尚哉を心配する殿。
でも、殿の方がむしろ利用されてしまいそうな気がする。
そうならないで欲しいなぁ。
今まで怪異と言いながらも、誰かが大きく不幸になるドラマではなかったし。
尚哉を心配する殿。
でも、殿の方がむしろ利用されてしまいそうな気がする。
そうならないで欲しいなぁ。
今まで怪異と言いながらも、誰かが大きく不幸になるドラマではなかったし。
夕刻 青和大学 教室にて
寺内一(謎のフリーカメラマン)-小池徹平 が 講義後の後片付けをしている。
現在は、青和大学の臨時の事務職員となっているからだ。
話したいことがある。
そう言って、教室にやってきた高槻。
御用でしたら順番にお願いします。
大学の先生は、人使いが荒くて大変なんですよ。←それだけじゃねーぞ、そんなのマシな方だぞ!
席に置かれたプリントを回収しながら、講壇に向かって降りていく寺内。
君が神隠しにあったのは、いつだ?
13歳の誕生日。
警察には、その記録がない。
その頃、親が借金を抱えて一家で逃げ回ってたんですよ。
刑事のお友達がそれくらい調べてくれたんでしょ。
当時、ご両親が離婚前。
君は「鈴木一」だった。
それを聞いて思い出した。
僕は、母が「鈴木さんの奥さんと息子さん」と呼ぶ2人に会ったことがある。
一度だけ・・・。
たった一度でも、あの日のことは忘れない。
熱にうかされたような表情で、その時のことを思い出す寺内。
清花が開いたサロンで
女性たちが、彰良少年(幼少期:高橋來)を「天狗様」と呼び
両親の事、子どもの受験の事などで相談をした際の礼を、口々に述べている。
母に手を引かれた一少年は、それを見ている。
***********************
貴方は輝いてた。
あの日、君は聞いたね。
***********************
彰良少年の前に歩み出る、一少年。
どうしたら、貴方みたいになれますか
***********************
貴方みたいに神隠しに遭えば、僕も大人に振り回されずに生きられると思ったんですよ。
でも違った。
そう言った寺内の目が青く光る。
君は・・・、本当に。
彼の青い目の光は、徐々元に戻る。
あの時、僕は言った筈だ。
**********************
椅子から立ち上がり、一少年の耳元で彰良少年はこう告げた。
僕みたいにならない方が幸せだよ。
**********************
苦笑いをし、寺内は教室から立ち去ろうとする。
もう一つ言っておく。
深町君には近づくな。
いいですよ、やっぱり僕に必要なのは先生みたいだから。
(高槻の方を振り返り)
そうだ、神隠しと言えば・・・最近も起こってるみたいですね。
小春さん、早く見つかるといいですね。
そう言って、寺内は教室をあとにする。
オープニング
研究室で、尚哉(青和大学文学部の学生)神宮寺 勇太 のマグカップにコーヒーを注ぐ高槻。
この前はごめんね、深町君を巻き込んでしまって。
気にしないでください、あの程度でビックリしてたら先生の助手はできません。
胸を張り、凛々しく答えるワンコ・・・いや、尚哉。
逞しくなったんだね。(そう言って、尚哉の腕を軽くたたく。)
いや、まぁ。(照れくさそうにする。)
部屋をノックする音がする。
先生っ!
意気揚々と生方瑠衣子(高槻の研究室に所属する大学院生) - 岡田結実 が
戻って来た。どうやら、紀遠助(きのとおすけ)についての調べが済んだらしい。
その様子だと何か見つけたんだね。
生方によると、高槻の言った通り紀遠助の話は「今昔物語集」の中にあり
今昔物語集の他に、「美濃の国の紀遠助」という本が、テーブルに並べられた。
さらに調べると、千葉県内にも似たような話が伝わっており
小春の家の近所「かがみがわ神社」にも「開けるな」という箱が祀られているというのだ。
すばらしっ!
高槻が嬉しそうに称えると、生方は喜ぶ。
二人の間に割って入るのが申し訳なさそうに、尚哉が紀遠助について尋ねる。
話は、遠助が京から美濃の国、今の岐阜県の南部に向かう途中で
出会った女から「箱を届けてくれ」と頼まれることから始まるんだ。
(小春が百物語で話した様子が出てくる。)
尚哉:小春さんの話と同じですね。
遠助が女に聞いた。
「どういう人に渡せばいいんですか?」
女は答えた。
「相手はさる女性です。貴方が橋のたもとに行けば、向こうから現れます。」
「ただ、この箱は決して開けてはいけません。」
尚哉:そこも同じですね。
そこから先が違うんだ。
小春さんの話では自分で箱を開けていたけど、遠助は自分で箱を開けていない。
尚哉:えっ?
嫉妬深い奥さんが、「さては、誰かほかの女に贈るつもりだな。」
疑って箱を開けてしまったの。
尚哉:中にはくり貫いた目玉・・・。
そして、切り取られた男性器が入っていた。
(尚哉、股間を押さえて立ち上がり後ずさりする。)
で、遠助は慌てて、すぐに箱を閉じて橋に持って行ったの。
すると女が現れて「箱を開けましたね。」と見抜いた。
遠助は「開けてません。」と言い張って、そのまま家に帰ったの。
尚哉:へっ、無事に?
家に戻ると病気になって、苦しみぬいて亡くなったの。
尚哉:小春さんの話と似てるけど、全体的にエグ目ですね。
そうなんだ、小春さんだって百物語で話すんだから怖い方がいいって思うはずなんだが
なのに奥さんの嫉妬とか、面白そうな部分は全部省かれていた。
そこが気になるんだよね。
小春の家の近くにあるという 神社
神職と思われる男性が、高槻ら3人を案内する。
彼によると、小春が百物語で話した内容は、この神社に伝わる話とは違うといい
この神社の話は「今昔物語」の紀遠助の話をそのまま、名前を「そう衛門」と入れ替えた話だと言う。
案内されながら、各地に似たような話があるというのは、珍しいことではないという高槻。
本殿の奥には、朱色の布に包まれ紐で括られた箱が祀られている。
素晴らしいっ!
いつもの調子で箱に近づこうとすると、神職が声を荒らげて入らないようにと
高槻を留めた。
僕はバチが当たるとかは気にしないので、寧ろ怪異が体験できるなら開けてみたいっ!
うぁぁぁぁぁっ!✖2
今度は神職と尚哉の二人がかりで高槻を押し留め、尚哉が高槻をなだめる。
あのぉ、近くで見るだけでも・・・ダメですか?
神職は、「ちょっと、いろいろあった後ですので・・・。」といい、
生方がそれについて尋ねると、少し前に箱が盗まれてしまったというのだ。
戻っては来たものの、誰かが開けてしまったらしく箱を包む布の結び目が
変わっていたと言うのだ。
開けてはいけない箱を開けた人間がいる・・・ということですか。
神社を後にしながら、高槻は
百物語の時に
難波要一(尚哉の同級生) - 須賀健太 と 谷村愛美(尚哉の同級生) - 吉田あかり が
それぞれ「やってはいけないことをやって、人が消えた話」をしていたことを、2人に話す。
もちろん、生方と尚哉はそれを覚えており
難波:男の子が一人消えてしまいました。
谷村:近くに住む人が消えちゃった。
という場面が再現される。
やってはいけないことをやる。
つまり禁忌を破った人間がいて、そのあと人が消える。
なにか関係があるかも知れないね。
高槻の研究室にて
難波と谷村がやってきて、それぞれ神隠しが起こった原因と噂される
禁忌があった様子をそれぞれスマホの画像で見せにくる。
難波は御神木のしめ縄が切られたもの、谷村は神社の賽銭箱に落書きがされたものだ。
この行為の犯人は、まだ分かっていないといい。
生方は「普通に考えれば、悪いことをした人にバチが当たるんだけど・・・。」というが
難波に言わせれば「居なくなった中学生は、悪ふざけをするようなタイプではなくて真面目な子だったらしい。」
とのことで、谷村も「こういうことをしそうにない人」が行方不明になったというのだ。
高槻は、寺内がこれまで話していたことを思い出していた。
★神隠し・・・最近も起こってるみたいですね。
★人間を超えた存在として、迷う人たちを救ったり、道を踏み外した人を罰したりしなきゃ。
★僕はもう始めていますよ、高槻先生。
★一緒にやりましょう。
何を・・・。
高槻の独り言に、驚く一同。
あぁ、ごめん。もう少し考えさせて。
立ち上がり、改めて自分のデスクの前に座り直す。
考え込む高槻の顔に、不安になる生方。
佐々倉古書店
2階にて、生方は佐々倉健司(警視庁捜査一課の刑事・高槻の幼なじみ) - 吉沢悠
と尚哉に、天狗について調べたことを報告する。
天狗とは何か
生方は「天狗絵巻」という本を取り出す。
天狗という言葉は、中国では「凶事」つまり悪いことが起きる前兆である「流れ星」を指す言葉だったと言われていた。
それが日本に伝わり、山で修業をする「山伏」の姿と結びついて、現在の天狗の姿になったと言われている。
この姿の天狗は自由に空を飛べると言われていた。
(尚哉「だから、背中に翼がある。」)
天狗は、京都の鞍馬寺・高尾山の薬王院では、祀られる信仰の対象ではあるが
昔の人たちは、起こる多くの怪異を「天狗の仕業」と考えていた。
「天狗攫い(てんぐさらい)」は、その中でも有名だという。
生方は、高槻が心配だと言う。
寺内が現れてから、高槻は調子を乱されているというのだ。
寺内の隠れ家
ベッドに座り、写真を眺める寺内。
元の場所にそれを置いて、どこかへ出ていく。
写真には、泥だらけの子どもが二人楽しげに写っていた。
青和大学キャンパスにて
尚哉が歩いていると、向こうから遠山宏孝(千葉県警広報官・尚哉と同じ怪異を体験している)-今井朋彦
が歩いてくる。
尚哉が駆け寄って挨拶をする。
久しぶりに会う二人。時期は違うとはいえ、あの青い提灯の祭りを体験した二人だ。
尚哉がそれなりに大学生活を楽しんでいることを、彼に伝える。
声の歪み無くその話が聴けて、嬉しそうにする遠山。
自分と同じ能力を持つ尚哉が、大学生活を楽しく暮らせていることに
気にかけてはいたものの、驚いているようだ。
今日は高槻に用事があるといい、尚哉を置いて研究室へ向かっていった。
研究室で向かいあって座る二人
遠山が取り出したのは、とある場所をプリントアウトしたものだった。
八幡の藪知らず・・・有名な禁足地ですね。
昔から立ち入ると神隠しに遭うと言われいて、現在でもこのように柵が設けられている。
今日は、この場所に関して教えていただくために来ました。
八幡の藪知らずの由来は諸説ありますが、平将門本人の墓であるとかその家臣の墓だと言う説が有名です。
でもこの程度のことは御存じなんでしょ。
わざわざこちらにいらしたのは、なぜなんです?
