和田秀樹「60歳からでも脳はどんどん発達する」
東洋経済Online より 241230 和田 秀樹:精神科医
高齢者専門の精神科医である和田秀樹さんの著書📗『脳と心が一瞬で整うシンプル習慣 60歳から頭はどんどんよくなる!』。
本書の中で和田さんは、人はいくつになっても脳の働きを活性化させ、賢くなり続けられるのだと語っています。一部抜粋・再構成してお届けします。
⚫︎高齢になってから人生のピークを迎えた人たち
60歳というと、ひと昔前には定年退職の年齢として設定されていたこともあり、「第一線を退く年齢」というイメージを持つ方もいるかもしれません。
けれど実際には、シニア世代の方は多くの可能性を秘めていますし、仮に過去に華やかな学歴や肩書などを得ていなかったとしても、70代、80代、時には90代になってから華々しい活躍をしたり、世の中に大きな影響を与えたりした方は大勢います。
大切なのは、「明日は今日の自分を超えていこう」という思いで前進し続けること。
そういう人は「頭をよくしよう」と決意すれば、何歳であってもどんどん知力を増していくことができますし、限界突破していくことだってできるでしょう。
ここで、年齢を重ねてから人生のピークを迎えた方の例をいくつかお話ししましょう。
2024年4月に、日本航空(JAL)初の女性社長として就任された鳥取三津子さんは、もともとは客室乗務員として同社に入社した方でした。女性社長だけでなく、CA出身の方の社長就任も、同社にとって初めてのこととなります。
鳥取さんは長崎県の活水女子短期大学英文科の出身。2024年現在、彼女は59歳。社会人になってからの約40年の間にずっとご自身を磨き続け、経営者としての哲学とスキルを身につけてきたのでしょう。
⚫︎歴史上の人物の多くが遅咲き
歴史上の偉人で言うと、たとえば初めて日本地図の作成に乗り出した伊能忠敬(1745年~1818年)も、遅咲きの人物として有名です。
「人生50年」と言われていた時代、忠敬は50歳という高齢で天文学者に弟子入りし、測量・天文観測を本格的に学び始めました。その後、56歳から測量の旅に出て、71歳になるまで17年かけて日本全国を測量したのです。
ここで、年齢を重ねてから人生のピークを迎えた方の例をいくつかお話ししましょう。
2024年4月に、日本航空(JAL)初の女性社長として就任された鳥取三津子さんは、もともとは客室乗務員として同社に入社した方でした。女性社長だけでなく、CA出身の方の社長就任も、同社にとって初めてのこととなります。
鳥取さんは長崎県の活水女子短期大学英文科の出身。2024年現在、彼女は59歳。社会人になってからの約40年の間にずっとご自身を磨き続け、経営者としての哲学とスキルを身につけてきたのでしょう。
⚫︎歴史上の人物の多くが遅咲き
歴史上の偉人で言うと、たとえば初めて日本地図の作成に乗り出した伊能忠敬(1745年~1818年)も、遅咲きの人物として有名です。
「人生50年」と言われていた時代、忠敬は50歳という高齢で天文学者に弟子入りし、測量・天文観測を本格的に学び始めました。その後、56歳から測量の旅に出て、71歳になるまで17年かけて日本全国を測量したのです。
そして73歳の没後、彼の遺志を継いだ弟子たちが『大日本沿海輿地全図』を完成させています。
弱まった足腰で日本中を歩き回ることにどれだけの労を要するかは、決して想像に難くはないでしょう。年齢を言い訳にしなかった忠敬のバイタリティが今の地図の礎を築いたのだと考えると、感じ入るものがあるのではないでしょうか。
人生にはいくらでも形勢逆転のきっかけが転がっています。ですから、「もうこんな歳だから」とか「学歴や肩書がないから」「取り立てて秀でたものがないから」などと言って自分の限界を決めてしまうのは、とてももったいないことだと思います。
積み重ねてきた年齢と人生経験を武器に、花開くときを信じてください。
弱まった足腰で日本中を歩き回ることにどれだけの労を要するかは、決して想像に難くはないでしょう。年齢を言い訳にしなかった忠敬のバイタリティが今の地図の礎を築いたのだと考えると、感じ入るものがあるのではないでしょうか。
人生にはいくらでも形勢逆転のきっかけが転がっています。ですから、「もうこんな歳だから」とか「学歴や肩書がないから」「取り立てて秀でたものがないから」などと言って自分の限界を決めてしまうのは、とてももったいないことだと思います。
