世界はキラキラおもちゃ箱・第3館

スピカが主な管理人です。時々留守にしているときは、ほかのものが管理します。コメントは月の裏側をご利用ください。

月の乙女を

2016-12-09 04:17:23 | 歌集・こてふらん

睡蓮の ごとき小島を 胸に置き 月の乙女を さそふてみたし


ひさかたの 月はほろびて なよ竹の しなる弓にぞ 隠れ去りぬる


望月を 割りて砕きて ももとせの 餅と食はむと せし賤男かな


まぼろしの 月を見むとて 再びの 天をあふぎて 闇のみぞ知る


ゆふれいの 訪ひし門にて 待つ人を 来ぬとさとせし 星月夜かな


猿回し 寄り集まりて 土壁に 梯子をかけり 月を盗めと


我が恋は はりこの兎 盆の月 足をちぎりし 蟹の横這ひ


不知火を 星とたがへて 見る人の 数を頼りて 月を憎みき





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神の心

2016-12-01 04:17:56 | 歌集・こてふらん

北辰の 宮を地に建て 新しき 君に名を問ひ 国の血とせよ


ちはやぶる 神の血を汲み 早き瀬の 川に注ぎて 国を清めよ


青山に 潜める猪の 魂を呼び やすらへとかけ 深く頭を下げ


ひろびろと 海の都に すむ魚に 神の心を 見て泣け人よ


とこしへの 石を都の 西に積み 神の心に 誓ふ世が来る


暗き世の まがひの衣を 脱ぎ捨てて 人はこの世の 神ともならむ





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電球を

2016-11-30 04:19:08 | 歌集・こてふらん

電球を 星と思ひて あがめ来し 日々を悔いては 打ち捨てよとふ


王宮の 座を盗みて 旨酒を 美女の器に 酌みて飲む猿


偽物の 王に道化の 服を着せ 北の門より 野にぞ追ひやれ


楽園の 東には添ふ 妻はあれ 宮の北には 見る影もなし


ひのもとの 魂を盗める 猿ありて すめらみことは つひに落ちぬる


巨星落つ 音も聞こえず 電球が 落ちて便所の 明かりが消える


虹を吊る 神のまことを 読めもせぬ 猿は再び 都に来るな


千歳経て すたれきりたる かんむりを 川に流して 黄泉路に落とせ


東方に 星を見る窓 打ち抜きて 天狼の目に 国を占へ





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あをあらし

2016-11-26 04:17:44 | 歌集・こてふらん

いくたりも 星の入り来る 瑠璃の籠 けふの語りを 胸にしまへよ


目を伏せて 魂のしりぞく よりしろの 花ひともとに 天津神来る


うつくしき すがたをわれと な思ひそ 神よればこそ をみなはよしと


もののけと なりし身を悔い ものかげに 潜み血を食ひ 神を恨む世


うるはしき 神をほめつつ 我がためと おもふ心を いましめよとふ


しきしまの やまとをのこの すたれるを いかにせむとぞ 説くものもなし


ますらをは かひなみがきて 魂を煮て あをあらし吹く 野にうちいでよ


虹を見て うれひに染むる まなざしを 見初むる者の うれひを知らず


打ち捨てて 背かれし身の わづらひに をなごを責めて しひたげる馬鹿


早蕨の 萌ゆる春にぞ 会ひみむと 夢にちぎりし 日をなつかしむ






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ゆふけぶり

2016-11-23 04:18:56 | 歌集・こてふらん

ますらをの 腕をふるひて をとめごの 乳を盗める 身の恥づかしさ


ゆふけぶり つまこのために 飯を炊き けふををさめて よしとする嫁


あかひもの 長き世を耐へ 神の振る 鈴を拝みて 励めとぞいふ


しづのをの 荒ぶる馬鹿の 吹きすさぶ 世には身を伏せ 口とぢてゆけ


あだしよの 闇をつらぬく 笛ありて けふより後は 耐へずともよし


たばかりて 身を怠りし をのこらの 影をよそほひ 世をすくふ姫