遠山は、ぬいぐるみを抱いた少女の写真を高槻の前に置いて見せた。
長谷部千里(行方不明になった4歳の女の子)永尾柚乃 ちゃんといって
4歳の女の子です。
この子が現在、行方不明になっています。
両親の説明によると、家族3人で買い物からアパートに帰った際
千里は、一人家に上がらずアパートの前の子ども用プールで水遊びを始めた。
母親たちは先に家に上がったが、母が千里を呼びに行くと
その場所にもう千里はいなかったらしい。
近所の人が警察に通報し、現在マスコミと報道協定を結び警察が行方を捜しているそうだ。
子どもがいなくなったことと、八幡の藪知らずがどう関係するのかを高槻が尋ねると
あくまでネットの噂ですが・・・。
そう言って、遠山はタブレットを手に立ち上がり
高槻にある動画を見せる。
タイトルは、「神隠しの掟」
どこかの屋上で撮影されたものらしく、オレンジ色のライトに照らされ
フードを被った人物が、加工された音声で喋っている。
もし女の子がいなくなったら、八幡の藪知らずに入ったことと関係している。
禁忌を犯したら神隠しに遭う、それが掟だ。
(そう言って、画面を見ている相手に向かって右手で指をさす。)
遠山さんには、この声が歪まずに聞こえるわけですね。
えぇ、この男は嘘をついていない。
これは本当に神隠しだと思いますか?
今はまだ分かりません。
でも・・・必ず纏めて解決します。
小春が最後に目撃された橋の上
高槻が歩いてくる。
小春が立っていた場所はこの辺りだろうか。
最後に目撃したと言う女性に、話を聞くことができた。
小春は、橋の真ん中でうつむいていたのではなく
橋の向こう「たもと」の辺りに立っていたという。
小春の家族は、川に飛び込んだのではないかと心配していたことを伝えると
落ち込んだ様子で、うつむいていたことは本当で(目が合ったら話しかけようと思ったが)
小春に話しかけてはおらず、背中越しに見ただけだから・・・というのだ。
高槻が似たようなポーズをとり
こんな感じですか?というと、そぅ、そんなカンジと答えた。
果たして、そのポーズとは
橋のたもとで、持っている小箱を見つめる(エア)ポーズだった。
高槻の脳裏には、神社から持ち出された箱を持った小春がいた。
緊張した様子で、そっと箱を開ける小春。
研究室に高槻・生方・健司・尚哉の4人
開けてはいけない箱を開けたのは、
栗本小春(青和大学の食堂の栄養士・『百物語』の参加者) - 田辺桃子 さんだ。
おそらく、他の失踪者も自分で禁忌を犯したんだと思う。
尚哉:なんのためにそんなことを
健司:何のためかは知らないが、関係あるかも知れないことならある。
どういうこと?
健司:少し前からいくつか失踪事件が起きていて、そのうちの何人かが鞍馬で見つかってる。
そこが気になって、ネットで調べたらこんなものを見つけた。
例の「Yamoo質問箱」の書き込みだ。
【質問】失踪した人は、やってはいけないことをやったってほんとですか?
【回答】なし
生方:でも、失踪しても戻ってくるって、禁忌を犯した罰としては中途半端じゃありませんか?
もちろん、発見された場所が彰良先生と同じ鞍馬だっていうのは、気になりますけど。
高槻:(へっ?)瑠衣子くん、僕が鞍馬で見つかったって、どうして知ってるの?
生方:たまたま新聞記事で見つけて・・・。
(声が歪みまくってて、至近距離でキツイ尚哉。)
高槻:たまたま?
生方:(てへっ、焦)
健司:俺が教えた。
高槻:健ちゃんが・・・。
健司:寺内一のことがどうも気になってな。怪異がどうのこうのいうのは、俺にはわかんないから。
協力してもらってる。
高槻:深町君も一緒・・・?
尚哉:(うなずく)
そっか、僕のためなんだね。(3人まとめてハグッ!)
ありがとっ!
尚哉:行きます、すいません。
ちょっとぉ、逃がさないよ。(後ろから抱きつく)
あっ、ちょっとちょっと、先生。←でも、そんなに嫌がってないっす。慣れか、慣れなのかっ!
寺内の隠れ家で
テレビのニュース速報が流れる。
長谷部千里ちゃん行方不明のニュースだ。
目撃者情報をテレビで募集しており、画面の左上には連絡先が表記されている。
それは、高槻の研究室でも流れており、健司はこれで目撃情報が出てくるかなと
言っている。高槻はそれを見ている。
寺内は、千葉県警へ目撃者情報をスマホからかけている。
僕、誘拐された女の子をバスで見ました。
えぇ、もちろん。いくらでも捜査に協力します。
*************************
研究室では、4人があの動画「神隠しの掟」を見ている。
生方は、この人物が寺内に似ているという。
おそらく、繋がっているんだよ。
すべてがね。
森の中
栗本小春と思われる女性が歩いている。
長谷部千里ちゃんが行方不明のときの服装のまま、一緒に歩いている。
二人は手をつなぎ互いに見つめ合って微笑み、また歩いていく。
エンディング
なんで、行方不明をわざわざ誘拐って言うんでしょうね、徹平ちゃん。
そして、来週も殿きまーすっ!
304号室 文学部 史学科 民俗学考古学専攻 高槻 彰良 の研究室
高槻彰良(青和大学文学部の准教授)伊野尾 慧
深町尚哉(青和大学文学部の学生)神宮寺 勇太
生方瑠衣子(高槻の研究室に所属する大学院生)岡田結実
のもとへ、百物語の実験に参加したのちに失踪したとされる
栗本小春(青和大学の食堂の栄養士・『百物語』の参加者) - 田辺桃子
の夫 栗本幹夫(小春の夫)菅原健 が訪ねてきた。
百物語実験当日の、彼女の様子が聴きたいという。
特に変わった様子は見られなかったという高槻に、幹夫は家族の写真を取り出し
ならどうしていなくなるんです。うちには4歳と1歳になる娘もいるんですよ。
近所の人にも羨ましがられるような家族なんです。
そう言って、失踪当日の様子を話し始めた。
その日の朝も、いつも通りに幹夫のお弁当を用意し、玄関にそのお弁当を置いて
泣き出した子供の様子を見に行ったはず。出かけようとしてまた子供が泣き出したので
小春を読んだが、返事がない。子供のいる部屋に行ったが小春の姿はなく
靴も履かずに姿を消してしまった。
警察にも話したが、家出だと言って取り合ってくれず、どう考えても「神隠し」だと言うのだ。
不思議な出来事(怪異)について調べている高槻に、なんとか小春を探して欲しいと頼み込む。
青和大学の学食での聞き込み
生方と尚哉が、小春の勤務状況を確認する。
同僚によれば、小春は真面目で仕事熱心であり、産休に入ったときは
同僚の手が足りなくなるほど小春の仕事ぶりは良かったといい
悩んだり困っているような様子もなく、幹夫との仲も良くてとても幸せそうだったと言うのだ。
高槻の研究室
百物語の様子を葉山(青和大学文学部1年生・『百物語』の主催者) - 萩原利久
が動画撮影しており、それを確認しながら高槻は、葉山に小春が参加を申し出てきた
経緯を尋ねた。
葉山は、小春がどこから百物語の話を聞いてきたのかは知らず、
百物語をやるんでしょ、私も参加させて欲しいんだけど、学生じゃなくてもいいんだよね?
そう言って、学食で小春から声をかけられ
あ、はい。一人4つくらい怪談話してもらうつもりなんで・・・。
そう答えると
4つ・・・。分かった、あと3つ準備しておく。
と言ったそうだ。
ってことは、1つは話したい話があったわけだ。
さぁ、そこまで考えなかったです。
そう答える葉山。
ドアをノックする音がして、黒木(高槻の父の秘書) - 夙川アトム
が入ってくる。
高槻が、葉山に退室を促して研究室から彼が出ていく。
何の用ですか。
寺内一(謎のフリーカメラマン)-小池徹平 という人物が、
奥様:高槻清花(高槻の母)-高橋ひとみ に会いに来ました。
どういう訳か、彰良さんの子ども時代のことをよく知っていて
奥様は信用なさったようです。
わざわざそれを言いに来たってことは、何か父の気に障るようなことが起きたんだろう。
「彰良さんは、また必ず天狗様に戻る。」
寺内がこう言ったことで、奥様は大喜びで・・・。
お父上からの伝言です。
「これは寺内に弱みを見せたお前の責任だ、なんとかしろ。」
研究室から帰って行く黒木を見かけた尚哉。
研究室にいる高槻に声をかけたが、なかなか返事は返って来なかった。
オープニング
高槻の実家へと向かう、高槻と尚哉。
彼の父親は、高槻が天狗の子どもだということを蒸し返されたくない
自分の会社に変なイメージが付くからだと、高槻は言う。
実家に帰るのが何年振りかを尚哉が尋ねる。
あの家にいるのが限界になって、15でイギリスに行って
2年後に戻ったときに少し寄った、それ以来。
歩き続けると、やけに広い庭のある一軒家というには大きすぎる屋敷の前に
やってきた。
神奈川の自分の実家と比べてはいけない大きさに、尚哉がひいている。
お金だけはある家だからね。
電動で門が開くと、大きな二枚扉の玄関ドアを押し開けて
清花が出てくる。
彰良、お帰り。さぁ、入って。
玄関に並べられた女性ものの靴は、8足程だろうか
皆さんお待ちなのよ、あなたに相談したいことが沢山あるって。
高槻は、うんざりした顔でその靴を眺めている。
奥に進むと、霧島夫人(清花の知人) - 小林美江 をはじめとした女性たちが
口々に高槻を天狗様と呼んで待ちわびていた。
高槻の思い出
清花:ねぇ、霧島さんはどうすればいいと思う。
高槻(幼少期:高橋來):わからない。
清花:そんなはずないわ、あなたは特別な存在なんだから。
霧島夫人は2つの会社のカタログを持ち出し、どちらに投資すべきかを
天狗様に聴きたいというのだ。
うんざりした様子の高槻は、カタログを見ずに片方の会社を指さす。
大喜びする霧島夫人たち。
************************
ねぇ、寺内さんが「あなたが天狗様に戻る」って言ってくれて
あたしたちどんなに嬉しかったか。
母親たちの前に歩み出る高槻。
天狗様なんて貴女たちの幻想だ。
もう二度と、僕は付き合うつもりはない。
奥のサロン室から出て、ダイニングを通り抜け
二階へと向かう高槻。
その後ろを尚哉がついていく。
階段の途中には、家族それぞれの写真が飾られている。
清花は昔、バレリーナだったのだろうか。
衣装を着て踊る姿をとらえた写真がある。
男性の写真、数枚続いているところを見ると、高槻の父親のようだ。
親族の男性のような写真もある。
あの日、僕はいつもどおり1階にいる両親に「おやすみ」と言って
今みたいにこの階段を上って来た。
(パジャマ姿の高槻少年が部屋に入っていく)
12歳の僕はここで寝ていた、ベッドの位置も変わってない。
夜遅く、母親が寝る前に様子を見に来たらしい。
(清花が部屋に入ると、高槻少年の姿が消えていた。名前を呼んで探す母。)
でも、僕はいなかった。
1階には両親がいたからね、不審者が気づかれずに1階から侵入するのは無理だ。
(レースカーテンを開け、上げ下げ窓を持ち上げて開く。)
この窓から入って、12歳の子どもを抱いて降りたとも考えにくい。
第一、窓には鍵が掛かっていたからね。
つまり、僕は急に消えたわけだ。
これが僕の失踪事件。
いや、神隠しなのかな。
悲しそうに目を伏せる高槻に、尚哉は
俺は、先生が戻って来られたんだから、どっちでもいいです。
そう答えた。
身近な人に、ただそう言って欲しかった高槻。
尚哉を抱きしめ
深町君は、本当に優しいね。
そう告げる。
ん、ん、ん、抱きしめるの強いし、長くないか?
そう気づいた尚哉。
あ、先生っ。
んんっ?
