さみしさをしじまの箱の隅につき生ひくる夢としばし語らむ
苦しきは心をかへし裏を見る夢だに知らぬ凡庸の群れ
しほさゐの音をとほく聞き思ひ出の夢にとけゆく夜のしづけさ
ゆふ花の黄金の粉を風にまき涙にくるるいつはりの春
住江のまつの岸辺にかひひろひしじまの海の声をこそ聞け
裏庭に立てども立たぬ水を立ていしずゑを組むいつはりの橋
印籠を見せて敵を支配するあほうのわざの苦しかりけれ
群れさわぐ酒神の祭り森をゆき夜更けに建てしさかさまの塔
野に散りてはかなきてふの体温を追ひてはからむ崩壊の朝
さかさまの高殿はたち飛ぶ鳥も苦き尻見る人間の丘
海に浮く細き小枝に塔を建てものいふ猿のやすやすとすむ
苦き実の枯れ木に生りて蜜をぬりよきものとして人に食はしぬ
ちはやぶる神のみや知る苦き雨落ちて知るべきさかさまの罪
暗き夜に心と虚無が摩擦するうすきあかりにあほうが群れる
閃光は空をつらぬく神の玉くづるる人のいつはりの夜
深みゆく不二の青さを夢に見てくすしきわれのゆく道をとふ
何恥ぢてかうべたるるか裏山の風にももだすくまざさの群れ
さらしなやをばすて山に月は照り下葉の露をのむ人を見る
あまびこのおとづれもなきいはやどの夢にこそ見れ貝の鳴く声
あかねさす昼にも暗き山かげに巣篭る蜘蛛の苦しきなげき