フランス革命の省察/エドマンド・バーク著/半澤孝麿訳/みすず書房/1997
出版社サイトから
http://www.msz.co.jp/book/detail/04918.html
フランス革命の省察【新装版】
REFLECTIONS ON THE REVOLUTION IN FRANCE
著者エドマンド・バーク
訳者半澤孝麿
〈これが保守主義である。しかもそれは品位がある。その品位がバークの『省察』を、思想の大海を航海するとき、人間の心を永遠にとらえて離さぬものの一つとして確立したのである〉(アーネスト・バーカー)
18世紀末のフランスの根源的でしかも激動的な変化の日々を眼前にして、イギリス国民は真摯な選択を迫られた。フランスの革命は、一世紀前の名誉革命と一致する性格をもち、二つの国家は肩を並べて進むべきか。それとも、かつての歴史的・合法的革命と、新しい形而上学に導かれた革命とのあいだには、深い分裂の淵を見るべきなのか。そのとき、バークはこの問いに答えるべく、この《省察》を著すべく、運命づけられた。
バークはイギリス経験論の思想的伝統に立つ文人著述家として出発しながら、現実の政界という最も生々しい人間世界の舞台に身を投じ、〈行動の場における哲学者〉として生き抜いた人間である。彼は、抽象的イデオロギーや形而上的思弁に頼らないで、社会的秩序と結びついた個人的自由を擁護し、国家権力は民衆のための信託であるという信念にもとづいて、啓蒙思想の理性信仰を逆転する書、〈革命に反対する革命的書物〉(ノヴァーリス)を著したのである。この書は、政治的理性と現実的熟慮を通ずる正義と便宜の調整の方法を明らかに示し、保守主義のバイブルと称される地位を占めるにいたった。
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「フランス革命の省察【新装版】」の著訳者:エドマンド・バーク
Edmund Burke
1729-1797 イギリスの政治家、政治哲学者。ダブリンに生まれる。法律家の資格を得ようとロンドンに出たが、文筆の世界に転じ『自然社会の擁護』、『崇高と美の観念の起原』(1757)で文壇に登場する。まもなくウイッグ党貴族の秘書、65年には下院議員となる。国王の金権的専制の企図に伴う憲政の危機に際して、近代の政党政治の原理を『現代の不満の原因』(1770)で唱導した。アメリカ独立戦争の際には、「アメリカの課税に関する演説」、「植民地との和解決議の提案に関する演説」、「アメリカ問題に関してブリストル執行官への書簡」を唱え、植民地への軍事介入の非を熱烈に説き、アメリカの抵抗を支持した。フランスの民主主義と平等の理念に不信を感じていたバークは、フランス革命が勃発するや、これをヨーロッパ秩序への挑戦と受けとめて『フランス革命の省察』(1790)を執筆する。この著書は政治思想史上、保守主義の聖典と称され影響を与えた。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
半澤孝麿
はんざわ・たかまろ
1933年静岡県に生れる。1957年東京大学法学部卒業。東京都立大学名誉教授。著書『近代政治思想史』(3)(共著、有斐閣、1978)『近代日本のカトリシズム』(みすず書房、1993)、『ヨーロッパ思想史における〈政治〉の位相』(岩波書店、2003)、訳書 ジョン・リース『平等』(福村出版、1975)S.ウォーリン『西欧政治思想史』IV(共訳、福村出版、1975)ジョン.ダン『政治思想の未来』(みすず書房、1983)スキナー『思想史とはなにか』(共編訳、岩波書店、1990)。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
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目次
訳者例言
フランス革命の省察
はしがき
第一部
革命の成行への疑念/憲法協会の奇怪な行動/自由の抽象的概念を排す/革命が全ヨーロッパに及ぼす危険な可能性/プライス博士の説教の政治性/国王の地位は人民の選択によるものか/名誉革命原理は世襲的王位継承である/世襲継承原理の神聖性/名誉革命原理それ自身の伝統的性格/プライス一派の教義の危険性/王の廃位を正当化するものは何か/人間の権利かイギリス人の権利か/イギリス憲法は自然と照応する/フランス旧体制に内在した卓越性/フランスの道徳的物質的荒廃/国民議会の構成の異常さ/実質的構成者たる下級法曹/イギリスの下院/下級聖職者と第三身分の結合/自然の統治者としての貴族の責任/財産のもたらす安定と統一の作用/プライスのフランス革命礼讃/プライスのイギリス代表制非難/プライス一派の真の意図/文明社会における人間の権利/統治の学の本質/プライス一派の革命熱/プライスには先蹤者がある/国民議会の茶番劇/1789年10月6日/騎士