長いです。
へぇっ?(わざと強めに抱き締め直す。)
ハグの時間ちょっと長いです。
へぇぇっ?(更に抱きつく)
いつもの悪い癖出てますって。
愛情表現だよ、くわぁぁぁ。(これは または ほらぁぁ と言っているらしい。)
いや、分かりますけど、もういいです。
尚哉、抱きつかれたままで、高槻を「どうどう」と大型犬をなだめるようにポンポンする。
でも右手は背中に回ってるぞっ!←おっさん的ツッコミ。
同じツッコミをしていたかどうかは別として、門の外から寺内がそれを見ている。(無料で)
高槻の家を後にする寺内。
坂道をすれ違う家族には目もくれない。
すると、寺内とぶつかった小さな少女がいた。
「ごめんなさい。」とおかっぱ頭を抱えて謝る少女。(3~4歳くらい)
寺内はかがんで少女と目線の高さを合わせる。
栗本家で
小春の両親
杉原邦明(小春の父)朝倉伸二
杉原聡子(小春の母)宮地雅子
が、訪ねてきた高槻・生方・尚哉の3人を出迎える。
幹夫は、仕事上のトラブルで不在にしているようだ。
子ども2人の世話は、小春の両親に頼んでいるらしい。
小春に関する新しい情報があるそうで、3人は呼ばれたのだ。
小春を最後に見たという人が現れ、その人の話では
橋の上で落ち込んだ様子で、小春はうなだれていたという。
最悪の事態も考えた方がいいかもしれません。という父親。
(高槻は、小春が百物語を話している様子を思い出している。)
両親に「お二人は岐阜県には縁(ゆかり)がありますか?」と尋ねる高槻。
父親:ありませんが・・・。
母親:ありません。
(尚哉、母親の声が歪んでいることに気づく。それを見る高槻。)
母親:先生、お願いがあります。小春の上の娘の「えりな」が2階にいます。
連れてきますので、「小春は鬼にさらわれた」と言っていただけないでしょうか。
父親:おぉぃっ!
どういうことかと高槻が尋ねると、保育園のお友達のお母さんたちが
「えりなちゃんのママは、子どもを置いていなくなった。」と話しているのを
聞いたらしく、自分が母親に捨てられたと感じるのは、可哀想なので
せめて鬼にさらわれたと言って欲しいというのだ。
父親は、そんなことはまやかしだ。子供に嘘をついてどうする。と母親を諭すが
母親は孫が不憫で仕方ないのだ。
鬼にさらわれたなんて、そんなことあるわけがないだろ!と、父親はそれを否定するのだった。
高槻の脳裏には、発見された当時の背中に傷を負いベッドにうつ伏せになっている
高槻少年の姿が思い出されている。当人に発見当時の記憶がないため、父と母が
彰良に起こった出来事をどう本人に説明するかでいさかいが起きている。
非現実に逃げ込む母親と、現実的な理由をつける父親。
言い争いになりそうな小春の両親に、昔を思い出していた。
まだ何かあったわけじゃないですから。
話に割って入る生方。尚哉も話を切り替えるつもりか、他に情報や心当たりがないかを
両親に聞いた。
父親:ありません。
母親:どうしているのか、見当もつかない。
声の歪みに尚哉が反応し、高槻はそれを察する。
尚哉に小春の行き先に心当たりがないか聞かれて
母親は、ないです。と答えたのだった。
栗本の家を後にする3人
先生、岐阜県に関する質問は何だったんですか?
生方に聞かれて、高槻は
百物語のときに、小春さんが話した話の原形は「今昔物語に載っている岐阜県の紀遠助(きのとおすけ)」の話だと思うんだ。
そう説明する。
生方は、紀遠助の文字をノートに書いて確認する。
百物語を主催した葉山によると、小春は百物語に参加を申し込んだとき
話す内容を一つは既に決めていたようで、他の話はトイレの花子さんのような
話と、音楽室の怪異、小学校の体育館裏に幽霊が出る話といった
所謂「学校の怪談」のような本を1冊読めば話せるようなありきたりのものだった。
そうすると、あの箱の話だけ特別で、たぶん小春はあの話をするために
百物語に参加したのではないかと考えられるのだ。
生方は、図書館で紀遠助の話について調べるといい
高槻たちは、小春が最後に目撃された橋に行ってみるということで
二手に分かれて行動することにした。
橋の上で(周りは緑が多く、郊外の様子)
いくつか嘘があったよね。
はい。小春さんの行き先の心当たりを聞いたとき、邦明さんは「ない」って答えて
聡子さんは、「どうしているのか、見当もつかない。」
その言葉が嘘ってことは、普通に考えると「見当がついている。」
でもその後、俺がもう一回心当たりについて聞いたときは(「ないです。」と答え)
声は歪まなかった。
難題だね。
あと先生が、「岐阜に縁があるか?」って聞いたときも
「ありません。」って歪んだんですけど、わざわざ嘘をつくほどのことでもないし・・・。
謎だらけだね。
高槻の脳裏には、(記憶ではないが)思いつめた様子で橋の上に佇む小春の姿がある。
寺内の隠れ家
壁一面にコラージュされた高槻の写真を歩いて眺めながら、童謡「かごめかごめ」を歌う寺内。
歌いながらポイントポイントで高槻の写真に写り込む気になる人物を探している。
「後ろの正面だぁれ」のとき、彼が強く掌を置いた場所には尚哉の写った写真があった。
佐々倉古書店の2階にて
調べ物をしている生方との待ち合わせをした尚哉と健司(警視庁捜査一課の刑事・高槻の幼なじみ) - 吉沢悠
尚哉から「寺内が百物語の会場に現れ、天狗さらいの話をした。」と聞いた健司は、
生方が、その話を高槻に関係があると気づいたのではないかと言うのだ。
生方:いいえ。
尚哉の様子で、それが嘘であることを確かめた健司は、
俺たちは、寺内が彰良に何かするんじゃないかって心配なんだ。
彰良は自分でなんとかしようとするんだろうが、これだけは他のことと違って
放っておけない。寺内一が何者で、本当に彰良と同じ目に逢ったのか調べたい。
彰良先生と同じ目って・・・。
まず、読んでくれ。
そう言って健司は、自分の捜査ノートを生方の目の前に置いた。
表紙には、
左京区鞍馬小学生行方不明事案
事件発生 平成10年8月2日
刑事部 捜査第一課 佐々倉
と書かれている。
2階に生方を残し、健司と尚哉は1階のカフェに降りる。
コーヒーを落とす健司に、「資料に青い目のこと」が書いてあるかを尋ねる尚哉。
資料にそのことは書いていないという健司。
ノートには、「誘拐されたこと」「そのとき傷ができたこと」「鳥が怖いのも完全記憶もそれからだということ」
あとは「天狗の子のこと」についてだけだという。
2階に残った生方は、健司の捜査ノートに貼り付けられた当時の新聞記事を見ている。
捜査ノートであるため、健司が入手した事件写真も付いており
発見されたときの岩に横たわる高槻の様子、
脱がされたパジャマ生地の背中に、傷の形そのままに赤黒い血液が付着しているものがある。
泣きながらそれを見る生方。
百物語の話をしたときの、雨に濡れた高槻の背中の傷を思い出す。
あの傷は生まれつきではなく、子どもの頃何者かによって彼が傷つけられたものなのだ。
本当ならあの傷を事情を知らない他人に見られるのは、どんなにか嫌だったであろう。
それを気にも留めず、自分を心配して優しく接してくれていたのだと。
ごめん、書きながらオラも涙が出てます。
捜査ノートを手に、1階に降りてきた生方。
目を通しました、私はどうすれば・・・。
先ずは鞍馬と天狗について教えて欲しい。
そう告げる健司。
生方は捜査ノートを持つ手を固く握りしめ、協力に同意するのだった。
青和大学キャンパスにて
歩いている尚哉のイヤホンが、後ろから片方引っ張られる。
振り向くと、そこには寺内がいた。
何か用ですか。(もう片方は自分で外す)
君、いつもイヤホンしてるね。
別にいいでしょ。
歩き去ろうとする尚哉に寺内が話しかける。
深町尚哉君、実家は横浜で一人っ子なのに大学入学以来
殆ど実家に戻っていない。
(尚哉の表情が明らかに不機嫌になる。)
余り関係が良くないのかな。
(尚哉、振り返る。)
サークルの所属なし、同級生に誘われても飲み会も遊びも断る。
ただ、人付き合いが苦手なだけです。
僕には完全記憶能力がある。(尚哉の前に歩み出る)
君が時々、顔をしかめるのに気づかなかったと思う?
君には・・・嘘が嫌な音に聞こえる。とか?
言葉は発しないものの、尚哉の反応を見て
寺内は嬉しそうに音のない拍手をする。
すばらしい。
その能力で僕を手伝ってくれないか。
お断りします。
尚哉はバカバカしいとばかりに、背を向けて歩き去ろうとする。
君が手伝ってくれたら、高槻先生を諦める・・・って言ったら。
本当ですか。
半身を後ろに向けて、尚哉は寺内を見る。
約束する。
もう高槻先生には関わらない。
本当・・・なんですね。
質問は一回しかしない。
どう・・・僕を手伝ってくれる?
俺は・・・
深町くんっ!
二人が話すのを見かけた高槻が、こちらに駆け寄って来ようとする。
高槻先生。
それを見た寺内は、高槻から見えないよう
彼に背を向けて尚哉にこう告げるのだった。
お母さんに会ったよ。
えっ?
心から君に逢いたいって!
耳元でこんなに悪意にまみれた嘘を聞かされた尚哉。
堪らず両耳を押さえ、膝から崩れ落ちる。
寺内は、何事もなかったかのように彼に背を向けて歩き出す。
ただならぬ様子に、駆け寄って尚哉を抱きとめる高槻。
何を話した。
内緒です。
不快な顔をした高槻が面白いのか、いたずらっぽく笑い
右手の人差し指を口の前に持ってくる。
あ、僕この大学で臨時の職員として働くことになったんで
どうぞよろしく。
そう言って二人を残し、身分証のついた紐を首にかけ
寺内は歩き去って行った。
エンディング
大丈夫でしょうか、怪演が気持ちいい徹平ちゃん。
彼のもとにヒットマンが来ないことを祈りましょう、ヌーンヌーンヌーンヌーンヌーンヌーン(-人-)
予告によりますと次週は、しららさま大好きな、あの殿様の登場です。
高槻の研究室
高槻と尚哉(青和大学文学部の学生)神宮寺 勇太が
背中合わせにお互いを背負って柔軟運動をしている。
そこへ、ドアをノックして学生が入ってきた。
葉山(青和大学文学部1年生・『百物語』の主催者) - 萩原利久 だ。
彼が今年の民族学Ⅱを受講していることを高槻が記憶していると
葉山は喜ぶ。(生方瑠衣子(高槻の研究室に所属する大学院生) - 岡田結実 が
高槻が一度見たものを忘れないことを説明する。)
文学部1年の葉山と言います。
実は、この前の講義に出てきた「百物語」を実際にやってみたくて
それで、先生に責任者になっていただけないかなぁ・・・。
この話、もう既に飛びつく気満々の微笑みの高槻
素晴らしい。(あ、男の子でも手握るのね、両手で。)
是非やろうっ!
そこへ、常識担当の尚哉が歩み寄る。
先生、葉山君が引いてます。
(ハッ)ごめん。
参加者は?百人集めるの?
