核融合反応数を3倍に向上させる手法、阪大が開発
マイナビニュース より 221128 波留久泉
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大阪大学(阪大)は11月25日、米ローレンス・リバモア国立研究所にある世界最大級のレーザー装置「National Ignition Facility(NIF)」を用いて、磁場を使用する新方式「磁場支援型レーザー核融合」の実証に成功し、プラズマ温度の40%の上昇と、核融合反応の効率が3倍になることを確認したと発表した。
同成果は、阪大 レーザー科学研究所の藤岡慎介教授が参加する、米・ローレンス・リバモア国立研究所、米・マサチューセッツ工科大学、英・インペリアル・カレッジ・ロンドン、米・ロチェスター大学および同・大学 レーザーエネルギー学研究所、阪大 レーザー科学研究所で構成された共同研究チームによるもの。
詳細は,米国物理学会が刊行する機関学術誌「Physical Review Letters」に掲載された。
核融合の技術的な困難の1つは、核融合反応を起こすプラズマを高温かつ高密度で長時間維持することとされている。
核融合の技術的な困難の1つは、核融合反応を起こすプラズマを高温かつ高密度で長時間維持することとされている。
このプラズマを閉じ込める方式には、主に「磁場閉じ込め」と「レーザー」の2種類がある。間もなく実験が開始される予定の、日本も参加している国際熱核融合炉(ITER)は、前者の方式を採用している。
一方のレーザー核融合に関しては、米国に世界最大級のレーザー装置であるNIFがある。
一方のレーザー核融合に関しては、米国に世界最大級のレーザー装置であるNIFがある。
レーザー核融合の最も単純な方式は、冷たい水素燃料を詰めたカプセルにレーザー光を照射し、カプセルを爆縮させるというもので、この爆縮により燃料が加熱され、燃焼プラズマのスポットが形成され、この「ホットスポット」が火種となって燃料全体が燃え、大きなエネルギーが放出されるという仕組みとされている。
しかし、カプセルの表面に小さな欠陥が存在していたり、レーザーの照射タイミングがわずかでも狂ったりするなどの不具合があると、核融合反応はすぐに停止してしまう。
しかし、カプセルの表面に小さな欠陥が存在していたり、レーザーの照射タイミングがわずかでも狂ったりするなどの不具合があると、核融合反応はすぐに停止してしまう。
NIFでは、2021年8月に大きなエネルギーを生み出すことに成功し、レーザー核融合炉の実現性が高まったとして、世界的なニュースになったが、それ以後に行われた同様の実験では大きなエネルギー発生が観測されず、この再現に苦労しており、その理由がこれらカプセル表面の欠陥やレーザー照射タイミングのずれなどにより、核融合反応がすぐ停止してしまうことが挙げられている。
もし燃料を高い温度にまで加熱することができれば、許容可能なカプセルの欠陥やレーザーのタイミングの誤差の幅が広がり、このような細かな変化に対して核融合反応数が減少してしまうことを緩和することが可能だと考えられている。
そして近年になって、レーザー核融合においても、磁場が核融合燃料の温度を向上させることが明らかになってきた。NIFに比べて相対的に小さなレーザー装置(阪大の「激光X II号レーザー」や米国の「OMEGAレーザー」など)を使った実験にて、磁場による加熱効率の改善が実証済みだという。
そこで研究チームは今回、さらに複雑な設計であるNIFにおいて、これまでよりも遥かに大きなエネルギーを生み出す実験を実施し、核融合点火に近いプラズマ状態においても、磁場が有効に機能するかどうかを調べることにしたという。
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その結果、磁場をかけると、燃料の温度が40%上昇し、核融合反応の効率が3倍になることが確認されたとする。このような温度上昇は、大規模実験における磁場支援型核融合の最初の実証で、核融合反応の頑強性と核融合エネルギーの出力を向上させるための一歩となると研究チームでは説明している。
