■「韓国人は日本人が大嫌い」と信じる人の勘違い
東京在住38歳韓国人と話してわかった日韓の今
東洋経済 2021/07/26 日沖健
https://toyokeizai.net/articles/-/440500
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昨年知り合いになった韓国人のパク・チャンホ(仮名)さんと、先日、初めてゆっくりお話しをしました。
パクさんは38歳で、東京都に住んでいます。
韓国で生まれ、国内の大学を卒業後、韓国の中堅メーカーに就職しました。
退職して、6年前に来日し、現在は東京のエンジニアリング会社に勤務しています。
韓国では良い転職先が見つからず、思い切って日本に来たということです。
パクさんとお話しして韓国の現状はどうなっているのか、韓国人が日本・日本人をどう見ているかなど、いろいろな気づきがありました。
今回は、パクさんとの対話の中から印象に残ったことを紹介しましょう(あくまでパクさんという日本に住む日本びいきの韓国人の個人的な見解であることには留意してください)。
・「サムソン」の存在はあまりにも大きい
まず、お互いの経歴を話しました。
私が日本石油(現・ENEOS)を辞めてコンサルティング事務所を開業したと伝えると、パクさんから「日沖さんはもっと分別のある人だと思っていたので意外です」と言われました。
パクさんによると、韓国人にとってサムソンに就職できるかどうかがすべてで、サムソンに入社したら自ら辞めることはありません。
サムソンの入社試験の倍率は数百倍で、サムソンに特化した就職予備校があるそうです。
もちろんENEOSはサムソンほど優れた企業ではありませんが、大企業社員の座を自ら手放すのは、「アホなやっちゃ」となります。
私のことはともかく、いま東大生には大企業よりも外資系コンサルティング会社のほうが人気あります。
商社なども就職人気ランキングで上位を保っています。
サムソン社員に非ずんば人に非ずで、サムソンに就職することが「唯一の正しい生き方」となっている韓国と比べて、日本のほうが働く人の価値観は多様性がありそうです。
韓国では、少子化がどんどん進行し、2020年の合計特殊出生率は0.84(日本は1.34)。
この状況についてパクさんは「原因ははっきりしています。直接の原因は教育費と住宅費の高さ。さらにその原因は、やはりサムソンです」と明言しました。
パクさんによると、サムソンに入社するにはソウル大学か延世大学に入学する必要があり、小学校の頃から塾通いをしなければなりません。
ソウルでは小学生の7割以上が塾通いをし、中学生なら週6日通うのが普通です。
サムソンなど主要企業もソウル大学も延世大学もソウル市や近郊にあるので、ソウルの住宅価格は高騰し続けています。
ソウルで住居を取得し、子供を産み、育てるのは至難の業になっています。
日本でも東京一極集中が指摘されて久しいですが、京都大学が京都府に、トヨタが愛知県にあるように、そこまで東京オンリーではありません。
パクさんは、「私も3年間ソウル近郊に住んだことがありますが、いまの東京の暮らしのほうがいろいろな面ではるかに快適です。ソウルに戻るのはちょっとお断りですね」と言いました。
ただし、ジェンダーに関しては韓国のほうが進んでいて、「女性にとっては、韓国のほうが暮らしやすいかもしれませんね」とのことでした。
儒教の影響で年長の男性が尊重されるというイメージが強い韓国ですが、いまどき男尊女卑の性は絶対に結婚できません。
深刻な結婚事情を反映して、韓国の家庭では女性の発言権がどんどん強まっています。
朴槿恵大統領が誕生したことを挙げて、私が「政治の世界でも、韓国のほうが女性の活躍が進んでいますね」というと、パクさんは「まあ日本との比較ではそうなるんでしょうけど、欧米諸国と比べると目くそ鼻くそ(パクさんは日本語が流暢)です」と答えました。
・韓国人は日本人をどう見ているか?
続いて、「韓国人は日本人をどう見ているのか」というちょっと微妙なことをパクさんに聞いてみました。
まず、日本人と韓国人の似ているところ。
「世間体や面子、他者からの評価を重んじるところは、かなり似ているのではないでしょうか」という見解でした。日本人が世間体や面子を気にするのはたしかにその通りですが、韓国人も負けず劣らずということのようです。
「韓国人は、進学でも就職でも、何を勉強したいか、どういう仕事をしたいかよりも、まわりの人にどう思われるかを気にします。韓国人は主要国で最も自殺者が多いわけですが、経済的な理由は少なく、友達から悪口を言われた、名誉・プライドを傷つけられた、といった理由であっさり自殺しますね」
逆に、日本人と韓国人で違っているところ。
「韓国人は正しい・間違い、好き・嫌い、敵・見方と、ものごとを2つに割り切ろうとします。それに対し日本人は、どちらでもない、という曖昧な部分を常に残そうとする印象です」
その例としてパクさんは、大統領・首相への政権支持率を挙げました。
「朴槿恵前大統領は、汚職によって国民の信任を失い、政権末期には支持率がなんと4%になりました。一方、安倍前首相や菅首相はあれだけスキャンダルや失政だらけでもかなりの支持率を維持しています。韓国だったら、一度ダメという評価になったら、再起不能になるまでとことん叩きのめされます」
私が「韓国人は熱しやすく冷めやすいのでは?」と聞くと、パクさんは「そうかもしれませんね。でも、忘れっぽいっていうことだと、日本人も同じじゃないですか。戦前の韓国統治のこととか、すっかり忘れてますからね」と言ってかすかに笑いました。
・「そんなに日本人が嫌いではないですよ」
それを受けて私が「やっぱり韓国人は、日本人のことを憎んでいるんですか?」と聞くと、「人によるし、世代によりますね。でも、中国人よりも日本人のほうが好きという人が多く、そんなに日本人が嫌いではないですよ」という答えでした。
「戦前の日本の統治や戦後の朝鮮動乱を経験している70代以上の世代は、日本人に強い敵愾心を持っています。彼らに育てられた今の40代から60代は、日本人のことを好きではありませんが、敵意までは持っていません。私のように30代より下の世代は、ほとんど気にしていないのですが、人から尋ねられたら『嫌い』と言わないとちょっとまずいかな、という雰囲気は残っています」
また、ビジネスの競争相手としても日本人を強く意識しているようです。
「大半の韓国人にとって、日本人は色んな点で最も気になる存在ですね。中国人よりもアメリカ人よりも。ビジネスでは日本を最大の競争相手と考えていますし、日本の文化には強く憧れています。日本・日本人への関心は高く、私も韓国に住む知人から日本での就職や日本人との結婚についてしょっちゅう人生相談を受けています」
最後に、今回パクさんとお話しした中で最も印象に残ったコメント。
「日本人はネトウヨみたいな韓国人ヘイトの人ばかりかと思って怖かったですが、来てみたら日常ではまったくそんなことはない。一方、韓国でも日本人に敵意剥き出しって人を探すのはたいへんなくらいです。外交のニュースやネット掲示板などを見ると、日本と韓国は今にも国交断絶しそうな勢いですが、あれってなんなんでしょうかね」
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■「韓国人は日本人が大嫌い」と信じる人の勘違い
東京在住38歳韓国人と話してわかった日韓の今
東洋経済 2021/07/26 日沖健
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