興味が出てきたのか、生方まで近寄ってくる。
葉山:いぇ、一人いくつかずつ話してもらって
最終的に百話にしたいと思ってます。
ハイッ、私も参加したいです。(生方、挙手)
院生の生方瑠衣子、参加者に加えて。
私の専門は「結婚にまつわる話」だから、「女の恨み」は得意よっ!
葉山:じゃあ、先輩は是非百話目を話してください。
ハイッ!(高槻、挙手)←いや、アンタもかいっ!
准教授の高槻彰良、僕も参加します。
参加者に加えてねっ!
葉山:もちろん。
手を挙げる両名を、引き気味に見ていた尚哉。
だが、高槻にマリオネットの如く腕を持ち上げられ、巻き込まれて参加することになる。
百物語の会場(古い体育館のような場所)
出入り口前の長机で、参加希望者の受付をしている。
参加者は学生たちがほとんどだが、
尚哉と受付順を譲り合っていた女性
栗本小春(青和大学の食堂の栄養士・『百物語』の参加者) - 田辺桃子
のような大学スタッフも参加しているようだ。
難波要一(尚哉の同級生) - 須賀健太
谷村愛美(尚哉の同級生) - 吉田あかり
も参加しに来ている。
尚哉と違い学内でコミュ力を発揮している難波は、栗本を知っているらしい。
会場に入ると、既に高槻と生方は先に到着していた。
受付をしていた葉山が中に戻って来た。
(受付はまだ1人が来ていないらしい。)
輪になって用意された席の前には、長机が置かれ
一つの机を2~3人で使うようだ。
最初の1話目は高槻が担当し、最終話を生方が担当するため
2人は隣り合って席に座ることにした。
尚哉の場所は3人掛けの席、隣は遅れている人の席で、一つ空けて栗本が座っている。
丁度、高槻と生方の席の対面した位置。時計の文字盤で言う12時と6時の方向。
難波と谷村は、2時辺りの方向。
今回の参加者は、25名。一人4話ずつ話すことになっていると
ロウソクを点けながら、葉山が軽い段取りの説明を始める。
葉山:最初のお話は高槻先生から、お願いします。
百物語の由来から話すことにするね。
百物語をするときは、こんな風に100の明かりが必要となります。
江戸時代に書かれた『伽婢子』(おとぎぼうこ)の中の一遍、
「怪異語れば怪異至る」に、百物語のやり方が記されています。
月の暗い夜に青い紙を貼り、立てた行燈に百筋の燈芯を灯し
怪談を一つ語り終える度に、燈芯を一つ抜いていく。
なぜ、百物語にはやり方が存在するのか、それは
昔より人の云ひ伝へし 恐ろしき事、怪しきことを集め
百話(ひゃくものがたり)をすれば
必ず 恐ろしき事、怪しき事
有りと云へり
つまり、百物語をすれば
必ず恐ろしい事、怪しい事が起こる。
そう、百物語は百の怪談を以て(もって)
怪異を招く儀式だからです。
今日、最後の明かりが消えたとき
何か起こるかも知れませんね。
そう言って、高槻が1本目のロウソクを吹き消そうとしたとき
遅れてきた1名が扉を開けて入ってきた。
それは、あの 寺内一(謎のフリーカメラマン)-小池徹平 だったのだ。
葉山に促され、空いている席・・・そう、尚哉の隣の席へとやってくる。
改めて高槻は、1本目のロウソクの炎を吹き消すのだった。
オープニング
佐々倉古書店
健司(警視庁捜査一課の刑事・高槻の幼なじみ) - 吉沢悠 が
新聞記事を切り抜いている。
奥多摩湖にいたとき、ニュース速報で見た埼玉県の行方不明者
橋詰誠が発見されたという内容の記事だ。
黙々と記事を切り抜いている息子を見て
暇なの? と コーヒーを運んできた花江(健司の母) - 和泉ちぬ
が声を掛ける。
暇なワケねーだろ。
花江が散らかっていると思った新聞記事を、健司は整理している
のだという。そっちこそ客がいなくて暇なら、手伝ってくれと向こう側にある
新聞の束を見るようにと健司が頼む。
人が失踪したとか、行方不明だとか、反対に発見されたという記事を
小さくてもいいから探して欲しい、そう言うのだ。
行方不明って、彰良ちゃんと関係ある?
母親の問いに、まだ確信のない健司は
・・・かもな。
そう答えるだけだった。
百物語の会場で
栗本が、子どもの頃聞いたという話を喋り始める。
昔、ある男が京の都で仕事を終えて故郷に向かっていると
男は道で見知らぬ女から声をかけられた。
「この箱を持って行って、私の知り合いに渡して欲しい。」
「でも、絶対に箱を開けないでください。」と女が言った。
男は引き受けたあと、つい好奇心で箱の中身を見てしまった。
箱の中には、くり貫かれた目玉が入っており
気味が悪くなった男は、さっさと箱を渡してしまおうと
女に教えられた橋のたもとで、女の知り合いを待っていたところ
身なりの綺麗な女がやってきて、箱を一目見たとたんにこう言った。
「箱を開けましたね。」
男は開けていないと言い張ったが、女は真っ黒なバケモノに姿を変え
男を川の中へ引きずり込んだ。
それから、男の姿を見た人はいないという。
栗本がロウソクを吹き消すと、次に寺内が話を始めた。
次は僕ですね。
僕の話は、河童にキュウリを盗られた話です。(難波噴き出す)
他の学生は笑い出すが、静かに寺内を見据える高槻を見て
隣にいた生方は、少し心配そうな顔をする。
佐々倉古書店
健司が、「行方不明者の顔写真」「新聞記事」を地図上に貼り始める。
男女、年齢、地域、職業も様々だ。
ピンクの付箋は「行方不明」、水色の付箋は「発見・保護」らしいが
鞍馬で橋詰を含む男女7名ほどが見つかっていた。
百物語の会場
難波と谷村は、4本目のロウソクに差し掛かっていた。
二人とも偶然、行方不明者の話。
難波は、親戚の田舎でしめ縄が切られる騒ぎがあり、その罰が当たったのではという
行方不明者が出た話。
谷村は、祖母の田舎で賽銭箱に落書きをした者がおり、その後行方不明者が出た
という話だった。
寺内:まるで、神隠しですね。
わざとらしい言い回しの寺内に、それを見据える高槻。
その隣で、交互に彼らの顔を見る尚哉。
**************************
その頃、佐々倉古書店の健司はパソコンである言葉を検索していた。
【検索ワード】失踪者 禁忌
Yamoo掲示板
失踪した人は、やってはいけないことをやったってほんとですか?
回答数:なし
**************************
最後に天狗の話をします。
(驚きの表情で、寺内を見る尚哉)
昔、天狗は人を・・・特に子供をさらうと信じられていました。
20数年前のことです。
あるところに、大きなお屋敷に住む男の子がいました。
その子が行方不明になったとき、誰もが身代金目的の誘拐を疑いました。
ところが、犯人からの連絡は何日待っても来なかったのです。
しばらくして、男の子は自宅から随分離れた京都の鞍馬で発見されました。
男の子には、いなくなっていた期間の記憶が無かったそうです。
どうやって鞍馬まで移動したのかも分らない
(生方は心配そうに高槻を見ている。)
昔話の「天狗さらい」と同じでした。
男の子の母親は、戻って来た我が子が天狗の子になったと言って
自分の友人を集めて、男の子を拝み始めました。
母親はお金持ちでしたから、当然そのお友達もお金持ち
男の子は、お金持ちたちの救い主になったそうです。
(子どもの頃の高槻(幼少期:高橋來)や清花(高槻の母)-高橋ひとみが登場し、
誘拐されるまで~その後のシーンが流れる。)
しばらくして、天狗様は人に会わなくなり
やがて外国に行ったという噂でした。
天狗様は今どうしているかは、知りません。
寺内の声が歪み、尚哉は顔を背ける。
こんな話を人の前でするなんて、尚哉の顔には怒りの表情があらわれ
寺内の横顔を睨みつける。
ロウソクを吹き消そうとして止める寺内。
あぁ、大事なことを話すのを忘れていました。
その男の子が天狗になった証拠が、ちゃんとあるんです。
男の子が見つかった時、背中に大きく翼を切り取った傷跡があったんです。
寺内の話に、
「翼だって。」「マジで怖いんだけど。」
難波たち学生が少しざわつく。
ロウソクを吹き消し、寺内がまた勝ち誇った顔をする。
はいっ!
その時何故か、最後に話すはずの生方が手を挙げる。
順番が変わるけど、私の話も今の話と関係あるから
先に話していいかしら。
席を立ち上がって歩き出し、尚哉と席を交換する。
葉山:いぃや、でも先輩は最後じゃないと・・・。
僕の話とどう関係があるのかな。
興味ありますね。
じゃぁ、話します。
これは、私の友人が体験した話です。
(尚哉が顔を背ける様子を、高槻がチラリと見る。)
彼女は学生です。
ちょうど大学院に進もうとしていて、とても進路に悩んでいました。
文系の大学院を出ると、なかなか就職先が見つからないと聞いていたから。
そして彼女が悩んでいたのは、もうひとつ理由があります。
指導教官のことです。
その人は、とても親切で指導熱心だと評判でした。
でも皆が褒めるほど、学生は簡単に信じていいか分からなくなっていたんです。
ある日、講演会を聴きに行き教官と鉢合わせました。
成行きで一緒に帰ることになったのですが、彼が言いました。
折角だから、この近くにある遺跡を一緒に見に行かない?
ところが、だいぶ歩いて来たところで雨が降ってきました。
その日学生は、白いブラウスを着ていて雨で濡れて下着が透けてしまいました。
それに気づいた教官は
(着ていたスーツの上着を、自分にかけてくれた。)
この教官は、いい人なのかも。
と、思い始めたとき学生はあるものを見て
恐ろしくて固まり始めました。
教官も濡れていて、シャツが肌に貼り付いていました。
そして、透けた部分越しに
大きな・・・翼を切り取ったような跡が
(学生たちが「同じ人じゃね?」ざわつき始める。尚哉は高槻の方を見る。)
学生は、見てはいけないものを見た気がして、身を引きました。
運よくタクシーが通りがかったので、すぐにでも帰ろうと手を挙げましたが
教官が「あれはダメだ。」と言ってタクシーを行かせてしまいました。
学生は、「傷に気づいたことで、教官を怒らせたのではないか
ひょっとしたら、このまま帰してもらえないのではないか。」と
恐ろしくなりました。(教官はスマホでどこかに電話をしている。)
逃げ出そうとしたとき(教官は道に出て、タクシーを誘導する。)
彼女の手をタクシーまで引き、すみません、暖房を強くしてもらえますか。
そう言って運転手に頼み、学生に「これ」タクシー代を渡し
「お金は・・・」という学生に「気にしないで」と言ってタクシーを見送った。
あとで気づきましたが、運転手は女性だったのです。
教官は、学生のブラウスが透けていたので、女性のタクシーの運転手を探してくれていたのでした。
(教官はタクシーに手を振っている。)
学生は、教官の優しさに気づきました。
そして思ったのです。
あの背中の傷は、本当に翼を切り落とした痕なのかも知れない。
でも、だとしたらあの人は天使なんだなって。
これまで、険しい顔だった高槻の表情に、穏やかな微笑みが戻り始める。
生方がロウソクを吹き消すと、隣にいた寺内の表情は
少しだけ流れを変えられたといった様相になった。
これにより、最後に話すこととなった尚哉。
という訳で、コックリさんは本当はいませんでした。←(ぇ?
