橋口五葉という名前は、夏目漱石の本の挿絵や装丁で知っていた。
多分明治の挿絵画家だろうと思っていた。
漱石好きなら外せない、というか、ごく自然に覚えてしまう名前だ。
「我輩は猫である」の装丁や、「倫敦塔」の挿絵などを担当している。
「我輩は猫」の挿絵の方は中村不折という人で、
この挿絵も楽しくて記憶に残る。
教育テレビで橋口五葉の特集をしていたのが、
何気なく面白かった。
五葉は、漱石との関係からラファエル前派を吸収していたというか、
影響を受けていたというようなことは少し驚きだった。
漱石のロンドン留学を契機に、
明治の日本ではラファエル前派が少し知られるようになったのだと思う。
例えば青木繁の「わたつみのいろこの宮」という作品は、
明らかにラファエル前派を思わせる。
同じプレラファエルでもロセッティよりは
バーン・ジョーンズの感じなのだが。
青木繁の「わたつみ」は、画風が硬直しているのであまり人気はない。
というか、あまり評価されていないように思う。
青木繁で有名なのは「海の幸」みたいなワイルドなものだろうから。
でも私はロマンチックな「わたつみ」が結構好き。
ま、モロに私好みだと言えようから。
夏目漱石も「わたつみ」を評価していた。
うむ、私と似た好みじゃ。
漱石は美術が好きで、美術批評もかなりしている。
ロンドンへ行った時にテイトギャラリーや、
ナショナルギャラリーだっけ?
もちろん大英博物館も、そういう所へ入り浸って、
当時の英国の美術をじっくり見たはず。
「坊ちゃん」にも『ターナーの絵みたような』というフレーズがあったね。
ターナーはもちろん英国の風景画家だ。
そんなわけで漱石は美術にも詳しく、
橋口五葉はそんな漱石に評価されていた。
それ以外に五葉のことを知らなかったのだが、
「日曜美術館」では、版画を使った大正版浮世絵のようなものを
五葉が製作していたことを紹介していたのは驚いた。
五葉は装丁作家としてだけでなく、
ポスターの美人画、版画による裸婦像でも有名だったのだという。
何が驚いたと言って、
版画を作るために製作した膨大(?)な数のスケッチが残っていることで、
それは全裸の女性(大正時代の日本髪ふうの女性)ばかりを描いていることだ。
画家なのだから裸婦を描いてもおかしくはないのだけど、あの橋口五葉が?
という思いもあるし、また、その裸婦が凄いポーズを取っているのよ。
どちらかと言うとラファエル前派というより、
クリムトとかシーレみたいな危なさなのだ。
ぎりぎりなの。
でもぎりぎりではあるけれど、いやらしくはない。
ものすごく大真面目。
ものすごく大真面目に女性の美を追求した人なのだろう。
上村松園のような女性像であって、媚を売る女性ではない。
女性の顔はとことん美しく、どこまでも美しく描いてある。
女性に対する優しさが感じられる。
女性のヌードを描いた絵は沢山見たが、
男性画家が女のヌードを描く時には、
たいていが下心が透けて見えている。
クリムトしかり、ポール・デルヴォーしかり。
それがその画家のいやらしさという個性になっている。
女の裸を見て興奮しない男性はいるまい。
五葉先生だって、
女性の裸の描線を驚くほど冷静に正確に描いているが、
女性の裸体を見て、絶対嬉しかったはず。
あまりに冷静なので、とてもそうは感じられないけど。
大正時代に、浮世絵版画に賭けた情熱は素晴らしいと思った。
作品の見事さにそれが結実している。
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多分明治の挿絵画家だろうと思っていた。
漱石好きなら外せない、というか、ごく自然に覚えてしまう名前だ。
「我輩は猫である」の装丁や、「倫敦塔」の挿絵などを担当している。
「我輩は猫」の挿絵の方は中村不折という人で、
この挿絵も楽しくて記憶に残る。
教育テレビで橋口五葉の特集をしていたのが、
何気なく面白かった。
五葉は、漱石との関係からラファエル前派を吸収していたというか、
影響を受けていたというようなことは少し驚きだった。
漱石のロンドン留学を契機に、
明治の日本ではラファエル前派が少し知られるようになったのだと思う。
例えば青木繁の「わたつみのいろこの宮」という作品は、
明らかにラファエル前派を思わせる。
同じプレラファエルでもロセッティよりは
バーン・ジョーンズの感じなのだが。
青木繁の「わたつみ」は、画風が硬直しているのであまり人気はない。
というか、あまり評価されていないように思う。
青木繁で有名なのは「海の幸」みたいなワイルドなものだろうから。
でも私はロマンチックな「わたつみ」が結構好き。
ま、モロに私好みだと言えようから。
夏目漱石も「わたつみ」を評価していた。
うむ、私と似た好みじゃ。
漱石は美術が好きで、美術批評もかなりしている。
ロンドンへ行った時にテイトギャラリーや、
ナショナルギャラリーだっけ?
もちろん大英博物館も、そういう所へ入り浸って、
当時の英国の美術をじっくり見たはず。
「坊ちゃん」にも『ターナーの絵みたような』というフレーズがあったね。
ターナーはもちろん英国の風景画家だ。
そんなわけで漱石は美術にも詳しく、
橋口五葉はそんな漱石に評価されていた。
それ以外に五葉のことを知らなかったのだが、
「日曜美術館」では、版画を使った大正版浮世絵のようなものを
五葉が製作していたことを紹介していたのは驚いた。
五葉は装丁作家としてだけでなく、
ポスターの美人画、版画による裸婦像でも有名だったのだという。
何が驚いたと言って、
版画を作るために製作した膨大(?)な数のスケッチが残っていることで、
それは全裸の女性(大正時代の日本髪ふうの女性)ばかりを描いていることだ。
画家なのだから裸婦を描いてもおかしくはないのだけど、あの橋口五葉が?
という思いもあるし、また、その裸婦が凄いポーズを取っているのよ。
どちらかと言うとラファエル前派というより、
クリムトとかシーレみたいな危なさなのだ。
ぎりぎりなの。
でもぎりぎりではあるけれど、いやらしくはない。
ものすごく大真面目。
ものすごく大真面目に女性の美を追求した人なのだろう。
上村松園のような女性像であって、媚を売る女性ではない。
女性の顔はとことん美しく、どこまでも美しく描いてある。
女性に対する優しさが感じられる。
女性のヌードを描いた絵は沢山見たが、
男性画家が女のヌードを描く時には、
たいていが下心が透けて見えている。
クリムトしかり、ポール・デルヴォーしかり。
それがその画家のいやらしさという個性になっている。
女の裸を見て興奮しない男性はいるまい。
五葉先生だって、
女性の裸の描線を驚くほど冷静に正確に描いているが、
女性の裸体を見て、絶対嬉しかったはず。
あまりに冷静なので、とてもそうは感じられないけど。
大正時代に、浮世絵版画に賭けた情熱は素晴らしいと思った。
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