■世界中で頻発する「東アジア人差別」を、なぜ日本人は問題にしないのか
PRESIDENT(プレジデント) 2021/02/16
https://president.jp/articles/-/43250
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・人種差別には根強いカーストがある
「ブラック・ライヴズ・マター運動」は黒人に対する差別が大きな問題として取り上げられ、反対運動に発展しましたが、その一方で東アジア人に対する差別はなぜかまったく問題になりません。
それどころか、実際に起きている暴力的な事件がテレビや新聞では非常に扱いが小さく、そういった事件が「東アジア人を守ろう」といった運動にちっとも発展しなかったということもショッキングな事実です。
この差別は中国人だけでなく、韓国人や日本人そして東南アジア人などアジア系の人々に対して向けられたものです。
そして驚くべきことに、こうした問題を議論しようとする動きすらないのです。
普段「差別反対」「少数派の権利を守れ」と言っている人々、「ブラック・ライヴズ・マター運動」に熱心なリベラル系の日本人などは欧米について「人権擁護が進んでいる」と言いますが、実際は彼ら自身も差別されているのが実態なのです。
この事実は、アメリカや欧州という土壌には根強い差別があるのだということを表しています。
つまりアメリカや欧州には、「権利を守られる少数派」と「守られない少数派」がいるということです。
残念ながら東アジア人はその後者に属しています。
日本でも、これに薄々気がついている人がいるのではないでしょうか。
今年の1月以後、東アジア人が各地でどんなひどい差別を受けているかということを調べればよくわかります。
これらは、日本ではほとんど報道されることがありません。
・タイ人を殴りながら「コロナウイルス! コロナウイルス!」
2月、23歳の中国系シンガポール人ジョナサン・モクさんが、ロンドン中心部のオックスフォードサーカスを夜9時ごろに歩いていると、突然、殴る蹴るの暴行を受け、顔の形が変わるほどの大ケガをしました。
Facebookには真っ青に腫れ上がった顔の写真が投稿され、なかでも目はゴルフボール大にまで腫れ上がっていました。
彼を殴った男はイギリス人で、「お前の国のコロナウイルスは、俺の国にはいらないんだよ!」と叫びながらメチャクチャに殴りました。
ここは渋谷の駅前みたいな場所で、ロンドンではもっとも人気がある繁華街です。
普段から観光客や買い物客が多く、警官も何人かパトロールしているので、夜でもかなり安全です。
暴力事件や犯罪が起こるような場所ではありません。
そんな安全な場所で、明らかに人種差別が原因の暴行が起きてしまったのです。
また、ベトナム人キュレーターのアン・グエンさんは3月はじめ、ロンドンで開催されるイベントの準備中のギャラリーから、「観客が怖がるのでうちのギャラリーのブースに来ないでほしい」というメールを受け取りました。
さらに、金融街で税務コンサルタントとして働いているタイ人のパワット・シラワタクンさんは2月、西ロンドンのフルハムで昼過ぎにバスを降りようとしたところ、10代の若者2名に顔をひどく殴打されて出血したうえ強盗に遭いました。
殴っている最中に若者たちは、「コロナウイルス! コロナウイルス!」と叫んでいた。
周囲には大勢の人がいて、見通しのよい通りだったにもかかわらず、彼を助ける人はいなかったのです。
この事件はシラワタクンさんが二人を撮影し、警察に届け出たことで発覚しました。
・イギリスの東アジア人差別は前年比400%増
こうした被害に遭うのは、明らかに東アジア系の風貌をした人たちだけではありませんでした。
ロンドンの金融街で働くジェニー・パティンソンさんは、マレーシア人とスコットランド人の両親を持つイギリス生まれのイギリス人で、報道された写真を見ると、見た目はどちらかというと白人です。
彼女は2月、ウォータールー駅でバスを降りる際、男性二人にツバをはかれました。
彼女はこう語っています。
「私は自分を異邦人だと感じるんです。自分は見た目が違っていて、他の人に受け入れられていないんだなって。私にとって街中は、もう安全だと感じられません」
ロンドンの差別反対団体であるStop Hate UKによれば、新型コロナ騒動が起きてからイギリスでは東アジア人に対する差別が激増し、地元の中国系コミュニティからの通報が急に増えたと述べています。
これまでは中国系や東アジア系からの通報はほとんどなかったのです。
人種に起因する差別は、差別的な言い回しで呼ぶ、唾を吐くといったものから、車道に突き飛ばすなど、命の危険に関わるようなものまで含みます。
ロンドン市警察によれば、2020年2月には東アジア人に対する人種差別的犯罪は64件発生し、イギリス鉄道警察では2020年の1月から3月のあいだには42件が報告されています。
これは2019年に比べると400%の増加です。
在宅勤務や学校閉鎖で公共交通機関の利用者は急減し乗客が少ないにもかかわらず、犯罪は激増しているのです。
マンチェスター大学の社会学研究者であるインシュアン・ファン氏は、「イギリスの中国系コミュニティは人種差別犯罪に直面しても警察には届け出ないことが多いので、水面下の件数はもっともっと多いはずだ」と述べています。
・「中国系は差別されても些細なことだと我慢する傾向」
またリーズ大学のビナ・カンドラ教授は、「中国系は差別されても些細なことだと我慢する傾向が高い」と述べています。
同大学が400名を対象に聞き取り調査を行ったところ、なんと、半数の人が新型コロナの感染拡大後になんらかの差別を受けたか目撃したと述べています。
またイギリスだけではなく、欧州大陸でも東アジア系に対する人種差別を起因とする犯罪が急増しているのです。
オランダのハーグに住むジエ・ソンユーさんはダンスクラスから帰る途中、いつものように自転車に乗って移動していましたが、髭面の男二人に「中国人!」と叫ばれ、殴られかけました。
さらに差別はアメリカでも激増していて、アメリカのピュー研究所によれば、58%のアジア系アメリカ人が「新型コロナ騒動後、アジア人に対する差別が増加した」と答えています。
アメリカの差別反対団体であるAnti-Defamation Leagueは、新型コロナ騒動が起きてからオンライン上で行われている人種や属性に関する差別を監視してきましたが、Telegram、4chan、Gabなど普段から過激かつ差別的な投稿が多いサイトで、東アジア系に対する嫌がらせが急増したと述べています。
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■世界中で頻発する「東アジア人差別」を、なぜ日本人は問題にしないのか
PRESIDENT 2021/02/16
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