ぶんやさんち

ぶんやさんの記録

正木晃著『宗像大社・古代祭祀の原風景』(NHKブックス)を読んで

2008-11-04 10:48:21 | ときのまにまに
日本を代表する宗教学者・正木晃氏は『宗像大社・古代祭祀の原風景』(NHKブックス)の「はじめに」の冒頭で下記のように述べている。この文章は、この本全体を詳細に読めば、宗像神社および沖ノ島について、いかに的を射た言葉であるかが、よくわかる。
<荒海で名高い玄界灘の真ん中に、神々しい姿の小さな島が浮かんでいる。それが、沖ノ島である。
この絶海の孤島では、縄文前期(6000~5000年前)にニホンアシカの再生を祈る宗教儀礼が始まって以来、5000年以上にわたって、祭祀がいとなまれ続けてきた。
この間、4世紀の後半には、沖ノ島の祭祀をつかさどる宗像氏の協力を得て、派遣使節の航海安全を祈願する大和政権の国家祭祀が開始され、遣隋使や遣唐使の段階をへて、後には国土防衛の目的も加わりながら、10世紀まで継続した。
その後も、民間祭祀は絶えることなく、いまもなお、日本最大の海洋漁労文化の祭典といわれる「みあれ祭」が毎年、盛大に行われている。このような事例は、日本国内はもとより、世界中を見わたしても、他にもとめがたい。>(3頁)
本文第1部「古代祭祀の原風景」は4つの章に分けられ、それに第2部「探訪沖ノ島」として、正木氏の調査に同行した小説家夢枕獏氏の特別寄稿「沖ノ島 謎があるから豊かである」と、正木教授と夢枕氏との対談「沖ノ島はなぜ神の島になったのか」が付録されている。第1部の1章と2章とはかなり専門的で、考古学的知識がないと「退屈する」が、そこはザッと目を通すだけでいいが、第3章と第4章とは、じっくり読みたい。文章もわかりやすく、抜群に面白く、説得力がある。第1部を読み終えたうえで、第2部を入ると、全体像が明確になり、一般の読者にも理解できるように非常に親切な構成になっている。
読み終えて、暫く興奮状態が続き、他の本を読む気がしないほどで、何度もページをめくり返しながら余韻を楽しみつつ、クールダウンのつもりで、この感想文を書いている。
現在、福岡県および宗像市を中心に、宗像大社と沖ノ島を含むこの地域全体を「世界遺産」として登録しようという運動が起こっている。ぜひ、人類史上でも貴重なこの地域と文化とが世界遺産として保存されることを願う。

最新の画像もっと見る