図(王-杉本戦)
十段戦予選A、王立誠九段(黒)と杉本明八段の対局です。
33手目に黒△と受けましたが、次に白はどこに向かうべきでしょうか?
右辺白の勢力を生かしたい、というのがヒントです。





2図(大西-趙戦)
本因坊戦予選A、大西竜平二段(黒)と二十五世本因坊治勲の対局です。
43手目に黒△と繋いだ場面、白の逃せない一手はどこでしょうか?





3図(六浦-彦坂戦)
本因坊戦予選A、六浦雄太三段(黒)と彦坂直人九段の対局です。
105手目に黒△と繋いだ場面ですが、上辺がこのまま黒地になっては大き過ぎます。
白はどこから手を付けたでしょうか?





4図(井口-張戦)
十段戦予選A、井口豊秀八段張栩九段の対局です。
20手目に白△と飛びましたが、ここで黒にこの一手という好手があります。
どこでしょうか?





5図(林-武宮戦)
碁聖戦予選B、林漢傑七段(黒)と武宮正樹九段の対局です。
23手目に黒△とコスミツケました。
白はどういう作戦で臨みますか?





6図(羽根-田中戦)
王座戦最終予選、羽根直樹九段(黒)と田中伸幸三段の対局です。
152手目に白△と繋いだ場面です。
左上の白大石が生きていませんが、黒の次の一手はどこでしょうか?


如何でしょうか?
木曜日はこんな感じで碁を紹介してみようかと思っています。
プロの手を気楽に予想してみてください。

Master対棋士 第21局

2017年02月22日 23時59分59秒 | Master対棋士シリーズ(完結)
皆様こんばんは。
第18回農心杯は、朴廷桓九段が范蘊若五段に敗れて韓国も全滅、中国の優勝が決まりました。
近年の中国勢の層の厚さを象徴するような結果でしたね。

また、本日もおかげ杯の予選が行われました。
おかげ杯の予選では、所属の違う棋士同士はネット対局となります。
ぜひ幽玄の間で棋譜をご覧ください。
対局者には励みになるでしょう。

さて、本日はMasterと陳耀燁九段(中国)の対局をご紹介します。
陳九段は1989年生まれの27歳、世界戦で2度の優勝を誇っています。



1図(実戦)
陳九段の黒番です。
白1と一本カカリを妨害し、黒2の挟みを待ってから白3と受けました。
この手順から、Masterは締まりを重視している事、黒Aのカケを嫌っている事が読み取れます。





2図(実戦)
長い手順ですが、ご容赦ください(黒15はA、白22はB)。
部分部分の手順は、どうという事はありません。
重要なのは右上、右下、左下共に、最後に黒が打って終わっているという点です。
常に先手を取って他へ向かおうとする、Masterの特徴が表れています。




3図(実戦)
黒1に対していきなり白2とコスミツケる打ち方は、黒を固めて良くないとされて来ました。
しかし、何年か前にプロが打ち出し、一時期流行しました。

この局面では白△の強い石が睨みを利かせており、上辺に大きな黒模様ができる可能性はありません。
上辺の黒石を固めてしまっても罪は軽く、その間に手薄な左上隅や左辺を守る事を重視したのでしょう。
これも大局観に基づく判断です。





4図(実戦)
黒1に対して、白Aと切ればコウ争いが始まります。
ここで白2と、妙な所に打った手に注目しましょう。
これはコウ立て作りです。





5図(変化図1)
黒1と受けさせれば、白2と切った時のコウ立てができます。
白4に続いてAと抜けば黒をすっきり取る事ができ、黒BやCも心配する必要が無くなります。





6図(変化図2)
コウ立てとして白3を使おうとするのは良くありません。
迷わず黒4と解消されてしまいます。
白5と連打しても黒6と打つ手があり、白Aと取ってもコウです。
前図とは雲泥の差があります。

