UHF波やマイクロ波が光学的に見えない所まで飛ぶ「日本海ダクト」は不思議
が沢山で、私の様なアマチュア無線家にとっては非常に魅力的です。
石川県宝達山と鳥取県魚見台を直線で結ぶと、下記の左上の図の様に、地球の
丸みにより、海面下約1000m付近を通過します。
通常ではこんな所にマイクロ波は届きませんが「ダクト」が出れば伝搬状況は
一変します!
この日本海に発生する異常伝搬状況を私たちは「日本海ダクト」と通称し、
この伝搬の好条件チャンスに出会えるのはある意味偶然でもありますが、
その時の伝搬レベルがどうなのかを検証してみたいと思います。
まず「通常のマイクロ波伝搬状況」をシュミレーションしてみました。
条件として
①光学的見通し間
②直線距離 287km
③計算上の空中線利得 JA0RUZ 約37.5dB JA4JKE 約33.1dB
④給電線等その他のロス JA0RUZ 約3dB JA4JKE 約2dB
送信側設備 TX Power 23dB -3dB + 37.5dB = EIRP 57.5dBm
自由空間伝搬ロス 161.8dB (10.225GHz 287Km)
受信側設備 空中線利得:33.1dB-2dB = 31.1dB
この場合で計算をすると、当局が 0.2W出力(23dBm)で送信した 10.225GHz 5.7MHz
帯域幅のFHD-ATV信号は、287Km先のアンテナ端に、-73.2dBm で出力される
事になります。
(これは完全な見通しで、障害物も無く、水蒸気減衰等が殆ど無い時の場合です!)
日本の地デジTVや私たちがFHD-ATVに採用していSTB等の場合、正常な信号なら
最低-83dBm程度(53CH 713MHz帯)のレベルまで映りますので(バラつき有り)
10G帯に変換しても、送受信コンバーター等で大きなロスやCN等の大きな劣化が無い
場合、受信アンテナ出力-73.2dBの信号は、 約10dBのマージンを持って「映る」
レベルとなります。
しかし、2局の移動運用地は地球の丸味に掛かり見えない所となりますので、通常なら
マイクロ波は届かない条件の場所になりますが、10GHz帯に於いても「条件の良いダクト」
が出た場合、マイクロ波はそのダクト内に沿って伝搬し、地球の丸味により見えなくなる
所まで飛んで行く事があります。
そして上記シュミレーションの見通し伝搬と比較した 「ダクト伝搬レベル減衰の差」は
計算上 10dB以下 だった事が判ります!!
もし見通し伝搬より 10dB以上の伝搬ロス が有った場合、映るレベルまでにないからです
当然見通しより強くなることは無いだろう?と思いますが、それに近い伝搬が
起こる場合が、この様にあるのです!
しかし日本海ダクトもその時の状態によりフェ―ジングが有り、伝搬レベルが
短時間で素早くしかも大きく変化しますので、デジタルTVの場合は、フリーズ
やブロックノイズ、ブラックアウト等々の状況にもなります。
そして私たちの自作機では、ロスやCN劣化の無い完璧な送受信設備を作る事は
難しく送受信機内部での周波数変換には何らかのCN劣化等も有りますので、
このマージンは更に少ない筈です!!
もし送受信設備内で 2~5dB の CN劣化要因 があれば、マージンは 5dB程度
しか無かったかも知れません。(この辺は測定できなく、あくまで推測です)
これらから、今までの5.7GHz帯も、今回の10.2GHz帯でもかなり見通し条件に近い
海上ダクトが出た為に交信できたと想像できます。
海なし県に住んでいてもダクトが使えた事は、正に「運が良かった」のだと思います。