ぶんやさんち

ぶんやさんの記録

戸籍制度は誰のために

2008-12-09 16:10:03 | ときのまにまに
今読んでいる本「アメリカ人弁護士が見た裁判員制度」(コリン・ジョーンズ、平凡社新書)に面白いことが書いてあった。
「現在の戸籍制度は、もともと地域住民を監視しやすくするため、19世紀にできた戸籍制度をもとにしてるが、21世紀の日本にまだあるのはなぜかということについて、疑問に思っている日本人は少なくないはずだ」(56頁)。
とはいえ、わたしなどは疑問にも思ったこともない日本人の一人である。戸籍というものは「当たり前すぎて当然必要なもの、もしなかったら大変な混乱をもたらすもの」と思っているし、世界のほとんどの文明国には、何らかの形での「戸籍制度」があるものと思っている。
彼は続けて言う。「(戸籍制度が)なぜ必要なのかという」ことについて疑問に感じているし、そもそも「戸籍制度という免許制度は、半分それを担当するお役所の存在意義を維持するためにあるとしか思えない」と断じる。ここでいう「免許制度」という概念には説明が必要であろうが、省略する。
それで、早速諸外国の戸籍制度について調べてみると、確かに、「戸籍制度」という「家」基本にした制度はほとんど見られない。日本以外では、日本の旧植民地だった韓国と台湾にだけあり、中国では「戸口制度」という名称の制度はあるが、それは農村と都市とに分けて住民を固定するための個人登録のようなもので、日本の戸籍とはかなり異なるようである。
お隣の国韓国では、2008年1月1日付で、「家族関係の登録等に関する法律」が制定され従来の「戸籍制度」を完全に廃止し、個人を基礎にした身分登録制度に移行したとのことである。
以下、各国の「身分登録制度」を紹介しておく。
http://tantei.web.infoseek.co.jp/koseki/kaigai.html
<以下、引用>
イギリスでは、各地方の身分登録機関から3ヶ月ごとに、中央の身分登録機関に送られてきた出生、婚姻、死亡の身分登録を、各事項ごとに名前のアルファベット順に整理して、索引を作り、利用者はこの索引から調べたい人の身分登録を検索できるようにしています。

アメリカは、イギリスと違い、各地方の出生、婚姻、死亡の身分登録は州の中央機関または郡の機関で保存されているだけで、アメリカ全体で統一的に収集している機関はありません。そのため、家族関係や相続人の追跡は不可能です。自分のことを自分で証明する場合に利用するだけです。その代わりに個人を特定するものとして、社会保険番号が利用されています。

ドイツでは、出生、婚姻、死亡の各登録簿の他に、家族簿という制度を設けています。家族簿は婚姻家庭ごとに作成され、住所を移転すれば、そのたびに作り直します。

スイスでも、出席、婚姻、死亡の各登録簿の他に、家族登録簿があります。ドイツとは異なり、本籍地での作成で、婚姻家庭に限定されず、婚外子も記載されます。登録簿の名義人の家族を順次記載するシステムで、出生、婚姻、死亡の各登録が本籍地に送られてきます。日本の戸籍に似ています。

フランスでは、出生、婚姻、死亡の各登録簿の連絡を可能にするために、出生証書の欄外に、婚姻、死亡、婚外子の認知、養子縁組、離婚などを付記し、個人については身分行為の追跡が可能なシステムをとっています。

オランダでも、出生、婚姻、死亡の各登録簿の他に、人口登録カードがあり、個人別に出生、婚姻、死亡などの身分事項を継続的に記載しており、個人についての身分行為の追跡が可能です。またこのカードには、父母、配偶者、子が記載されるので、家族関係を知ることも可能です。

スウェーデンでは、出生、婚姻、死亡、転居などの登録はすべて教会の管轄する教区登録所が行っています。行政は、出生の時点で国民に番号をふり、個人の身分行為を順次登録するシステムを導入しています。これを個人票といいますが、父母、配偶者、子供も記入されますから、家族関係を追跡することも可能です。

言うまでもないことですが、家族簿、家族登録簿、出生証書の欄外付記などを採用している国でも、もちろん本人あるいは一定の範囲の家族しか、記録の原本もしくは抄本のコピーをとれません。

<以下、わたしの文章>
戸籍制度あるいは身分登録制度のように、社会における自分自身のアイデンティティを証明する制度そのものが、国によって違い、しかも、日本という国が他国と根本的に違うということになると、ちょっと考え込んでしまう。今まで、こんなことは考えたこともない。どうやら、戸籍制度は誰のためのものなのか、徹底的に検討する必要がありそうである。えらいこっちゃ。

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