コウ争いでの判断力は、前身のアルファ碁とMasterの最大の違いだと思います。
アルファ碁のみならず、AIの大きな弱点でしたが、Masterは明らかに克服しています。
部分戦に持ち込んでミスを期待する事は難しくなりました。

本局は様々な面で、Masterの特徴が表れた1局だったと思います。

Master対棋士 第20局

2017年02月21日 23時59分59秒 | Master対棋士シリーズ(完結)
皆様こんばんは。
農心杯は、井山裕太九段残念でした。
序盤で悪い流れになってしまった気がします。
これで朴廷桓九段とは2勝2敗、やはり強敵ですね。

本日はおかげ杯の予選も中継されていました。
その中で注目の1局と言えば、やはり伊田篤史八段大西竜平二段の対局です。
大西二段が奔放な打ち回しで、見事伊田八段を撃破しました。
ぜひ幽玄の間でご覧ください。

さて、本日はMasterと朴廷桓九段の対局をご紹介します。
朴九段は韓国ナンバーワン棋士ですが、AIにも強いと見られているのでしょう。
Masterとの全60局中4局も打っており、これが1局目です。



1図(実戦)
Masterの黒番です。
白1、3は近年プロの間で流行している打ち方ですが、次に黒Aと打つ事が殆どでした。





2図(実戦)
しかし、実戦は右上に拘らず、黒1、3と足早に展開しました。
右上の形で手抜きする打ち方は時々試みられていましたし、黒1も突飛な手ではありません。
(黒1では他にAやBと打った人もいます)

それにしても、いかにもAIらしい打ち方という印象です。
全体の配置のバランスを重視しているのです。





3図(実戦)
下辺の黒模様を広げるにあたって、黒2、4の打ち方がまた独特です。
黒Aからの出切りが成立する訳でもないので、一般的なプロの感覚からすれば、足が遅い印象を受けてしまいます。
しかし黒△との連絡がしっかりしており、手厚い打ち方という面があるのです。
Masterの碁は足早なのか手厚いのか、よく分かりません。

白5とぼんやり消したのは、バランスを重視する朴九段らしい感覚で・・・。





4図(変化図)
黒1と受けてくれれば、白2あたりに引き上げて十分という判断でしょう。
黒の構えが低くなり、大きな地ができそうにありません。





5図(変化図)
黒1とボウシして攻めるような手は十分考えられます。
しかし、自分の模様に追い込んでしまう感もあり、あまり気分が良くないかもしれません。





6図(実戦)
実戦は黒1、3と、右辺一帯の黒模様を広げながらの攻めでした。
いかにも良さそうな手ですね。
こののびのびとした感じ、武宮正樹九段を思わせます。
黒7までと、白を閉じ込める形になっては好調でしょう。
この後際どい戦いになりますが、Masterに隙はありませんでした。

本日の中継対局

2017年02月20日 20時41分53秒 | 幽玄の間
皆様こんばんは。
本日は2016年グランドチャンピオン戦の2回戦4局、3回戦2局が行われました。
週刊碁に私のコメントが載る予定です。
宜しければお買い求めください。

さて、本日は実験的に次の一手クイズを出題してみます。
プロが次にどこへ打ったかを当ててみてください。
解答は幽玄の間での中継をご覧ください。

我々プロ、もしくはプロを目指す人の勉強法として、次の一手を予想しながら棋譜並べをするというものがあります。
自分の頭を使うので、漫然と手順を追うより身になりやすいのです。

これは勉強に限らず、プロの碁を楽しむためにも有効だと思います。
外れたとしても失うものは無く、当たれば自分はプロ並みと喜んで頂けば良いのです(笑)。



1図(山下-呉戦)
グランドチャンピオン戦2回戦、呉柏毅ゆうちょ杯(黒)と山下敬吾九段の対局です。

まだ優劣は見えにくい局面ですが、ここから一気に白がペースを握ります。
山下九段はどこから仕掛けたでしょうか?





