ぶんやさんち

ぶんやさんの記録

水をめぐる断章

2008-05-12 19:10:45 | 小論
天地創造において、神が最初に創造したものは「光」であった。光から始まって、万物を神は無から創造された。ところが、神が創造しなかったものが唯一つある。それが水である。神は「大空を造り」、水を上の水と下の水に分けたが、水は造っていない。神は水を支配するが、水を造ったのではない。
「神は言われた。『水の中に大空あれ。水と水を分けよ』。神は大空を造り、大空の下と大空の上に水を分けさせられた。そのようになった。神は大空を天と呼ばれた」。
この文章はわたしたちの常識を越えている。ここで語られていることをイメージ化すると、宇宙は水で詰まっており、神はそれを「上の水」と「下の水」とに強制的に引き裂かれ、その間に「大空」が置かれた、ということであろう。これはわたしたちの宇宙観では理解できない。
古代人にとって、雨が降るという現象は説明困難な現象であったものと思われる。雨と雲との間に何らかの関係があるとは予想できても、まさか、あのふわふわした雲が水の固まりとは思えない。しかし、確かに雲の遙か彼方に水がある。それならば、なぜその水は落ちてこないのか。その苦肉の結論が、「上の水」と「下の水」であり、その間を「大空」が仕切っているということであろう。大空によって、神は上の水をコントロールしておられる。
さて、そこで問題はこの「大空」とは何か、ということになる。これも解らない。大空とは何か。有るのか、無いのか。文脈から考えると、この大空とは上の水が下に落ちてこないように下から支えているパワー、つまり早く言ってしまえば、傘のようなものをイメージしているようである。日本語でいうと「天蓋」のようなものである。ということは、人間の生活するスペースとは、天蓋によって作られた、上の水と下の水との非常に限られた空間ということになる、らしい。水は恵みであると同時に、わたしたちの生命を脅かすものである。この「天蓋」は創造主の守りを象徴している。

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