深町、そこは嘘でも居たって言わないと怪談にならないだろ!
難波に突っ込まれて、「んぁぁ~」と返事をする尚哉。
高槻は、笑いを堪えてそれを見ている。
いいから、早く火を消して。
さぁ、何が起こるかな。
尚哉がロウソクの明かりを吹き消す。
・・・何も起こらない。
生方は立ち上がり、出口の扉へと向かう。
じゃ、これで百物語はお開きネ!
そう言って、閉ざされていた扉を開く。
外はもう夕暮れの時刻だが、暗い場所から見ると眩しいものだ。
生方の指示で、会場の後片付けを皆が手伝う。
寺内は何か自分のペースを乱されたようで、面白くないと言った表情だ。
出口で、栗本と別れた難波と谷村
難波が栗本を「小春さん」と呼んだので、谷村と軽く揉めながら去っていく。
会場に残っているのは、高槻たち3人と葉山。
葉山:今日はありがとうございました。
もう大丈夫ですので、先にお帰りください。
尚哉:え、何か手伝わなくていいの?
葉山:えぇ。
深町君、葉山君は僕たちに居て欲しくないんだよ。
尚哉:えっ?
瑠衣子君が予定とは違う順番で話をすると行ったとき、君は慌てていたよね。
君は、瑠衣子君が最後のロウソクを吹き消した後に
何か怪異を演出していたんじゃないかな。
瑠衣子君は「女の恨みの話をする」と予告していたから
例えば「すすり泣きの録音を流す」とかかな。
葉山:そんなことしても、何にもなりませんよ。
尚哉の表情をチラリと見たあと、頭上に何かあるのを高槻が確かめに行く。
尚哉:あぁっ、撮影してたんだ。
生方:あたしたちを早く帰して、これを回収しようとしてたの?
葉山:「百物語したら怪奇現象が起きた」っていうのをネットにあげたら
バズるかなぁって・・・。(頭を掻く)
葉山の前に歩み出る高槻。
そんなことのために怪異を仕組むなんて、感心しないな。
怪異は奥が深くて、底知れないものだから。
高槻の実家
清花がけだるそうにしている。
塞ぎ込んでいると言った方がいいのだろうか。
執事と思われる男性が、来客があることを告げにやってくる。
今は誰にも会いたくないの。
彰良さんのことだと仰ってますが・・・。
執事が来客を案内するため、玄関ホールにやってくる。
奥様がお会いになります。
そこに居たのは、寺内だった。
*************************
研究室のソファーにうつ伏せで眠る生方。
高槻がそっとブランケットをかける。
高槻のスマホに、葉山から着信が入る。
(生方が起き出す。尚哉は椅子に腰かけている。)
どうしたの?
え、分かった。僕の方で調べてみるから。
通話を終えた高槻に、何かあったんですかと近寄る尚哉。
百物語で、「開けてはいけない箱の話」をした女性覚えてる?
(尚哉と生方、顔を見合わせて「あぁ、はい。」)
あの人、栗本小春さんが百物語のあと、失踪したらしい
神隠しみたいに・・・。
エンディング
奥多摩湖近くの旅館の部屋で
朝、深町尚哉(青和大学文学部の学生)神宮寺 勇太 が目を覚ますと
隣で眠っていたはずの高槻の姿はない。
高槻の布団が綺麗に畳まれているのに
佐々倉健司(警視庁捜査一課の刑事・高槻の幼なじみ) - 吉沢悠 は
気づいていない様子で、まだ眠っていた。
気になることがあるから調べてくる
そんな伝言メモを残し、高槻は部屋からいなくなっていた。
慌てる尚哉、初めて行く場所では「超」がつく方向音痴の高槻を心配し
健司を起こして追いかけようとする。
自分たちを起こさずに出かけるくらいだから、大丈夫だろうと健司は考えているらしく
放っとけ と、二度寝を決め込んでしまう。
それは正解だった様子で、車を手配して
高槻はどこかへと向かっていた。
道中、奥多摩湖の崖の柵がある奥多摩休憩所で、柵の外(崖側)で立っている
刈谷愛菜(バス転落事故で生き残った奥多摩の奇跡の少女)-粟野咲莉 を見かける。
運転手に車を止めてもらい、愛菜に駆け寄る高槻。
何をしているの?
そう尋ねても答えず、柵を乗り越えて戻り、走り出し行ってしまった。
柵の向こう側へ目をやった後その支柱に、そう新しくもないカラーの輪ゴムをひも状にした
「ゴム遊び」に使ったと思われるゴムが巻き付いていた。
そのゴム紐を手に取る高槻。
オープニング
旅館の朝食場所。
健司と尚哉が先に食事をとっている。
瑠衣子(高槻の研究室に所属する大学院生) - 岡田結実
の膳はまだ手が付けられておらず、ここには来ていないようだ。
健司はあたりを見回し、人がいないことを悟ると
彰良が天狗の子とか、天狗様って呼ばれてたことがあるの、知ってるか?
そう言って尚哉に話を始めた。
尚哉:なんとなく・・・ですけど。
健司:誘拐事件が起こって、鞍馬で発見されたとき
あいつの背中には大きな傷があった。(尚哉は、昨夜の露天風呂での高槻の背中を思い出している。)
気持ちが高まると、目も青くなっていて・・・。
尚哉:完全記憶能力を手に入れた・・・。(健司うなずく)
健司:あいつの父親は、経営者だけあって現実的な考え方だから
息子は異常な犯罪者に誘拐されて、背中に傷をつけられ
薬を飲まされて、目が青くなるようになったと考えた。
(その時間、高槻は再び乗り込んだタクシーの中で、当時の母親たちの狂気と自分の寂しさを思い出している。)
健司:でも、母親:清花(高槻の母)-高橋ひとみ は
「自分の息子がひどい目にあったかもしれない」という事実に
堪えれなかったんだ。
尚哉:だから、自分の息子が「天狗にさらわれた」って信じようとした。
健司の言葉をつなげる尚哉。
健司:完全記憶能力と元々持っていた推理力と分析力が合わさって
彰良は普通の人が気づけないようなことも、気づくようになっていた。
無くした物の在処とか、当人が隠している人間関係とかな。
だから、母親は益々信じ込んだ。
自分の息子は特別な存在・・・。
「天狗の子」になったんだって。
尚哉:愛菜ちゃんみたいに特別に・・・。
それを聞いた尚哉は、特別な子として扱われている愛菜に
高槻がかつての自分を重ねていたことに、気づくのだった。
だから彰良はじっとしていられないのだろうと、健司は尚哉に伝えた。
事故を起こしたバスが向かった遠足の目的地、奥多摩湖公園にて
公園を歩く高槻に、走り寄ってきた生方が声をかける。
旅館でタクシーを手配した形跡があったので、高槻の行方が分かったと言うのだ。
流石だね、そう告げる高槻。
解決・・・じゃないんですか。
愛菜ちゃんが本当に特別な子で、大人たちの相談に乗っているのならいいんだけど
そうじゃないとしたら、可哀想だなと思って。
愛菜さまのこと、まだ気になります?
(ん?)この前も「愛菜さま」って言ってたね。
元ご近所の方が「愛菜さま~」っていうから、つい。
それだよ、皆「奇跡の少女」として彼女のことを解釈しているんだ。
必要なのは「普通の小学生」としての愛菜ちゃんの情報。
瑠衣子君もう一度、(元ご近所さんに)話を聞いてきてもらえるかな。
分かりました。
(この時の生方の様子は、1話で映像に残されていないが
研究室に向かう前の寺内に何かを感じ取ったように見受けられる。)
公園の清掃スタッフに高槻が声をかける。
えぇ、あの日もこの公園にいました。
子どもたちは皆ここで、楽しそうにお弁当を食べていましたよ。
まさか、あの後すぐ亡くなるなんてねぇ。
一人だけ無事だったのはご存じですか?
もちろん、愛菜さまのことはよく覚えてます。
他の子とは交わらないで、あそこで一人で静かにお弁当を食べていて
あとであの子だけ生き残ったって聞いて、
「あぁ、やっぱり特別な子だったんだなぁ。」って。
にしても、運転手の人。心臓発作だったんでしょう。
運転中じゃなくて、せめて奥多摩休憩所で停まったときに発作が起きてればねぇ。
停まった?
ここを出た後、すぐに気分が悪くなった子がいて
奥多摩休憩所のトイレを使ったようなんです。
「少し汚して申し訳ありません。」って、
管理事務所に担任の先生から電話が来たんです。
高槻は、愛菜が奥多摩休憩所の柵の外にいたことを思い出していた。
生方による再ヒヤリング(刈谷家が元住んでいた集合団地)
今度は愛菜さまではなく、刈谷愛菜ちゃんとお母さん
刈谷真紀子(愛菜の母)-矢田亜希子 についての
フィールドワークが行われ、その内容がスマホにて奥多摩湖の高槻に報告される。
それによれば、刈谷家での元の場所での生活は苦しく、愛菜はいつも汚れた服を
着ていたそうだという。(リアルなら軽いネグレクトとも言える)
そのことが原因で、愛菜はクラスで仲間外れにされていたらしい。
奥多摩湖の公園の清掃スタッフに話を聞いたときも同じだった。
一人きりでお弁当を食べる子を特別な子だと思ったって。
奇跡の生還の話を聞いた後、「一人でいる子は特別な子」と解釈されてしまったようだ。
健司:愛菜ちゃんは「特別な子」じゃなかったってことか。
高槻:「特別な子」なんていないんだよ、ただ「他人とは違う体験をした」だけ。
尚哉:でも愛菜ちゃんがたった一人生き残ったっていうのは、事実ですよね。
それも偶然?
