ぶんやさんち

ぶんやさんの記録

第1回聖堂再生プロジェクトシンポジウム「ものづくりの楽しさ」

2010-04-07 20:06:02 | ときのまにまに
今日午後2時より、NPO法人文化財保存工学研究室の主催による第1回シンポジウムが、建設中のザビエル聖堂内で開催されました。主題は「ものづくりの楽しさ」で、はじめに理事長の土田充義先生より開催の主旨説明がなされました。「ものづくり」と言っても作るものは、単純な「もの」ではありません。れっきとした聖堂です。しかも、建築資材は1949年以来50年間、鹿児島市内で大聖堂としてその役目を果たし、かなり老朽化し、シロアリの被害も受けて解体された廃材です。その廃材をもう一度聖堂として「再生」させるという途方もない事業です。普通、人々は「無からの創造」を語りますが、今回の「ものづくり」は「マイナスからの創造」であり「墓場からの復活」です。
この「聖堂再生プロジェクト」は1997年4月15日に発足しました。今回開催された第1回目のシンポジウムは、その発足の時から関わってきた人たちの「ものづくりの喜び」を聞き出し、言葉にしようというのが土田先生の狙いのようです。

        

パネラーは吉田正吉さん(美術工芸画家)、本田英昭さん(NPO法人副理事長)、尾崎幸也さん(同理事)、八坂末廣氏さん(八坂工務店・大工)の4人の方々です。司会は江口由美子さんです。いずれもこのプロジェクトに当初から関わってこられた方々ばかりです。
土田先生は、本日のパネラーについて次のように紹介しておられます。
≪尾崎孝也さんは、プロジェクト発足以前から部材と部材を止めるボルト直しをしてきた。潰れた溝を切り、曲がったボルトを直し、大小様々な長さのボルトを一本一本再利用に耐える形にした。合計600本以上である。これだけで2年間を費やした。1本も失うことなく、骨組みに使われている。更に、搭上に立っ十字架・塔の宝珠・匿の修復をした。根気の要る仕事であり、技だけでは出来ない仕事である。頭の下がる思いがする。
本田秀昭さんは2003年夏以来、7年間近く聖堂再生に尽力され、ばらばらにとった部材を組み合わせて屋根窓をつくり、時には大工さんを助け、時には瓦を葺き、どんな部材の修復も可能にした。確かな技術を持っておられる。
古田正吉さんは2008年夏から、資材置き場に屋根を掛け、休憩場所を造り、畳を敷き、窓をつくり、外壁にはレンガを措き仮設建築には見えない。芸術的な感覚がある。毎日コツコツと一人でひた向きに作っている。85歳を過ぎ、いくつかの病を抱えての仕事である。生き方まで教えていただいている。
大工の八坂末虞さんは常に創意工夫を試み、いかに重い材を上げるか、瓦を葺く前に瓦を置くにはどんな台がいいか考える。大工道具だけでなく、機械の修理もする。≫

        

ディスカッションは、江口由美子さんの司会によりプロジェクターを使って進められました。まず、鹿児島から送られて来た未整理の膨大な建築資材が修道院の敷地内に野ざらしにされている写真から始まり、それらの資材をどのようにして保管し、整理し、再利用できるようにするのかという問題の解決、それらの置き場を作る苦労、分類、整理、のために運搬すること、各部材の補修等々、気が遠くなるような作業が写真で紹介されました。いよいよ建築が始まっても足場作りや立ち上げ、組み合わせ等々、口では言い表せない苦労が伴います。このプロジェクトに最初から関わり、ほとんど連日現場でボランティアとして奉仕された司会者、江口さんならではの口添えで、普段は口の重い各パネラーからその時の現場の苦労話や説明が生々しく語られ、聞く者たちを感動させました。
今日は風も強く寒い日でしたが、1時間半という時間があっという間に過ぎてしまいました。とても有意義な会合でした。

最新の画像もっと見る