2020年 東京一極集中「増加人口年齢ゾーン分析」/
圧倒的1位が示す人口集中の実態―新型コロナ人口動態解説(6)
ニッセイ基礎研究所 より 210426
新型コロナ感染拡大による人口動態の変化を解説するシリーズコラムの第6弾では、シリーズ第1弾の解説からお伝えしてきた「都道府県間人口移動によって各エリアに生じる人口増減のメインとなっている『ある年齢ゾーン』」について解説したい。
今回は、特に感染を回避して各エリアからの出控えが発生したコロナ禍においてもやはり転入超過数で第1位となった東京都にフォーカスし、「コロナ禍で東京都へ動いた人口の年齢プロファイリング」を行ってみたい。
2020年の人口動態について、転入超過エリアは2019年と同じ8都府県であることを(『 新型コロナ人口動態解説(1)』参照、6位まで順位も不動)解説した。
転入超過数の第1位は変わらず東京都で、総数では3万1125人の増加であるが、うち男性9632人、女性2万1493人となり、男性の2.2倍もの女性が東京都に増加した(図表1)。
女性と男性の転入超過人数比が2.2倍という値は、1996年に男女ともに東京都への転入超過となって以来、四半世紀で過去最高であり、繰り返しレポートでお伝えしてきた「東京への人口集中が女性メインで発生している」という状況がより一層鮮明となる年となった。
また、男女別ランキングからは総数だけでみると見えてこない東京都への集中実態がみえてくる(図表1)。
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実は、男性の転入超過数ランキングは、東京都ではなく神奈川県が1位、埼玉県が2位となっており、東京都は3位にランクダウンする。
しかしながら、女性の転入超過数ランキングは東京都が2位以下の人数を大きく上回っている。しかも2位以下との女性/男性倍率を比べると東京都は男女の集中格差が著しい。
女性の転入超過数ランキングからは、2位神奈川県の1.4倍、3位埼玉県の1.8倍、大阪府の2.5倍、千葉県の2.7倍、福岡県の6.0倍、沖縄県の34.6倍の女性が東京都に増加している姿が浮かび上がる。ここでもう一度、転入超過数の総数ランキングを見てみると、上位3位までは女性ランキングと同様であり、その他エリアのランキングもほぼ女性ランキングに連動していることがわかる。つまり、人口移動における転入超過数ランキングでは、 女性の移動が最大の決定要因となっている姿がみえてくる。
女性人口を集める力は、過去のレポートで何度も伝えてきたが、「将来の母親候補を集める力」であり、「女性の移動を制する県が、エリアの人口の未来を制する」 ということが指摘できる。従って、人口動態的にみると、現状では東京都が最も未来人口における強者である、と言えることができるだろう。
次に、東京都で2020年に増加した女性2万1493人を年齢ゾーン別にみると、
「10代と20代人口の転入超過」と「それ以外の年代の人口の転出超過」
で構成されていることがはっきりとみてとれる(図表2)。
しかも転入超過となった年齢ゾーン人口のうち、20代前半人口が70%を占めており、2位の10代後半人口の4.5倍に達するが、いわゆる大卒就職タイミングでの移動によるものと推測される。
「都会に若者が出ていく」というと、いまだに「大学での転出であり教育問題であろう」と考える経営者・自治体関係者・有識者が少なくないが、どこのエリアで卒業したとしても、その卒業後の就職場所として東京都が選ばれている、という事実を認識する必要がある。
結論として、東京都への2020年の女性人口の増加は10代・20代人口で形成され、そのうち84%が20代人口(新卒での就職タイミングとなる20代前半が70%、後半が14%)、10代人口が16%である。同様に男性人口のランキングをみてみたい(図表3)。
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転入超過となった年齢ゾーン別の順位は女性と全く変わりがなく、10代人口と20代人口が転入超過、それ以外が転出超過と明確に分かれている。
転入超過した10代20代人口のほとんどが20代人口であり、しかも女性と同様に20代前半人口が圧倒的となっており、転入超過総数35,084人の65%を占めている。
結論として、東京都への2020年の男性人口の増加は女性と同様に10代・20代人口で形成され、そのうち84%が20代人口(新卒での就職タイミングとなる20代前半が65%、後半が19%)、10代人口が16%である。
偶然にも10代人口と20代人口の増加分に占める割合が、男女ともそれぞれ16%と84%で一致している。ただし、女性の方が20代前半人口の占める割合が70%と男性よりも5ポイント高い。
移動タイミング的に考えると、女性の方がより新卒採用や独身状態 1で移動していることが示唆されている。
1 2015年国勢調査では、女性の既婚率が20代前半=1割未満、20代後半後半=6割と、前半と後半で未婚率に大きな差がある
全国的に出控えモードとなったコロナ禍元年の人口移動は、「コロナ禍においても動く」という、より強い移動意思に基づいた人口移動を示したといえる。
最後に、2020年東京都における年齢ゾーン別の人口移動についての特徴を改めてまとめみたい。
1. 東京では、女性が男性の2.2倍増加
2. 増加したのは10代と20代人口であり、その他の年代では減少
3. 増加人口の年代別内訳は、10代人口:20代人口=16:84(男女共通)
4. 20代増加人口のうち 20代前半7割:20代後半3割(女性の方が前半に傾斜)
この20代前半人口が就職を機に東京都への人口集中を牽引する傾向は、コロナ以前と全く変わらないが、コロナ禍で10代と20代だけが転入超過となることでより鮮明となった。
これまで20代人口数には全く及ばないものの転入超過にあった30代人口が乳幼児(0-4歳)人口とともに2020年の東京都の移動による人口減少の中心となっている様子がランキングからはみてとれる(子育て世代人口の転出超過の発生)ものの、
1. その転出先は隣接の首都圏(神奈川県、千葉県、埼玉県) 2
2. 20代転入超過人口の数が依然圧倒的で、数でははるかに及ばない
ことから、地方創生(東京一極集中の解消)の成否は、20代前半人口の就職・転職タイミングにおける誘致ができるかどうかにかかっているといえる。
つまり、「人口減少県における労働市場改革(とりわけ女性にとって)」が最優先課題であることを人口動態統計は明確に物語っている、といえるだろう。
2 『新型コロナ人口動態解説(2)』参照。さらに詳細は後日レポートする。
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