高槻:そこが判らないんだよね。
健司:この件に関わるのはもうやめたらどうだ。(尚哉が見ていた絵を取り上げ)
もしコレ(愛菜が高槻に描いて渡した絵)みたいにぶっ倒れたら、シャレにならない。
高槻は、愛菜にこの絵を渡されたときのことを思い出している。
何かに気づいたのか立ち上がる。
残念だけど、そう簡単に本物の怪異とは出会えないみたいだ。
そういって、右手の人差し指を鼻の前に持っていくあの仕草をするのだった。
(健司の「はぁ、何か気づいちゃったのぉ。俺のせい、なんかヒントいいましたぁ。」の悩ましい表情がなんとも言えない。)
現在の刈谷家へ
高槻たち3人が、刈谷家の前にできる信者たちの行列を抜き去って、玄関口へやってくる。
行列を残してきたことに、少し戸惑う尚哉。
黙って話を聞いている愛菜の横で母親が
信者の女性に「愛菜もそのうち解決すると思っているようです。」と伝えると
喜ぶ女性。
そこに乗り込む高槻たち
母親:順番をお待ちいただかないと。
高槻:刈谷さん、もうこんなことはやめて愛菜ちゃんを病院に連れて行くべきです。
女性:なんですかあなたは。
母親:くりはらさま。あとでお話しを伺いますので、今日のところは席をお外しいただけますか。
女性が帰って行くと、高槻は愛菜が背を向けて絵を描いていた机に
並べてある本の天地が逆になっていることを指摘する。
高槻が受け取った絵についても、普通にみれば高槻が逆さに落ちる不気味な絵に見えるが
天地を逆にすれば、普通に文鳥が飛んでいて高槻が立っているだけの絵になる。
愛菜ちゃんは脳になんらかの支障をきたしているかも知れないんですね。と告げる。
だから、なにかを読んだり描いたりするときに天地が逆になる。
一緒に暮らしている母親が気づかないはずがない、
もし、外傷による障害であればすぐに病院に連れて行っただろう。
しかしそれをしなかったのは、原因が心にあると思ったのではないか。
君は、事故の時バスに乗っていなかったんだね。
母親:そんなこと、あるわけないじゃないですか。
(尚哉が嘘に気づいた様子をみせる。)
愛菜ちゃんは、小学校で仲間外れにされていたそうですね。
奥多摩湖公園でのお弁当の時間が終わり、バスが発車した。
でも、子どもが一人気持ち悪くなって、奥多摩休憩所でバスは停まった。
子どもたちはバスの周りに散らばって休憩していたんでしょ、仲良しグループに分かれて。
一人でいるしかなかった愛菜ちゃんは、これで遊んでいたんじゃありませんか。
(そう言って、高槻がボケットからあの輪ゴムを取り出した。)
そして、遊んでいるうちに靴が脱げ、崖に落ちてしまった。
なんとか拾おうとしているうちに、バスが発車することになった。
クラスの女の子たちは、愛菜ちゃんがいないことに気づいていたんでしょう。
でも愛菜ちゃんに意地悪をしようと(点呼で)先生に嘘をついた。
(バスの中に愛菜のリュックと水筒が残された。)
そしてバスは(愛菜を残して)発車してしまった。
つまり愛菜ちゃんは、事故の時バスに乗っていなかったんです。
母親:ただの想像よ。
いえ(首を振る)、今朝奥多摩休憩所で愛菜ちゃんを見かけました。
その場所で、この赤い靴を見つけたんです。(尚哉が取り出す)
休憩所で愛菜が走り去った後の場所の下に、赤い靴が残されていた。
これ、愛菜ちゃんのだよね。
何より、これを見てください。(スマホの画像で、寺内が高槻に渡した愛菜の絵を見せる)
これを見ると、(逆さに描かれた)愛菜ちゃんがバスから放り出されたように見えますが
こうすると(絵を天地逆にする)女の子はちゃんと立っていて、バスの方がひっくり返っているように見える。
つまりこれは、バスの転落を愛菜ちゃんが見ている絵なんです。
そして、この絵の中の愛菜ちゃんは、靴を片方履いていない。
(愛菜は事故当時を思い出して泣き始めている。)
お母さん、これ以上事実を偽り続けても誰のためにもならない。
貴方は、この子が苛めにあっているのを認めろと言うんですか。
遠足の日、愛菜は私に「行きたくない」と言い始めました。
どうせ仲間外れにされるからって。
そういう子にとって、遠足なんて楽しい行事じゃない。
苦痛なだけなんです。
「行きたくない」って言われて、私・・・どうしたと思います?
「行きなさい」って言ったんです。だって、その日もパートだったから。
私が稼がないと、私たちが食べるものに困るから。
あなたがすべきだったのは、この子を「奇跡の少女」なんかにすることじゃない。
母親として守り、ちゃんと治療を受けさせることだった。
あなたが最初に「愛菜ちゃんがバスに乗っていた」という嘘を本当にしてしまったから
この子は口が利けなくなったんですよ。
(高槻も、また苦しかったことを思い出している。)
愛菜は泣きながら立ち上がり、健司の前を駆け抜け
部屋の奥にあった、信者がくれたというあの文鳥の籠を高槻の前に突き出した。
ママは悪くない、あのとき私はバスに乗ってた。
あのときバスに乗ってた。
突き出された文鳥の籠に、一瞬たじろぐ高槻。
愛菜の回想では、崖からバスが落ちた場所に(片足だけ靴履きのまま)駆け寄り
覗き込もうとして、崖を滑り落ちて行った。
ママは悪くない。あのときバスに乗ってた。
我に返った健司が、文鳥の籠を退ける。
高槻が、愛菜の両肩を掴む。
愛菜ちゃん、それは嘘だ。
そして嘘は永遠には続かない。
君は奇跡の少女なんかじゃない、普通の女の子だ。
黙れ、バカぁっ!
高槻は握りしめた輪ゴムを愛菜の前に差し出す。
愛菜ちゃん、これで遊ぶのは好き?
だったらその気持ちを捨てちゃダメだ。
神様なんかになろうとしちゃダメだ、絶対にっ!
うるさいっ!
お前なんかどっか行っちゃぇ、ママをいじめるなっ!
愛菜ちゃん、君の気持は解る。
どうしてお母さんの始めたことに付き合ってしまったのか
それは、自分が奇跡の少女でいれば、お母さんと一緒にいられるから。
高槻は、自分の肩に母の清花が手を置き
この子はね、なんでも解るの。
そういって、女性たちを集めたサロンのようなものを始めていた。
それがずっと高槻を苦しめていたのだろう。
自分が愛菜さまになれば、ずっとお母さんと一緒にいられるからだよね。
自分が愛菜さまでいる限り、皆が物を持ってきてくれる。
住む場所だって提供してもらえる。
お母さんはパートに行かなくて済む。
ずっと一緒にいられる。
物静かだと思われていた少女は、実は孤独で
あれから初めて大声を上げて泣き始める。
母はやっと自分がしていたことが、子どもと自分のためではなく
自分のためであったことに気づいて涙を流していた。
その様子を見て、安心したのか
立ち上がった高槻がふらつき、健司に身体を支えられる。
あの時の自分と同じ孤独を抱えた子どもを、一人開放することができた
それが怪異でなく、偶然から起こった故意だったとしても
昔の自分を思い起こさせる愛菜を解放してあげることができたと、
健司に身体を支えられながらも、涙が流れる高槻。
そして尚哉は、これまで自分を温かく見守ってくれていた
高槻の涙に、自分も彼を支えたいと思うのだった。
高槻の研究室で
健司がバス事故の結果について、高槻が推察した通りであったことが
刈谷親子の話で明らかになった。
尚哉がボードに
怪異
現象 解釈
事故で助かった 奇跡の少女
少女 まな様
そう書いた。
そこへドアをノックするがして、寺内一(謎のフリーカメラマン)-小池徹平 が訪ねてくる。
ご相談の件、解決しましたよね?
はい、でも僕が高槻先生にお話ししたかったことはこれからなんです。
僕は、先生が愛菜さまという奇跡の少女を見て
自分の役割を思い出すかどうか、試したかったんですよ。
自分の役割って、どういう意味かな。
高槻が寺内の前に歩み寄る。
天狗の子ですよ、あなたはかつてそう呼ばれて何人もの人の悩みを聞き
答えを示していた。
ハァッ、あの姿に僕は憧れたのに、今はただの准教授として
大学生相手に講義をしている。
それで満足なんですか。
僕は満足だよ。
(寺内、首を横に振り)
貴方はただの人間じゃない。
使命がある。
人間を超える存在として、迷う人を救ったり
道を踏み外した人を罰したりしなきゃ。
それが、僕たちの使命。
僕たち・・・。
そう言うと、寺内は黒いシャツのボタンを外し始める。
彼の背中には、高槻の背中のそれと同じ傷があったのだ。
背を見せたまま、寺内は高槻に語りつづける。
僕はもう始めていますよ、先生。
一緒にやりましょう。
何を始めた。
厳しい表情で視線を据えたままの高槻
使命を果たすと心に決めたら連絡をください。
(彼の質問には答えないまま、シャツを直した寺内)
そしたら教えますよ。
勝ち誇るように寺内は研究室を出ていく。
健司は高槻に歩み寄り
あんな傷跡どうとでもなる、気にすんな。
そう声をかける。
俺、確かめてきます。
何か話をさせて、嘘を言ってるか確認すればいいんだから。
寺内を追いかけようとする尚哉に、高槻は
ダメだ、あいつに近寄っちゃだめだ。
彼は深町君の能力を知っている。
そう言って尚哉を制止した。
えっ?(能力について他の人に話していないのにと、驚く尚哉)
一度も寺内が「心配している」という言葉を使わなかったのは嘘だから。
使えば声が歪み、尚哉に見抜かれるのが判っていたのだと言う高槻。
健司はハッとする。
深町の能力に気づいているから(高槻並みの推理力・分析力があるから)
**************************
研究室の階段を降りていく寺内
差し込む夕日を背に、その両目は青く光っていた。
**************************
寺内一、本当に僕と同じ目にあったのかもしれない。
**************************
キャンパスを通り過ぎて、歩き去る寺内を見つけ
厳しい目を向ける生方。
意気揚々と歩く彼に、何かの気配を感じたようだ。
****************************
でも、僕自身があの時
自分に何が起きたのかを分かっていないんだ。
寺内の言葉に、明らかに気持ちを揺さぶられている高槻。
これから高槻が巻き込まれるかも知れない出来事に、不安を感じる健司と尚哉だった。
エピソード2 第2話 終了
これまで、高槻の台詞を青、それ以外の人物を赤、赤が多用される場合は赤黒としてきましたが
寺内の登場で、寺内の台詞を 赤→紫のグラデーションから紫へ変更しました。
恐らく、高槻と寺内の会話が交錯すると、青✖青になってしまうと思われます。
そのための対応とし、ご承知おきください。
302号教室 4限 授業連絡表
授業科目 現代民俗学講座
学科 史学科
担当教員 高槻彰良
連絡事項 恐ろしい怪談
現代民俗学Ⅰへようこそ、去年民俗学Ⅱを受講した人の顔があちこちに見えて嬉しいね。
民俗学に興味を持ってもらえたかな。
僕の術中にはまったね。
青い提灯の祭りが終わり、深町尚哉(青和大学文学部の学生)神宮寺 勇太 は大学2年(2回生)となった。
相変わらず、高槻がボードに描く絵は謎で、尚哉の後ろに座る 難波要一(尚哉の同級生) - 須賀健太
その隣の 谷村愛美(尚哉の同級生) - 吉田あかり にとっても、理解するには難易度が高い。
鼻を垂らした風邪気味の犬のように見えているのは、「牛の首」らしい。
先生、このコかなり頭の悪い犬ですっ!
難波に、牛の首についてどう思うか高槻が尋ねると
牛の舌なら好きですよ、タン塩。
などと、いかにも彼らしいもっともな返事が返ってくる。
牛の首と言うのはね、この世で最も恐ろしい怪談だと言われているんだ。
そう言うと、高槻は「君だけに話すから」と難波を壇上に呼び寄せようとする。
怖がっているか聞かれて
「怖くないです。」
そう答える難波を横目に、尚哉はどんな話なのか興味津々だ。
高槻が、前に出てきた難波の耳元で何かを話している。
すると難波の顔がどんどん曇り始め、うなだれて教壇を離れて行く。
席に戻ると、頭を抱えてうつむいていた。
その時
ドーンッ!
高槻がマイクを床に落とした音に、皆が驚き女子学生たち数名が悲鳴を上げた。
その様子を見て満足を得たのか、高槻が
難波君の名演技のおかげでうまくいったよ、皆、難波君に拍手っ!