NIFのターゲットベイ。NIFは192本のレーザーが備えられており、同時照射で青い球体の中心に設置される水素燃料ペレットを爆縮させる (C)Damien Jemison (出所:NIF Webサイト)、(左下)磁場支援型レーザー核融合の模式図。核融合燃料の周囲にコイルを巻くことで、プラズマに強い磁場が印加された (出所:阪大Webサイト)
なお、磁場はホットスポットを周囲の冷たい燃料から断熱する働きを持ち、加熱の効率を高め、最終的には反応の収率を向上させるとする。磁場が存在すると、プラズマ中の電子は磁力線に沿ったらせん状の軌道しか取れなくなる。
もし燃料を高い温度にまで加熱することができれば、許容可能なカプセルの欠陥やレーザーのタイミングの誤差の幅が広がり、このような細かな変化に対して核融合反応数が減少してしまうことを緩和することが可能だと考えられている。
そして近年になって、レーザー核融合においても、磁場が核融合燃料の温度を向上させることが明らかになってきた。NIFに比べて相対的に小さなレーザー装置(阪大の「激光X II号レーザー」や米国の「OMEGAレーザー」など)を使った実験にて、磁場による加熱効率の改善が実証済みだという。
そこで研究チームは今回、さらに複雑な設計であるNIFにおいて、これまでよりも遥かに大きなエネルギーを生み出す実験を実施し、核融合点火に近いプラズマ状態においても、磁場が有効に機能するかどうかを調べることにしたという。
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その結果、磁場をかけると、燃料の温度が40%上昇し、核融合反応の効率が3倍になることが確認されたとする。このような温度上昇は、大規模実験における磁場支援型核融合の最初の実証で、核融合反応の頑強性と核融合エネルギーの出力を向上させるための一歩となると研究チームでは説明している。
NIFのターゲットベイ。NIFは192本のレーザーが備えられており、同時照射で青い球体の中心に設置される水素燃料ペレットを爆縮させる (C)Damien Jemison (出所:NIF Webサイト)、(左下)磁場支援型レーザー核融合の模式図。核融合燃料の周囲にコイルを巻くことで、プラズマに強い磁場が印加された (出所:阪大Webサイト)
なお、磁場はホットスポットを周囲の冷たい燃料から断熱する働きを持ち、加熱の効率を高め、最終的には反応の収率を向上させるとする。磁場が存在すると、プラズマ中の電子は磁力線に沿ったらせん状の軌道しか取れなくなる。
その結果として、周囲の冷たい燃料への熱の流れが遅くなり、ホットスポット内に多くの熱が溜まることになるという。
今回の研究により、NIFのレーザー核融合において、大きなエネルギーを生み出すために磁場を加えることで、カプセルの表面に小さな欠陥が存在していたり、レーザーの照射タイミングがわずかでも狂ってしまったりすると、核融合反応がすぐ停止してしまう「敏感さ」を緩和させることに成功したことから、今後、レーザー核融合による安定なエネルギー発生を実現することで、同方式に関わるほかの重要物理の理解が加速するとしている。
今回の研究により、NIFのレーザー核融合において、大きなエネルギーを生み出すために磁場を加えることで、カプセルの表面に小さな欠陥が存在していたり、レーザーの照射タイミングがわずかでも狂ってしまったりすると、核融合反応がすぐ停止してしまう「敏感さ」を緩和させることに成功したことから、今後、レーザー核融合による安定なエネルギー発生を実現することで、同方式に関わるほかの重要物理の理解が加速するとしている。
科学技術の進歩は使い方さえ間違えなければ喜ばしい事なのですが、残念ながら画期的なイノベーションほど、悪い使い方を考えついてしまうのが人類の性なので…。
それと、こうした研究はいまやほとんどが国際研究チームによるものなのに、日本のマスメディアにかかると「阪大が開発」という見出しになってしまいがちなのは困ったものです。
先端科学の世界にまでナショナリズムを持ち込むようなメンタリティが改まらないと、逆に日本は沈んで行くばかりだと思います。