積み重ねてきた年齢と人生経験を武器に、花開くときを信じてください。
諦めさえしなければ、人は何歳からだって発展し続けられるし、一生頭をよくし続けられるのです。
⚫︎若い時より脳の働きをよくするのは十分可能なこと
意外かもしれませんが、脳はいくつになっても鍛えることができます。
⚫︎若い時より脳の働きをよくするのは十分可能なこと
意外かもしれませんが、脳はいくつになっても鍛えることができます。
これまで、脳は年齢とともに衰えていくものだから仕方ない、と諦めていた方も多いことでしょう。
実際に専門家たちの間でも、20世紀まではそのように思われていました。
実際に専門家たちの間でも、20世紀まではそのように思われていました。
脳の神経細胞は成人になってからは減る一方で、その後、増えることはないと思われていたのです。
必然的に、大人になれば記憶力も衰えるものと思われるようになりました。
ところが2000年、ロンドン大学の認知神経学の研究者、エレノア・マグワイアー博士がこの常識を覆し、「脳の神経細胞は、大人になっても増えることがある」と報告したのです。
ことの発端は、マグワイアー博士が、ロンドン市中を走行するタクシー運転手たちの優れた記憶力に興味をもったことでした。
ベテラン運転手たちは、ロンドンの複雑な路地や裏道を詳細に記憶し、そのうえで、時間帯によって変わる道路の混み具合なども加味しながら、毎回、最適なルートを導き出しています。
その驚異的な記憶力に関心を抱いた博士が、タクシー運転手と一般の人たちとの脳の比較研究をした結果、運転手たちの脳の「海馬(記憶を司る部位)」が、一般の人たちより大きく発達していることを発見したのです。
特に長年従事している運転手ほどその度合いは大きく、運転手歴30年を超えるベテランは、海馬の体積が実に3%も増えていました。
⚫︎脳は訓練次第で何歳からでも発達する
ベテラン運転手の脳内には、緻密な道路地図が見事にインプットされています。彼は毎日、乗客から目的地を告げられるたびに、その詳細な地図を思い浮かべながらベストな行き方を想定します。
そのような、「情報を記憶し、それを引き出す」という作業を長年にわたって積み重ねてきた結果、彼の海馬の神経細胞は増え、大きく発達していたというわけです。
このように、脳は訓練次第で何歳からでも発達しますし、このベテラン運転手の例のように、若い頃より記憶の容量を増やしたり、働きをよくしたりすることだって十分に可能なのです。
筋力と同じように、記憶力も思考力も、使わなければ当然衰えていきます。
ところが2000年、ロンドン大学の認知神経学の研究者、エレノア・マグワイアー博士がこの常識を覆し、「脳の神経細胞は、大人になっても増えることがある」と報告したのです。
ことの発端は、マグワイアー博士が、ロンドン市中を走行するタクシー運転手たちの優れた記憶力に興味をもったことでした。
ベテラン運転手たちは、ロンドンの複雑な路地や裏道を詳細に記憶し、そのうえで、時間帯によって変わる道路の混み具合なども加味しながら、毎回、最適なルートを導き出しています。
その驚異的な記憶力に関心を抱いた博士が、タクシー運転手と一般の人たちとの脳の比較研究をした結果、運転手たちの脳の「海馬(記憶を司る部位)」が、一般の人たちより大きく発達していることを発見したのです。
特に長年従事している運転手ほどその度合いは大きく、運転手歴30年を超えるベテランは、海馬の体積が実に3%も増えていました。
⚫︎脳は訓練次第で何歳からでも発達する
ベテラン運転手の脳内には、緻密な道路地図が見事にインプットされています。彼は毎日、乗客から目的地を告げられるたびに、その詳細な地図を思い浮かべながらベストな行き方を想定します。
そのような、「情報を記憶し、それを引き出す」という作業を長年にわたって積み重ねてきた結果、彼の海馬の神経細胞は増え、大きく発達していたというわけです。
このように、脳は訓練次第で何歳からでも発達しますし、このベテラン運転手の例のように、若い頃より記憶の容量を増やしたり、働きをよくしたりすることだって十分に可能なのです。
筋力と同じように、記憶力も思考力も、使わなければ当然衰えていきます。
だからこそ、「もう歳だから」とマイナスな自己暗示をかけて諦めるのではなく、「まだまだこれから」と前向きな気持ちで脳を鍛えていくことが大切です。
そうすれば自ずと結果はついてきますし、理想を持つことで毎日に張りも生まれてくるでしょう。