漫画の思い出
花輪和一(18)
『護法童子・巻之(一)』(双葉社)
「旅之六 おんあびらの巻」
幼い男女が合体して護法童子になる。なぜなのか、わからない。
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陰陽師に使われてその意のままになる下級の神。仏教でいう護法法師にあたる。仏法を守る神が童子の姿で行者に給侍したり霊地を守るとき、これを護法童子、護法天童という。しばしば二人で現れる。
(武石彰夫『今昔物語』24・16「式神」注)
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「童」の性別は不明。
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真言密教の教主で、一切の仏菩薩の本地、一切の徳の総摂(そうせつ)とされる仏。これを本地法身と加持受用(じゅゆ0う)身とに分け、法身は理体、加持受用身は説法の教主とする。また、金剛・胎蔵に当たって、金剛は智を表わすから智法身、胎蔵は理を表わすから理法身とする。ただし二身は畢竟不離一体である。
(『日本国語大辞典』「大日如来」)
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「本地法身」が男子で、「加持受用身」が女子なのか。
「おんあびら」とは何か。
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真言宗で、大日如来(だいにちにょらい)に祈るときの呪文(じゅもん)。「唵」は帰依(きえ)の意。「阿毘羅吽欠」は地・水・火・風・空を表し、これを唱えると願いが成就されるという。「―と、数珠さらさらと押し揉(も)めば」〈謡曲・安宅〉
(『旺文社古語辞典』「おん‐あびらうんけん【唵阿毘羅吽欠】)
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作者が「あびら」で切っている理由は不明。
前作で、護法童子は蜥蜴に化け、少女に化けた虫を強姦した。この蜥蜴男が、この作ではDV夫で、主人公の少年の毒父になっているらしい。つまり、善が悪に裏返っている。
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我は 宇宙の真理である 大日如来なり おまえは私の子なり…… 大日如来の子なり ゆえに おまえも大日如来なり 真言をとなえよ おお~~んあびら うんけん! ばざら だとばあ~~ん!
(「旅之六 おんあびらの巻」)
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ピンチはチャンスかな。
毒父は護法童子を招くために存在したみたいだ。
作者は生悟りをしているらしい。
(18終)