ぶんやさんち

ぶんやさんの記録

歌会始

2009-01-15 20:15:31 | ときのまにまに
新春恒例の宮中行事「歌会始の儀」が皇居・宮殿で行われた。今年のお題は「生」で、国内外から寄せられた2万1,180首から選ばれた10首が、天皇皇后両陛下や皇族方の歌とともに詠み上げられた。天皇・皇后を初め皇室の方々の歌は、まぁ無難な、平凡な歌ばかりであったが、その中にあって、福岡県久留米市の中学生北川光君の歌は光っていた。
熱線の人がたの影くっきりと 生きている僕の影だけ動く
上の句は、一度でも広島の原爆ドームや記念館を訪れた人、あるいは原爆の日のあの写真を見た人ならば、その情景が頭をよぎるであろう。そこまでは、言うならば静かな情景描写である。ところが、下の句になると、いきなり動の世界に引きずり込まれる。「生きている僕」という言葉は、わたしたちの心を沸き立たせる。どうなんだ。今の中学生が、あの影を見てどう思うのか。「の影だけ動く」と来ると、あの日突然奪われたいのちが、「動かない影」が読む者の心を突き動かす。動いているのは確かに「生きている僕」であるが、語りかけているのは「動かない影」である。この歌を聴いて、しばらくわたしは動けなかった。
今まで、わたしは宮中の歌会始には興味がなかったが、今年はショックであった。

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