病むアメリカ、滅びゆく西洋/パトリック・J・ブキャナン/成甲書房/2002
アメリカをはじめとする西洋社会の劣化状況を分析した、政治社会的に重要な一冊。
この本によると、第二次大戦終戦時は、アメリカはキリスト教国だと大統領や要職にある人物が政治的に宣言するほどであった。それが、連邦最高裁による宗教的行為と判断されたものが次々と違憲扱いされ、キリスト教が骨抜き状態となり、社会全般でキリスト教が骨抜き状態となった。
倫理道徳上の砦を失ったアメリカ社会は、次第に劣化、離婚率、片親世帯、非嫡出子などの指標を伝統的価値観で見ると悪化していると著者は指摘する。
それを加速させたのは、連邦最高裁の違憲判決だけでなく、保守的だった宗教界の抵抗がなく、政治家が外交や防衛、経済に関心を持ちすぎ、自国の文化、伝統、社会に興味を持たなくなったと著者は分析している。
つまり、アメリカの政治家たちが、戦後、金儲けに徹したために、アメリカは病み、キリスト教は力を失い、倫理道徳上の砦を失った西洋社会は滅びると著者は結論づけたことになる。
キリスト教社会と対照的に、イスラム社会は、経済、技術的に西洋諸国には及ばないが、倫理道徳上の砦としてのイスラム教は引続き機能している点で、西洋社会にイスラムがさらに浸透、キリスト教は西洋社会において敗北する可能性が高いとの記述には正直衝撃を受けた。
全頁かつ順番に最初から読む必要はないが、政治、社会に関心ある方なら読んでおくべきであろう。
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