英作問題『いちご 』
5. デパートでは、イチゴをふんだんに使った、見た目もキュートなスイーツが目白押しだ。
⇒ 英作で大事なことは、自分で考えることである。難しそうに見える日本語でも、考えることである。
日本語で言われると、日本人なので、まあそんなものかなと思って、あまり考える必要性を感じないので、そのまま英語にしようとしてしまう。その結果、直訳になり、不自然な英語となる。簡単な事柄は、別に考えなくても、即座に英語で言えばよいが、少し込み入った、抽象的な事柄や、日本的事象などとなると、通常の方式では、歯が立たないだろう。
さて、今回の課題であるが、どこかで読んだ、何らかのスイーツに対するコメントで、面白いので課題とした。
『デパートでは、イチゴをふんだんに使った、見た目もキュートなスイーツが目白押しだ』ということで、
まずは、『ふんだんに』を考えると、これなんかは、どういう意味かを考えたら、すぐに『多い』ことだとわかる。
スイーツは sweets でよいが、イチゴをふんだんに使ったスイーツということで、この箇所は、使うということだが、使うといっても、使うのは人間である。sweets that used でもいいかもしれないが、本来は、イチゴをスイーツに使うのは人間なので、ここでは違う線で考えたい。イチゴを使ったスイーツとは、言い方を変えると、スイーツの中にたくさんのイチゴが入っているということである。そうなると、誰でもよく使い方を知っている 基本動詞のhave が使え、(the) sweets have a lot of strawberries. または、sweets that have a lot of strawberries inside. と言うことができる。
もちろん、使ったということなので、use を使ってもよい。上記の理由で、実際使うのは人間なので、そこを補うと
・They use a lot of strawberries to make the sweets /cakes.
・A lot of strawberries are used to make those sweets.
イチゴをふんだんに使った、ということは、イチゴをたくさん投入するということである。基本動詞のput を使い
・They put a lot of strawberries in their sweets.
『使う』というから、じゃあ use を使うというのもよいが、それにこだわらず、他の言い方でも言えるという余裕が欲しいもの。
スイーツをふんだんに使った、ということは、そのスイーツの構造を考えたら、内容物がイチゴであるのだから、スイーツが持っていると考え、基本動詞の王様HAVE が使えるなと見破ることができる。そういう、洞察する力を、英作で培いたい。
見た目もキュートなんかは、そのまま ~ look cute でよい。
難しいのが『目白押し』である。
目白押しは、鳥のメジロが、木のうえで、押し合いしながら並んでいるところから来ているそうだが、それはそれとして、こういう慣用的な日本語を英語にする際は、特にその日本語自体の字面を訳そうとしてはならない。専門家や、翻訳家が、日本語の歴史的な由来をさかのぼりながら、一字一句丁寧に訳すというのであれば、それこそ時間をかけて、ゆっくり翻訳する必要があるだろうが、英会話には、時間がない。英会話という対人技能は、一瞬の勝負である。その一瞬に、実力が発揮できるようになるために、練習を行う。また、その一瞬に実力を発揮できるような、練習をこそ行わなければならない。
スイーツが目白押しとは、いかなることだろうか。
鳥のメジロを思ってもいいが、スイーツの話なので、デパートでイチゴのスイーツが「目白押し」の状態を、具体的にありありと想像して頂きたい。なぜ、ある人は、デパートのイチゴのスイーツを目の前にして、目白押しと言うのか。目白押しと表現したくなる、必要条件は何か。当然、量である。要するに、多いことを指すので
・The department store has a lot of sweets with strawberries.
要するに、考えたならば、上記のの『ふんだんに』と『目白押し』というのは、どちらも多いことであることが判明する。
have と many (a lot of) だけでもよい。
・The department store has a lot of sweets that have a lot of strawberries inside.
あえて『目白押し』といいたくなる人の心情を読み取ると、どう考えても、嬉しいから『目白押し』と言っているのだろう。嬉しいのは、最も簡単な言い方は、happy 。よって
・I am so happy to see so many sweets in front of me. They all have a lot of strawberries inside. They look so cute!
前に(in front of )など、課題に一言も書いていないが、目の前に無いのに、目白押しとは、言えないのではないだろうかと思う。眼前に、圧倒的な量のスイーツが、あふれんばかりにあるからこそ、それを称して目白押しというのではないだろうか。
試みに、辞書(和英大辞典)で『目白押し』を引いてみると jostling (with one another), a crush, milling. とある。jostle というのが、ひじなどで乱暴に(激しく)つく、ぶつかるという意味。crush が押しつぶす。milling のmillは石臼(うす)、粉をひくの意味。
その後文例として、stand close side by side (目白押しに並ぶ)、a milling crowd, a jostling crowd (目白押しの群衆) とある。
記載されている stand close side by side を使って、stand をsit (perch onも可) にして Birds are sitting side by side on the power line / electric wires (電線). とすれば、『目白押し』の由来に沿った言い方となる。
ただやはり、スイーツの話となると、ちょっと辞書にある英語とはどうもマッチしない。和英辞書に頼って言うと、Sweets with strawberries are standing close side by side(?) Sweets are jostling with one another(?) という、何か、スイーツが満員電車の中みたいに、押し合って立っている感じとなり、妙な感じとなる。和英辞書の英語をそのまま鵜呑みにして使うのは、得策ではない。不自然な英語は、通じないばかりか、誤解が生じかねない。簡単でも、正確に意図を伝えることを心掛けるべきである。
簡単な英語は、普遍的である。よってどんな状況でも使える。
難しい英語を不正確に使って、不完全にしか伝わらないよりも、簡単な英語を正確に使って、完全に伝わる方がよい。
簡単な英語には、その力がある。
There are many sweets with strawberries inside and look cute are packed at department stores.