魁皇関の勝ち越しを祝う

37歳の誕生日に、幕内通算747勝を達成し、歴代3位という成績を記録した。わたしがこの記録において特に祝福したい点は、魁皇関が横綱でないということである。横綱は、当然それだけの勝ち星をあげているから横綱になったのであり、魁皇関より上の2人も当然横綱であり、第4位も横綱である。しかし、横綱でない魁皇関が記録をあげたということは、それだけ長く、幕内に存在し、長く相撲を取っているということで、それは日本の角界にとって、他の誰も真似のできない、まさに魁皇関らしい素晴らしい記録である。
魁皇関には他の関取とは異なる価値観というか、相撲観があるようだ。ただ、がむしゃらに勝てばいいというのではない。魁皇関の相撲には、相撲の美学というか、美しく勝つということにこだわり、そこに取り口の主眼を置いているように思う。これはなかなかできないことで、しかも、幕内に留まりつつ、これを達成するのには、横綱になる以上の実力がなければできることではない。もちろん、相撲の世界は「勝って幾ら」という非常に現実的な側面もあり、その中では「美しく勝つ」という価値観は、あまり評価されないのかもしれない。そこに現在の角界の根本的な問題があるように思う。
ただ単なる格闘技ではない相撲の本道は、魁皇関のような価値観であり、その意味で、今回の記録の樹立には心からおめでとうと言いたい。これからも、一場所でも多くわたしたちファンを楽しませて欲しい。