今年は、私どもの教室 English and Beyond では1月5日(金)より、新年最初のレッスンを行なっております。皆さま、気持ちも新たに、寒い中ですが、熱気あふれる英会話の練習を行なっております。
元旦に、能登半島にて大地震が発生し、犠牲者、行方不明者、被災した方々のことを考えると、胸が痛みます。遠く離れた兵庫でさえも結構揺れて、かつての阪神・淡路大震災のことなどを思い出しました。
タイトルにあります Plain living and high thinking は、イギリスの詩人で Wordsworth という人の言葉です。
plain とは、簡素な、質素なという意味です。普段生きるにあたり、特に贅沢するのではなく、つましく、簡素な生き方を旨とし、清貧に甘んじつつも、高遠、高邁な思想を抱く、といった意味でしょう。
中国古代の思想家である孟子(もうし)の言った『志(こころざし)を尚(たか)くす』ということにも通じますし、江戸時代から昭和にかけて、読書家によく読まれた、菜根譚(さいこんたん)という中国の書物がありますが、その書名の由来となる『人、常に菜根を噛み得ば、即ち百事為すべし』という言葉を思い起こします。志を尚(=高)くす、とは、何があろうとも、人としての理想を忘れないことでしょう。菜根を噛み得ばとは、葉っぱを食べるような質素な生活に耐えることができれば、何事でも達成できるということです。
質素、簡素ということですが、生活の仕方のみならず、考え方に関しましても、この複雑で混迷した世の中にあって、ある種のplain さ、ということも、大事なことだろうと思います。
plain と言いますと、私のお教えする英作に必要なものは、中学1年生くらいの、基礎的な英語です。要するにplain (簡単、平易)な英語です。どんな難しそうに見える日本語であっても、自分で考えて、本当に言いたいことは何か、理解することができれば、あとは簡単な英語で表現できます。
英作の一方で、教室の生徒の皆様には、タイムその他数多くの、ネイティブが読むものを、どんどん読んで頂き、世界の問題、国際情勢等に触れて頂いています。
読んでみるとわかりますが、難しい単語や表現ばかりです。その分野の専門家や記者が書いたものなので、難しいのは当然です。英語のネイティブがネイティブに伝えるために書いたネイティブの記事だからです。しかし、たとえ英語は難しくても、これはぜひ生徒さんに読んで欲しい、知ってほしいと思われるものは、いくら難しいものでも、躊躇なく、教材として、読んでもらいます。語彙水準で見れば、通常は英検1級レベルでやっと読めるかというものであっても、うちでは2級でも、その手前の人でも、読んでもらいます。無謀だと思われるかもしれません。
英語学習者は、英語のレベル、語彙水準で見れば、ネイティブに比べれば、当然、その英語は、いわば赤子のようなものかもしれません。しかし、いかに英語が、つたないものであり、赤ちゃんのレベルであっても、我々は、色々な経験を経た大人なのです。多くのことを経験し、見聞きして、喜びも悲しみも味わってきた、大人なのです。同じく大人であり、我々日本人と同じように喜びや悲しみがあり、悩みをもつネイティブ達が書いたものです。心を開いて、虚心坦懐読んでみれば、読んで読めないわけがありません。
最近はガザ地区の記事も、生徒さんに読んで頂いています。CNNの記事ですが、昨年秋の戦争開始直後の記事です。戦争の記事なので、戦争関連の用語などが多数使われています。いつもですが、みなさん、こんなの読めるのかなと思われます。記事の3ページ目あたりに、少年の写真があります。爆撃を受け、がれきの中で横たわり、酸素マスクを着けた状態で、虚(うつ)ろな目で、こちらを見ている写真です。今この少年は、どうしているかは、わかりません。この時、少年はどんな思いだったのでしょうか。
記事の冒頭に Tempers flare at the UN. とあります。中ほどにも、emotions run high (at the Security Council=国連の安全保障理事会)とあり、国連事務総長が、ガザの窮状を見て、停戦を訴えているとあります。emotions run high とありますが、これは、どういった意味なのでしょうか。直訳すると、感情が高く走る、となりますが、何でしょうか。冒頭にtempers flareとありまが、temperとは、気質、気性など、flareは燃えるの意味。tempers といい、emotions といい、何らかの感情のことのようですが、はっきりわかりません。しかし、記事を読みながら、事務総長の説明を読みながら、グテーレス事務総長が、どう思っているのか、ガザの現状を見て、子供たちを見て、どう感じているのか、想像してみましょう。
喜怒哀楽で言うと、明らかでしょう。怒っているのです。もしくは、深く悲しんでいるでしょう。 He is angry. もしくは、He is sad. となります。世界平和のために、日夜奮闘している機関のトップです。恐らく激怒しているはずです。He is very angry.
一方のイスラエルは、どうでしょうか。10月6日にハマスにより攻撃され、多くのイスラエル人が人質そして、犠牲となったことから始まった今回の戦争。世界最優秀の諜報機関であるモサドを持ち、そして世界最強の対ミサイル防空システムであるアイアンドーム(Iron Dome)で、ミサイルの迎撃率が90%以上という、鉄壁といえる防衛網を持っていたはずのイスラエルが、処理能力を超えた圧倒的な量のミサイルで攻撃され、侵略を許してしまい、多数の国民を殺害されたイスラエルの恐怖と怒りは、想像に難くありません。イスラエルに関しても、感情でいうと、事務総長に対して、憤慨していますし、ハマスに対しても、記事にありますが、should be erased off the map. と外交官が発言しています。erase は消しゴム(eraser) のerase です。地図からerase するべきとのこと。喜怒哀楽で言うと、当然怒りです。Tempers flare. Emotions run high. 具体的に言ったら、双方が怒っているわけです。They are all angry. They are angry with each other. ということに他なりません。
記事には難しい単語が並んでいます。しかし、我々は、例えばこの記事の少年の写真を見て、彼の心情を慮(おもんばか)ることを、忘れるべきではありません。少年の気持ちを想像する。住民の気持ちを想像する。人質の気持ちを、被害にあった人、その家族の気持ち、攻撃する側の心情。我々は、難しい記事を読みつつ、当事者それぞれの心情を考え、想像することができます。単に目を走らせても、難しい英語に打ちのめされるだけです。考え、常識を働かせて想像し、理解しようとすることが大切です。
そして、考え、想像して、自分なりに理解したならば、必ずや、その時は、自分の言葉で言い表すことができるでしょう。読むことは大切です。しかし理解することが、もっと大事です。そして理解するためには、考えることです。そして想像することです。難解な英語の向こう側にいる人間そのものを観ようとする、眼力が問われます。
考えて、想像して、理解した暁(あかつき)には、必ずや、自分なりの簡単でplain (平易)な英語で表現できます。ここで英作の修行が効いてきます。逆に言うと、読んだことを、平易に表現できないならば、それは考えるというプロセスが不足しているから、とも言えます。
読むにせよ、表現するにせよ、考えなければなりません。自分で考えることが、複雑な事物、事象を、単純化、簡素化する、近道となるでしょう。
便利な機械に囲まれて、事態はより一層、人間を考えるということから、遠ざけつつあります。故に、混迷した世の中であるとも言えます。
たとえ、話す英語が、平易(plain) で拙いものであっても、我々は、良識ある大人として、堂々と、世界の直面する問題を、英語で読んで、英語で感じ、英語で考え、英語で悩み、英語で、どうあるべきかを、考えるべきだと思います。
ゆえに、Plain English and High Thinking!