しづのをは たふときものを 侮りて 月をたぬきと 乱れ思ひぬ


みづがきの 神は降り来て そよ風に ことしのばせて 世を改めむ


猿の尾を 尻に下げつつ なり果てし 身をも憂へず 馬鹿がへつらふ





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青く

2016-11-11 04:19:34 | 歌集・こてふらん

てふてふの 文を折りては 野に放ち 神のおしへを 世に語る人


天狼の 荒れ野に落ちし 現身を 世に灯さむと あらひみがきぬ


ため息の 城を作りて 野あざみの 棘で守りて ながらはむとす


年老ひて なほ美しき 現身の 玉を開きて さいはひを塗る


をとめごは 神を守りて まなざしを 青く澄ませて よきことをせよ


目に見えぬ 星のまよひを 角と矯み 欠けし身を伏せ しるべとなりぬ





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花籠を

2016-11-10 04:27:30 | 歌集・こてふらん

ひなげしよ 風に歌へよ 幻の 夢となりにし 人を思ひて


月影を 酒と酌みては まなざしを ふせるおまへの 心かなしき


砕かれし 玉ならば砂 石は土 夢に溶けゆく 人は思ひ出


消しゴムの 消しくずもなし あやかしの 技をなしぬる 人の愚かさ


退きて 影に消えぬる その玉を 深追ひしては ねぢころしけり


貝といふ 神の心に たたまれて 琴をひく手も 萎えて消えゆく


花籠を 負ひて若菜を 摘みゆきて をみなの徳を 教へむとせり





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かぎろひの

2016-11-05 04:19:33 | 歌集・こてふらん

かぎろひの 春をまよひし 雄狐の おもひどほりに ならぬ世に詰む


いつはりの 弦の琴をぞ かき鳴らし をみなを殺す をみなとなりき


よきものに ならむとはして 小面を かむり世をゆく しこめののろひ


おのれより うましものをぞ 恨みては 有明を見る まで言ひつくす


我に倦み あやめの色を 盗み来て かほをなくせし あはれなる者


かほでなき かほを鏡に のぞきては われならぬ身の はしきに酔ひぬ


かほのなき ものとなりぬる 人の身の 人にあらざる けものでもなし





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ひなげしの

2016-11-01 04:20:33 | 歌集・こてふらん

美しき 名のみ語りて 古傷の うずく背中を 馬鹿よ隠すな


あだし世を うまくやらむと 阿呆をして 総身にかぶる 呪言の煮え湯


白百合を 折らむとはして 幻の 風に失せゆく あやまちの恋


頑なに 心渡さず ひなげしの 心は割きて 奪へとぞいふ


万軍を 作りて挑む 敵と見て はかなき芥子の ひともとを消す


芥子といふ 名は消しといひ とこしへに 伝へゆけとぞ み使ひはいふ


こころ捨て 影をたよりし 人の世に こころよき美は 訪はぬとぞ知れ


美しとは こころがよきと いふものと ようにわかりて もはや遅きと





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荒れ野に向かへ

2016-10-27 04:18:04 | 歌集・こてふらん


をとめごの 夢はこてふを 野に放ち はねかへりくる しほさゐの声


ことごとく はしき芽を摘み しづをゆき はてのはて見る くらきものの世


月の書に しをりを挟み たづさへて 長き夜をゆけ ひとりしもゆけ


くづれゆく あだしよの洞 逃げ行くも 影すらもなき 音に聞く城


己が荷の 山のごときを あふぎ見て 恐るるものは 奈落に落ちよ


とこしへに 消ゆることなき 入れ墨を 眼に彫りて 荒れ野に向かへ


あたらしき ものの寄せ来る しほの音の 己の中に 聞こゆる日まで





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