英作問題『いちご 』
12. 酸味のきいたイチゴは、ケーキにすると、ちょうどその甘みと相まって、絶妙なハーモニーとなる。
⇒ 「絶妙なハーモニー」という言い方を耳にすることがある。
一口にハーモニーと言うが、そのまま使うのは、微妙である。
外来語をむやみに使うと、たいてい不自然な英語になるし、間違いのもとである。
わからないものは、使わない、というのが英作の原則である。
絶妙なハーモニー。
そのまま字面を訳そうとするのではなく、なぜそう言うのか、考えてみる。
なぜ絶妙なハーモニーと言う必要があるのか。それを言うことで、言いたいことは何か。
酸味がきいたイチゴは、そのままでは酸っぱくて食べられた物ではないが、その同じ酸っぱいイチゴが、甘いケーキ(の生地)と一緒に食べると、すごくおいしくなる、ということである。
要するに、酸っぱいイチゴと甘いケーキは、合う。
この合うというのは、どういうことか。
2つ(以上)の食材を掛け合わせる、即ち一緒にした時、それぞれを単独で使用もしくは食べるよりも、おいしいと感じるということ。2つ以上の物が合わさることでより高い効果を得る、いわゆる synergy(シナジー=相乗効果)が生じるということであり、相反する性質のもの同士が合わさり、より高い段階に至る、哲学的にいうとアウフヘーベン(独、aufheben) ということに該当するだろう。
絶妙なハーモニーというのは、ある2つ以上のものがあって、それらは単独では、大したことはないが、一緒にすると、良き結果が得られるということ。食べ物でいうと、良き結果は、当然、おいしいということになる。
要するに、一緒に食べたら、すごくおいしい、ということである。
・Sour strawberries are terrible, but if you put them in sweet cakes and eat them together, they taste really good.
・If you put sour strawberries and sweet cakes together, that makes a great cake.
・You can make a great cake if you put sour strawberries in a sweet cake.
・The cake will tast good if you put sour strawberris in a sweet cake.
・When strawberries are sour and cakes are sweet, you can make perfect cakes.
・Sour strawberries are good/ best when you eat them with cakes.
・Sour strawberries are great when you put them in a sweet cake and eat them together.
・You can make a perfect cake if you put sour strawberries in a sweet cake.
絶妙なハーモニー、という感じに意味的に近づけると、こんな感じだろうか。色々言い方はあるだろう。
ハーモニーとは、日本語でいうところの調和である。
おいしさとは、食材同士の組み合わせの調和であり、調和なきおいしさは、ない。
よって、料理において、調和とは、おいしさの別名であり、絶妙なハーモニーという、調和が最高度に達した状態は、最も美味しいということであり、その状態を、最も簡単な英語で言い表すと、perfect (完璧)などが該当するだろう。
他にも、
調和とは、何かと何かが合うということで、こういう場合 go well /together という表現がよく使われる。
服装であれば、Your hat goes well with your shirt. (帽子が、シャツに合いますね)や、 食べ物にも使う。今回であれば、酸っぱいイチゴが、甘いケーキに合うということなので
・Sour strawberries go well with sweet cakes.
・When your strawberries are sour, they can go well with cakes that are sweet.
・Sour strawberries and sweet cakes go well together.
合うということは、よいことである。 good with で、例えば This wine is good with cheese /meat dishes. などと言うので
・Sour strawberries are good with sweet cakes. でよいだろう。
絶妙なハーモニーという言い方は、グルメ番組の、いわゆる食レポで、よく聞く。
食通の芸(能)人が、ただ単においしいというだけでは、まさに芸がないので、いかにそれがおいしいかを、苦心して伝えるにあたり、時に、絶妙なハーモニーと言っていると考えられる。
絶妙なハーモニーという、ある意味食品に対する、最高レベルに類する賛辞は、しかしながら、そのまま英語にしようとすると、伝わるかどうかは、わからない。
しかし、少し立ち止まって考えたら、絶妙なハーモニーというのは、要するに、「一緒に食べたら、めちゃくちゃウマい」ということに他ならない。そこまで見抜けば、英語にするのは、たやすいだろう。
コツは、日本語に振り回されないこと。
そして、自分の知っている、習い覚えた基本的な英語を大事にすること。そして言わんとすることを、その言葉の表面的な部分の裏に隠された真意を見抜くこと。
それさえできれば、簡単な英語だけで、十分に自分の意図を伝えることが可能である。
そのために必要なのは、自分で考えることである。
答えを最初から求める人は、答えを得たらそこで歩みを止める。
しかし、自分で考え、ぶざまでも自力で答えを出そうとする人は、考え続けるだろう。
そして、その考えるプロセスがそのまま、その人の表現力を深めることとなる。