2図(河野-結城戦)
グランドチャンピオン戦2回戦、河野臨阿含・桐山杯(黒)と結城聡関西棋院第一位の対局です。
白△と目一杯に下辺を囲いました。
黒としては、このまま地にされてはたまりません。
河野九段はどこから手を付けたでしょうか?





3図(藤沢-高尾戦)
グランドチャンピオン戦2回戦、藤沢里菜女流本因坊(黒)と高尾紳路名人の対局です。
白△と飛ばれて、左下の黒が苦しい状況です。
どう打開したでしょうか?

この碁は高尾名人にうっかりミスがあり、藤沢女流本因坊が金星を挙げました。
藤沢女流本因坊の粘りが、高尾名人のミスを呼んだかもしれません。





4図(大西-張戦)
グランドチャンピオン戦2回戦、大西竜平新人王(黒)と張栩NHK杯の対局です。
白△とハネた所で、意表を衝く一手が飛び出しました。
大西新人王はどこに打ったでしょうか?

大西新人王も、張栩九段を破る金星を挙げました。
最近の若手の活躍は、目を見張るものがありますね。



5図(藤沢-河野戦)
グランドチャンピオン戦3回戦、藤沢里菜女流本因坊(黒)と河野臨阿含・桐山杯の対局です。
黒△の強手に対し、白はどう対応したでしょうか?





6図(大西-山下戦)
グランドチャンピオン戦3回戦、大西竜平新人王(黒)と山下敬吾九段の対局です。
黒△と深々と侵入して来ましたが、ここで白に凄い手が出ました。
「丈和の再来」などと呼ばれる山下九段ですが、次の一手は江戸時代の名人、本因坊丈和を想起させました。





7図(原-竹内戦)
本日はもう1局中継対局がありました。
新人王戦本戦、原正和二段(黒)と竹内康祐三段の対局です。
黒の逃せない一手はどこでしょうか?


明日から、農心杯第3ラウンドが始まります。
日本の最終兵器井山裕太九段が登場、まずは韓国の朴廷桓九段と対局します!
幽玄の間で中継されますので、ぜひご覧ください。

Master対棋士 第19局

2017年02月19日 23時59分59秒 | Master対棋士シリーズ(完結)
皆様こんばんは。
本日はMaster対柯潔九段の2局目をご紹介します。



1図(実戦)
柯潔九段の黒番です。
黒△に対し、反射的に白Aと頭を出したくなりますが、右辺の白は生きていますし、右下の黒もそう弱い石ではありません。
ならば手を抜こうという発想は分かります。





2図(変化図)
となれば、白1あたりがまず思い浮かぶ着点です。
こう打たなかったのは、黒2の三々入りを嫌ったからでしょう。
黒10の後AやBを見られ、上辺をどう守るか悩ましいのです。





3図(実戦)
しかし、白1、3とは驚きました。
黒4とツケられると左上白の形が良くないので、白がまずいとされています。
しかし、この局面では隅を守る事と白3へ先着する事が、何より大事と見ているのですね。

こういう打ち方自体は、昔からあるものです。
しかし、通常は周囲にもっと白石が多い時に打たれます。
この局面では、無理筋と感じる棋士が多いのではないでしょうか。





4図(実戦)
左上を利かすだけ利かして、黒12に打ち込みました。
これが厳しく、一見すると白が苦しそうに見えます。





5図(実戦)
しかし、白11までとなってみると、白も粘りのある格好をしています。
簡単にやっつける訳には行きません。





6図(実戦)
結果は、黒△と白△の振り替わりになりました。
そこそこの分かれに見えますが、白が先手になったので、1の切りが強烈でした。
この後左辺に大きく白地が増える事になり、白の勝ちが決まりました。

人間最強の棋士でも、判断を間違えると簡単に負かされてしまいます。
恐ろしい強さです。