道の破壊とその帰結/ヨーロッパ文明の危機/フランスの事態が道徳感覚に与える衝撃/暴君の処遇は如何にあるべきか/イギリス国民は革命協会を否認する/偏見の意義/無神論者の新奇好み/イギリス社会の基盤としての宗教/国教制による国家の聖別/国家と法の神聖性の破壊が帰結するもの/イギリス人にとって国家とは何か/イギリス人は国教制度に固執する/すべての人に必要な宗教的慰め/イギリス聖職者の経済的独立/イギリス人は教会財産没収を許さない/教会財産略奪の精神/正当な財産権に対する暴行/土地所有貨幣所有両階級の闘争/政治的著述家の登場とその役割/聖職者財産没収の不当性/革命以前のフランスの財政状態/貴族聖職者の負担/聖職者財産没収計画の?余曲折/純粋民主政の害悪/旧王政の弊害も革命を正当化しない/革命前の人口増加/革命前の経済状態は悪くなかった/旧王政の善意・将来への疑問/貴族は改革に反対ではなかった/アンリ四世論/貴族は特別堕落してはいなかった/聖職者非難は歴史の歪曲である/歴史の教訓/再び歴史の歪曲を論ず/聖職者は一般に有徳の人であった/聖職者選挙制のもたらす弊害/イングランド宗教改革の寛容精神/時効と所有権原理の全面的破壊/無神論的狂言の伝播/教会財産没収がもたらす危険/政治家における偉大さの基準/修道院制度に内在した良き可能性/聖職者土地保有の正当性
第二部
国民議会の行動原理/国民議会の能力/真の立法者の職務と資質/フランスの指導者の行動原理/立法部の構造と選出方法/選挙の三原理/選挙の三原理の相互矛盾/新制度のもたらす破滅的効果/古代共和政の立法者と現代の立法者/フランス指導者の意図/イギリスの代表制と革命フランスの代表制/等級選挙の無責任性/金融業者の支配/農業の軽視/賭博の精神とその結果/パリ市の優越/国民議会の全能/国王の地位/大臣の地位/旧高等法院の性格/民主政における独立的司法部の必要性/司法部破壊の意図するもの/軍隊における秩序の崩壊/地方自治体と軍隊の吻合/将校の任命権/軍事的服従原理の壊滅/人権理論と力の政策との相互矛盾/親指導者の行動の自己撞着/財政問題の国家的重大性/税制の失敗と混乱/愛国的献金と愛国的献納/紙幣への誤った依存/教会略奪とアシニァ紙幣信仰/土地売却者の義務/国会議会の財政的詐術/蔵相ネッケルの努力/フランス財政の破滅/財政における真の政治家の技倆/真の自由に対する国民議会の無能力/真の模範としてのイギリス憲法
出版社サイトから
http://www.msz.co.jp/book/detail/04918.html
フランス革命の省察【新装版】
REFLECTIONS ON THE REVOLUTION IN FRANCE
著者エドマンド・バーク
訳者半澤孝麿
〈これが保守主義である。しかもそれは品位がある。その品位がバークの『省察』を、思想の大海を航海するとき、人間の心を永遠にとらえて離さぬものの一つとして確立したのである〉(アーネスト・バーカー)
18世紀末のフランスの根源的でしかも激動的な変化の日々を眼前にして、イギリス国民は真摯な選択を迫られた。フランスの革命は、一世紀前の名誉革命と一致する性格をもち、二つの国家は肩を並べて進むべきか。それとも、かつての歴史的・合法的革命と、新しい形而上学に導かれた革命とのあいだには、深い分裂の淵を見るべきなのか。そのとき、バークはこの問いに答えるべく、この《省察》を著すべく、運命づけられた。
バークはイギリス経験論の思想的伝統に立つ文人著述家として出発しながら、現実の政界という最も生々しい人間世界の舞台に身を投じ、〈行動の場における哲学者〉として生き抜いた人間である。彼は、抽象的イデオロギーや形而上的思弁に頼らないで、社会的秩序と結びついた個人的自由を擁護し、国家権力は民衆のための信託であるという信念にもとづいて、啓蒙思想の理性信仰を逆転する書、〈革命に反対する革命的書物〉(ノヴァーリス)を著したのである。この書は、政治的理性と現実的熟慮を通ずる正義と便宜の調整の方法を明らかに示し、保守主義のバイブルと称される地位を占めるにいたった。
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「フランス革命の省察【新装版】」の著訳者:エドマンド・バーク
Edmund Burke
1729-1797 イギリスの政治家、政治哲学者。ダブリンに生まれる。法律家の資格を得ようとロンドンに出たが、文筆の世界に転じ『自然社会の擁護』、『崇高と美の観念の起原』(1757)で文壇に登場する。まもなくウイッグ党貴族の秘書、65年には下院議員となる。国王の金権的専制の企図に伴う憲政の危機に際して、近代の政党政治の原理を『現代の不満の原因』(1770)で唱導した。アメリカ独立戦争の際には、「アメリカの課税に関する演説」、「植民地との和解決議の提案に関する演説」、「アメリカ問題に関してブリストル執行官への書簡」を唱え、植民地への軍事介入の非を熱烈に説き、アメリカの抵抗を支持した。フランスの民主主義と平等の理念に不信を感じていたバークは、フランス革命が勃発するや、これをヨーロッパ秩序への挑戦と受けとめて『フランス革命の省察』(1790)を執筆する。この著書は政治思想史上、保守主義の聖典と称され影響を与えた。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