パラパラと拍手が起き、難波はそれに応える仕草をする。
未だ状況が吞み込めない谷村が高槻に尋ねると
「牛の首」と言う怪談は、タイトルだけで中身が無いのだと告げる。
「とても恐ろしい怪談だという評判を楽しむ」のが、この怪談なのだと。
話の内容が判らないからこそ恐怖が増す。と言い、ボードに「怪異」「現象」「解釈」と書き込む。
もし、僕が種明かしをしなければ
君たちは今夜、ただの通行人に恐怖を感じたり
目の前に飛び出した黒猫を不吉だと思って
そこに怪異を感じたかもしれない。
怪異の多くは、人の恐怖や欲望が生み出す
つまり、怪異は人の心を映すとも言えるね。
僕は偽者の怪異には興味がない。
本物の怪異を探しているんだ。
今は高槻の言葉の意味が解り、新しい学年が始まったことに浸る尚哉だったが
時を同じくして黒いフードコートを着た男が、空に突如流れてきた黒雲のように学内に入り込み
生方瑠衣子(高槻の研究室に所属する大学院生) - 岡田結実 に話しかけ
研究室へと近づいていることに、高槻と尚哉はまだ気づいてはいなかった。
オープニング
講義が終わり、尚哉を残して難波たちは帰って行く。
ノートを閉じて尚哉も帰ろうとしたとき、高槻からアルバイトを依頼される。
304 文学部史学科 民俗学考古学専攻 高槻彰良 の研究室
寺内一(謎のフリーカメラマン)-小池徹平 という男が、高槻を訪ねてくる。
高槻がいつもの調子で飲み物をすすめるが、ココアがド甘そうなのを知っている尚哉。
寺内が高槻が飲むものと同じものを頼もうとするのを察し、無理をしないよう伝えるが
是非、それで。と承知のうえで、高槻のオススメココアを選ぶ、嬉しそうな高槻。
あのココアを美味しいという寺内に、尚哉はまるでフードファイターを見るような眼差しになってしまう。
寺内は、高槻のサイト「隣のハナシ」にこのような投稿をしてきたのだ。
投稿者名;寺内一
最近、母親が奥多摩の奇跡の少女にハマってるのですが、
調べてもらえませんか?
寺内は、新聞記事をコピーしたものを二人に見せる。
内容は、
奥多摩湖で小学生を乗せた遠足のバスが、運転手が運転中における心臓発作が
原因とみられる事故により崖から転落し、小学生ら21人が死亡した。
というものだった。
ニュースでも流れたらしく、悲しい事故であったことを高槻も記憶していた。
このとき、一人だけバスの窓から放り出され奇跡的に助かった
少女:刈谷愛菜(バス転落事故で生き残った奥多摩の奇跡の少女)-粟野咲莉 がおり
そのカラーコピー記事も持参してきていた。
愛菜ちゃんは「奥多摩の奇跡の少女」と呼ばれ、この子に会うと不幸が避けられるとか
悩みが消えると言い出す人が出てきました。
私の母はそういうのを信じやすい性質で、「愛菜さまに助けていただく」と言って通うようになったんです。
これは、母が愛菜さまに頂いたといって神棚に飾っているんです。
(バスから逆さに少女が転落したように見える絵を差し出す。)
これは愛菜さまがバスから放り出された奇跡の瞬間だと、言っています。
毎週のように高価なお菓子やおもちゃを持って、現在は愛菜さまが引っ越した奥多摩まで通っているんです。
先生、奇跡の子なんて実在すると思いますか?
(尚哉は、高槻がいつもの如く立ち上がらないので、二人を交互に見ている。高槻は、何かを思い出しているような顔をしている。)
母が騙されていないか、調べていただけませんか?
分かりました、お引き受けします。
ありがとうございます。
寺内は立ち上がり、礼を述べて帰って行った。
古い団地の中庭
生方が、刈谷愛菜が奥多摩に引っ越す前に住んでいた団地で
聞き取り調査を行っていた。
既に引っ越していった彼女を、冷やかしなのか分からないが
住民たちは「愛菜さま」と呼んでいた。
近所へ彼女に会いたいという人たちが押しかけてきて
迷惑になるからと、ここから引っ越したそうだ。
住民たちによる彼女の印象は、
・可愛くって静かな子だった。
・お母さんが一人で育てていて、ちゃんとしてるカンジ?
・礼儀正しい子だったよ、ねぇ?
・やっぱり他の子と違うんだよねぇ。
生方の報告によれば、
愛菜さまはとてもいい子で、あんまり子どもっぽくない。特別な子だった。
とのことだった。
特別な子。
パソコンで、奥多摩の奇跡の少女について検索していた高槻の手が止まった。
「特別な子」その言葉が、高槻に自身の何かを思い出させたようだ。
尚哉:奥多摩なんですよね、その子の引っ越し先。
生方:信者の人が家を提供してくれたんだって。
尚哉:先生?この相談、楽しいと思って受けてます?
高槻:へっ?
尚哉:寺内さんの話を聞いたときも、一度も「すばらしい」って言わなかったし
(テンション低かったから)俺、断るのかと思ってました。
大丈夫、ちゃんと調べるよ。
やる気がないわけではないが、どうにも気持ちの高揚が見られない。
飲み物のおかわりを作りにデスクを離れて行く足取りも、そう軽いわけではなさそうだ。
警視庁前
佐々倉健司(警視庁捜査一課の刑事・高槻の幼なじみ) - 吉沢悠 に奥多摩駅前から
尚哉が電話を入れている。
高槻が手配した宿に、健司も後から合流するらしい。
ちょっと注意してくれるか、彰良のこと。
今回の件、関わるのが気に入らなくてな。(生方からバスが来ているからと、尚哉が催促される)
わかった、(理由については)後で話す。
どうやら、健司にも高槻が依頼を引き受けたことが引っかかっているようだった。
奥多摩湖を見下ろす高台で
鎌田亮平(バス転落事故の目撃者)-長谷川純 に、高槻ら3人が
事故当時の状況を聞き取りしている。
野鳥観察を趣味としている鎌田が、この場所でバスのクラクションに気づき
下の道を見ると蛇行したバスがガードレールにぶつかり、
そのまま崖下に落ちていったということだった。
あわてて通報しようとしたが、まだ生存者が居るかもしれないと
バスがぶつかって落ちて行った崖へたどり着くと
その下に、愛菜さまが居て立ち上がり、自分の方を振り向いたのだという。
一目見て分かりましたよ、この子は特別な子なんだなぁって。
刈谷親子が引っ越したという奥多摩の家の手前で
高槻ら3人が、高台にある信者が提供したという刈谷親子の現在の住まいを
訪ねに行く。
降りていく人にすれ違う、家の前にはまだ何人もの信者と言われる人が
並んで彼女に会うのを待っている。
生方は、心得たように私の出番ですね。と、先に並んでいた信者に話しかける。
自分は、愛菜さまに会うのが初めてなので、お土産を何も持ってこなかったけれど
大丈夫かと、最後尾の男女に話しかけた。
女性は、自分たちの意思で感謝の気持ちを持ってきただけだから、何もなくても大丈夫だと言い
感謝の気持ちと言うことは、何かいいことがあったのかと生方が聞くと、愛菜さまトークで盛り上がり始める。
男性:私は、愛菜さまに頂いた絵を会社に飾ったところ、急に大きな取引が決まりました。
女性:私は、家族の問題をお話ししたら、すっかり解決して。
高槻が尚哉を見て確認するが、声が歪んだ様子はないという仕草をする。
その二人の話を聞いていた高槻は、何かを思い出し始めた。
高槻の実家で(高槻の回想)
応接室に座る12歳頃の高槻(幼少期:高橋來)、すぐ近くには
高槻清花(高槻の母)-高橋ひとみ がいる。
高槻を訪ねて、現在の刈谷家のように女性たちが悩みを相談に来ていた。
ところでね、天狗様にまたご相談があるの。
それは、あのキリシマ夫人だった。(5話エンディングと6話に登場)
***************************
尚哉:家族の問題に、10歳の女の子がアドバイスをするんですか?
女性:いいえ、愛菜さまはずーっと黙っていらっしゃるの。
その心の中をお母さま (刈谷真紀子:愛菜の母)-矢田亜希子
が読んで「愛菜もすぐに解決すると思っているようです。」って伝えてくださるのよ。
高槻の実家で(再び高槻の回想)
清花が高槻少年の方に手を添え(現在の刈谷真紀子のように振る舞い)
この子に何でも聞いてね。
そう言って微笑んでいた。
***************************
やっと高槻たち3人が、刈谷家に入る番が来た。
玄関口を見渡すと白い靴の他に、汚れた赤い靴が片方だけ残っている。
高槻の記憶によれば、それは寺内が見せたあの絵、
逆さになった愛菜が片方だけ履いていた赤い靴だと思われた。
刈谷真紀子らしき女性の声で呼びこまれ、高槻たちが家に上がると
奥の机で高槻たちに背を向けた少女が、絵を描いている。
そのとき、家で飼っていると思わしき文鳥が、籠の中で鳴き
振り向いた高槻の身体が、ふらつき始める。
尚哉が高槻の身体を支えた。
生方は真紀子に、高槻が鳥が苦手であることを伝え
鳥を別の部屋へ移動してもらえるようお願いする。
いつもならここで倒れ込んでしまう高槻が、なんとか身体を起こして真紀子に
(寺内から)相談を受けていることを明かし、自分が来たことを説明した。
真紀子は、信者と言われる人々が先ほどの文鳥を含め
いろいろと何かを提供してくれていることは事実であるが
こちらからお礼を請求することはないと答えた。
(生方が、愛菜が描いているものを覗き込もうとして軽く嫌がられる。)
ただ、頂いたものは有難く使わせてもらっているという。
当時自分は仕事をしていたが、
事故の後、学校に行けなくなった愛菜と一緒にいるため
仕事を辞めてしまったからだ。
高槻:愛菜ちゃんは、学校へは行っていないんですか。
母親:事故以来、言葉が出なくなってしまって。
ゆっくり休ませて、私がそばにいようと思っています。
尚哉:家を提供してくれた人がいるっていうのは知っているんですが、
どうしてわざわざ奥多摩へ引っ越して来たんですか?
母親:事故現場に近いここで暮らす方が、亡くなった方々へのお弔いにもなりますから。
愛菜がスケッチブックのページを千切り、描いていた絵を高槻に渡す。
そこには、文鳥と逆さになっている高槻らしい人物が描かれていたのだった。
刈谷家を後にして、道を下っていく高槻たち
するとそこに、あの寺内が3人を待っていた。
挨拶を交わす3人。
尚哉が生方に寺内を紹介すると、生方は(研究室を尋ねられたので)会ったことがあると答えた。
寺内:どうしても、しっ・・・来てしまいました。いかがでしたか?
高槻:宗教でもないようですし、お礼も皆さん自主的に渡しているようですよ。
寺内:そうですか、ありがとうございました。
ところで先生は、愛菜さまを可哀想だと思いますか?
高槻:なせ、そんなことを。
寺内:僕なら「幸せだろうな」って思うからです。
尚哉:幸せ?