半澤孝麿
はんざわ・たかまろ
1933年静岡県に生れる。1957年東京大学法学部卒業。東京都立大学名誉教授。著書『近代政治思想史』(3)(共著、有斐閣、1978)『近代日本のカトリシズム』(みすず書房、1993)、『ヨーロッパ思想史における〈政治〉の位相』(岩波書店、2003)、訳書 ジョン・リース『平等』(福村出版、1975)S.ウォーリン『西欧政治思想史』IV(共訳、福村出版、1975)ジョン.ダン『政治思想の未来』(みすず書房、1983)スキナー『思想史とはなにか』(共編訳、岩波書店、1990)。
※ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
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目次
訳者例言
フランス革命の省察
はしがき
第一部
革命の成行への疑念/憲法協会の奇怪な行動/自由の抽象的概念を排す/革命が全ヨーロッパに及ぼす危険な可能性/プライス博士の説教の政治性/国王の地位は人民の選択によるものか/名誉革命原理は世襲的王位継承である/世襲継承原理の神聖性/名誉革命原理それ自身の伝統的性格/プライス一派の教義の危険性/王の廃位を正当化するものは何か/人間の権利かイギリス人の権利か/イギリス憲法は自然と照応する/フランス旧体制に内在した卓越性/フランスの道徳的物質的荒廃/国民議会の構成の異常さ/実質的構成者たる下級法曹/イギリスの下院/下級聖職者と第三身分の結合/自然の統治者としての貴族の責任/財産のもたらす安定と統一の作用/プライスのフランス革命礼讃/プライスのイギリス代表制非難/プライス一派の真の意図/文明社会における人間の権利/統治の学の本質/プライス一派の革命熱/プライスには先蹤者がある/国民議会の茶番劇/1789年10月6日/騎士道の破壊とその帰結/ヨーロッパ文明の危機/フランスの事態が道徳感覚に与える衝撃/暴君の処遇は如何にあるべきか/イギリス国民は革命協会を否認する/偏見の意義/無神論者の新奇好み/イギリス社会の基盤としての宗教/国教制による国家の聖別/国家と法の神聖性の破壊が帰結するもの/イギリス人にとって国家とは何か/イギリス人は国教制度に固執する/すべての人に必要な宗教的慰め/イギリス聖職者の経済的独立/イギリス人は教会財産没収を許さない/教会財産略奪の精神/正当な財産権に対する暴行/土地所有貨幣所有両階級の闘争/政治的著述家の登場とその役割/聖職者財産没収の不当性/革命以前のフランスの財政状態/貴族聖職者の負担/聖職者財産没収計画の?余曲折/純粋民主政の害悪/旧王政の弊害も革命を正当化しない/革命前の人口増加/革命前の経済状態は悪くなかった/旧王政の善意・将来への疑問/貴族は改革に反対ではなかった/アンリ四世論/貴族は特別堕落してはいなかった/聖職者非難は歴史の歪曲である/歴史の教訓/再び歴史の歪曲を論ず/聖職者は一般に有徳の人であった/聖職者選挙制のもたらす弊害/イングランド宗教改革の寛容精神/時効と所有権原理の全面的破壊/無神論的狂言の伝播/教会財産没収がもたらす危険/政治家における偉大さの基準/修道院制度に内在した良き可能性/聖職者土地保有の正当性
第二部
国民議会の行動原理/国民議会の能力/真の立法者の職務と資質/フランスの指導者の行動原理/立法部の構造と選出方法/選挙の三原理/選挙の三原理の相互矛盾/新制度のもたらす破滅的効果/古代共和政の立法者と現代の立法者/フランス指導者の意図/イギリスの代表制と革命フランスの代表制/等級選挙の無責任性/金融業者の支配/農業の軽視/賭博の精神とその結果/パリ市の優越/国民議会の全能/国王の地位/大臣の地位/旧高等法院の性格/民主政における独立的司法部の必要性/司法部破壊の意図するもの/軍隊における秩序の崩壊/地方自治体と軍隊の吻合/将校の任命権/軍事的服従原理の壊滅/人権理論と力の政策との相互矛盾/親指導者の行動の自己撞着/財政問題の国家的重大性/税制の失敗と混乱/愛国的献金と愛国的献納/紙幣への誤った依存/教会略奪とアシニァ紙幣信仰/土地売却者の義務/国会議会の財政的詐術/蔵相ネッケルの努力/フランス財政の破滅/財政における真の政治家の技倆/真の自由に対する国民議会の無能力/真の模範としてのイギリス憲法
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