寺内:特別な存在になるなんて、最高じゃないですか。
それを聞いた高槻は、少し悲しい・・・いや寂しい顔をしていたのだった。
高槻が予約した宿で(奥多摩温泉 玉翠楼)
予約した和室2部屋。生方は一人で片方の部屋へ入っていく。
もう片方の部屋に入る高槻と尚哉。
ザ・(田舎の)旅館といった佇まいだ。
ここで尚哉は高槻に、真紀子の言葉が1か所だけ歪んでいたことを伝える。
どうしてわざわざ奥多摩にって聞いたときだよね。
引っ越した理由が(供養とは)別にあるってことですよね。
でもまぁ、(宗教がらみでもないし)もう解決かぁ。
旅館の避難経路案内図には「貸切風呂予約できます。」と書かれている。
あ、貸切風呂があるってよ。
折角来たんだから、美味しいもの食べて温泉入らなきゃね。
あ、男二人で貸切風呂で温泉ってことは、あれですよね。
そうですよね、そりゃ貸切でないと。そんな顔をする尚哉だった。
貸切露天風呂にて
岩風呂で身体を伸ばし、気持ちよさそうにする尚哉。
こうなってからは、健ちゃん以外の人とお風呂に入るのは初めてだよ。
そう言って、尚哉に背中を向けて見せる高槻。
改めてその傷を見つめる尚哉、子どもが背中にこの傷を負わされたことを考えると、胸が痛む。
隠さなくてもいいのは、いいもんだね。そう言ってくれるのが救いのような気がする。
愛菜ちゃんを見てると、自分の子どもの頃を思い出すんだ。
遠い目をして、昔のことを思い出しているふうだった。
風呂上がりの牛乳を(高槻はビール)、浴衣姿で3人が楽しんでいると
駆けつけた健司がやってくる。
背中越しに、行方不明者が発見されたニュースがテレビから流れてきた。
健司は気にかけていたらしく、振り返って速報の画面を見つめる。
埼玉県内で下校途中に行方不明になっていた高校一年生
「橋詰誠(ハシヅメマコト)」君【16歳】が無事に保護されたらしい。
健司によると、埼玉県警は山狩りまでして熱心に捜索していたそうだ。
しかし、その字幕スーパーを見て高槻の視線は画面に釘付けとなった。
【速報】
行方不明の男子高校生を京都市内鞍馬で保護
部屋に戻って、川の字に布団を並べた3人。
健司が電気を消そうとしたとき、高槻は思い出したようにそれを止める。
ちょっと待って
深町君、僕、愛菜ちゃんの家で「寺内さんがお母さんを心配している」って言ったよね。
寺内さんは、さっき何か言いかけてやめた。
健司:それが何だ。
どうしてもの後は、「心配で来てしまった」って言うのが自然だよね。
でもなぜか言わなかった。
それにあの人、研究室に来たときも「心配している」って言葉、一度も使ってなかった気がする。
どぉ~してだろ。
高槻には、それがどうも気にかかっているようだ。
寺内一の自宅?
アパートと言うよりは、入り口横の鱗を思わせる大きめな4枚の型板ガラスの窓が
事務所と言った風情の古いビルの1階。
いや、むしろ隠れ家と言った方が相応しい。
戻ってきた寺内は、奥へと向かう
暗幕を引くと真ん中にはベッド、そして壁三面にまるでストーカーを思わせる
高槻をメインにその周辺の人物が映り込んだ写真やスライドが
部屋を埋め尽くしている。
その中には、高槻のスクラップブックにあった、あの記事の写しも貼りだされていた。
記事を指でなぞる寺内。うっとりと思いつめるような顔のまま、ベットに身体を預ける。
***************************
旅館の和室で既に眠る二人に背を向け、気持ちを鎮めようとする高槻。
しかし、何か分からない不安に気持ちが高ぶっているのか
その眼はまた青く光るのであった。
シーズン2 第1話終了
【観覧無料】
「WOWOW×東海テレビ共同製作連続ドラマ 准教授・高槻彰良の推察 Season2」放送・配信を記念して、展示コーナーがアリオ八尾光町スクエアに登場します。
『高槻彰良』『深町尚哉』『生方瑠衣子』の衣装を展示。
そのほか作品の紹介や、劇中写真パネルなど魅力がいっぱい。
ということで、新幹線に乗り降りたところでエスカレーターは右側攻撃を目の当たりにして
ここは大阪なんだなぁと、感慨に浸っているところでございます。
読めない地名がいっぱいで、まさにみっちゃんみちみち未知の国っ!
平日の午前中であれば、人出も少なかろうと行ってみると
思った通り誰も居ません、いないよ。
写真を撮っている後ろから、誰かの視線が突き刺さるっ。
これが刺客というものか、後ろを見るとしらら嬢が撮影中でした。
あ、いらっしゃい。
こちらは、WOWOWで放送されました
「准教授・高槻彰良の推察」の放送直前スペシャル対談のパート2書き起こしでございます。
高槻彰良を演じさせていただきました 伊野尾慧 です。
深町尚哉を演じさせていただきました 神宮寺勇太 です。
これから始まるシーズン2をより皆さんに楽しんでいただけるように、僕たち二人で
はい。
語り合っていきたいと思います。
そうです。
たくさん裏話なんかもして、皆さんに見ていただけるようにお話していきたいと思います。
(シーズン2の見どころについてナレーションとストーリー映像が流れる。)
シーズン2について
や、シーズン2に入ってまた雰囲気がガラリと変わりますよね。
はい。
シーズン1は一話ね、完結の軸としたストーリーだったけれども
シーズン2は全体をこぅ通して、長いストーリーがこぅ展開されてくみたいなカタチで
そして何より、この私演じる高槻彰良の過去が少しずつ明らかになっていくというところが
注目ポイントかなというふうに私は思います。
そうですね。
1でホントにちょっとずつ先生の「ん?」っていうシーンが
視聴者の方に沢山あったと思うんですけど、
2でそれがこう少しずつ解っていって、
解っていきそうってところで、新たな登場人物が出てきて。
「んはぁぁぁ?」っていう、さらにまた増える要素がありますよね、また。
驚きますよね、シーズン2で新たなキャストとして
小池徹平さんが出演してくださるということでね。
新キャラクター・寺内一について
そう、びっくりしました、それも僕聞いたとき。
寺内一さん、無茶苦茶怖いっすね。
(声を潜めて)怖いの、びっくりした。←いや、給湯室のOLさんみたいな口調になってるぞ。
びっくりした。お優しいお顔してるじゃないですか、かっこよくて。
うん、かっこいいの。
それであのちょっと目がちょっとカッ開いている感じが凄い怖くて。
尚哉と寺内について
寺内一と僕のシーンは、やっぱ先生のことについてこうぶつかるというか、お話しするんですけど。
気迫に負けそうになりますね。
わかんないですけど、戦闘力メチャクチャ高かったです。
あーわかる。
それだけ言いたいです。戦闘力は高かったです。
あー、遠山さん超えてきた。
(寺内一 > 遠山宏孝)
戦闘力
遠山さんちょっと超える戦闘力の持ち主。
あー、そうだよね。
俺もちょっとびっくりしちゃったもん、行ったとき。
そう、そうですよね。
遠くで見てたらさ、寺内さんと向き合っててさ。やりあってるからさ。
うわゎゎゎ~、やばいよ。っと思って
ははは、そんなテンションだったですか。
ヤバいよ、行かなきゃ行かなきゃと思って。
そこの先生かっこいいのよねぇ。
僕もけっこう寺内とは対峙するシーンが多くて、
やっぱ高槻先生って、やっぱり沢山のことを知ってるじゃない。
だから、シーズン1ではあんまり驚いたりとか、こぅ動揺するとかなかったんだけど
寺内に対してはやっぱ解らないことが多いから、先生も驚いたりとか動揺したりとか
なんだコイツはって、思わせることが多くて。
そこはやっぱシーズン1で見せる先生とは全く違う、表情になってくるんだなぁというのは
演じてて思いましたね。
高槻と尚哉の関係性
喧嘩しなくなりました。
喧嘩しなくなったね。
僕は(役で)拗らせちゃうんで
も、すぐ「やだぁ」とか「やりたくない」とか
そう、拗ねちゃうんですけども、結構だからシーズン1では少し尚哉の弱い部分というか
先生が温かく見守ってるってシーンが多かったと思うんですけど
シーズン2はちょっと逞しくなった。
逞しくなった
尚哉の変化
逞しいシーンがたくさんあって、私事なんですけど、猫背やめました。
あははは、ちょっと成長してんだ。
シーズン1からシーズン2で1年経ってるからね。
一年、そうなんです。19歳になってます。
シーズン1の尚哉は?シーズン2の尚哉は?
(横向きに腰かけて、背中の角度を18歳と19歳で変えてみせる。)
ごめん、気づかなかった。
まだちょっとあるんです、いつか見てください。
高槻の変化
先生もメンタル的にもそうだし、(尚哉に)頼る部分が多くなってる。
シーズン1ではやっぱり尚哉の物語で尚哉を支えたり、尚哉を導いてく先生なんだけど
シーズン2の先生はちょっと弱い部分だったり、人間的な部分が凄い見えてきて
そこにやっぱり尚哉は大切な存在で、尚哉が支えてくれたりとか
尚哉に頼るってことが多くなってるから、そこは見ていても面白いんじゃないかなと思う。
共演者について
結実ちゃんは、やっぱり唯一のヒロインだからね。
結実ちゃんのあそこのシーンが好きなんだよね、WOWOW版のさ。
ドアをブヮッと開けて、「これで百物語はお開きよっ!」って
俺、神宮司君と隣に座ってるときに二人で「あっ」
「ヒロインだっ!」
健ちゃんがかっこいいよね、吉沢さん演じる健ちゃん。
ティアドロップ(サングラス)かけてますし。
健ちゃんと盛り上がるのはあのお話だよね、やっぱり。
テーマソング。
(二人でテーマソングを口ずさむ)
これシーズン2もあのテーマソングかかる?
(かかります。とスタッフさんカンペ?)
あ、嬉しいね。
「デデステ」シーズン2もかけた方がいいですね。
健ちゃんがこぅ車で走り出すときに、こぅ音楽が流れてこぅストーリーが進むみたいな。
物語がこぅ変換するときに、こぅ流れる劇中の音楽なんだけど
あれが健ちゃんがめっちゃ合うよねって話で
WOWOW版で誰がこの音楽をかけれるかって(話を)よくしてるよね。
俺とかこう「なんとかかんとかなんとかかんとか」って(ジミ眼鏡を外す)
デデステッ~テってやって欲しいですよ。(効果音流れる)
流れてるよ(きっと)今。
一個もないんですよ、僕。
今、流れてるよ。(きっと)
シーズン2の見どころ
高槻先生の過去だったり、高槻先生が凄い感情的になるシーン。
今まで見せてこなかった表情だったり、仕草っていうのが
凄いシーズン2に詰まってるなって思いまして
僕演じる深町尚哉が、少しずつ先生に頼られるような逞しさを
少しずつ見せたりとか、この二人の関係値ももっともっと深まっていきますし
シーズン2も展開、凄いいっぱいあるので
見ていて毎話毎話飽きないんじゃないかなって、思いました。
シーズン2はこの先生、高槻先生の過去に迫る物語でもあるし
その迫る中でも、小池さん演じる寺内一との対決
その対決の中でこぅシーズン1とは見せる表情も変わってくるし
その二人が最後どうなるのかっていうのを楽しみにして
見ていただけたらなぁって思いますね。
撮影を終えて
心からこの役を演じることの楽しさももちろんそうですし
現場の皆さんもスタッフさんも、温かくてなんかその
少しの青春をさせていただいたなぁ、この4か月部活とかじゃないですけど
作品作りの楽しさっていうのを、改めて感じることができましたし。
それこそ、まだまだ原作も続いてるし、
またどこかで先生だったりとかと会う機会があったらいいなぁって
思えるような、それだけ僕も初めてのこの単独での主演の作品なんで
気持ちを込めて皆さんと作ってきた作品なので、
本当に皆さんに楽しんでいただけたらなと思います。
**************************
さぁ、皆さん。
シーズン2への期待値膨らみましたか?
WOWOW東海テレビ共同製作連続ドラマ
准教授・高槻彰良の推察 シーズン2 はWOWOWにて
10月10日 日曜夜11時 放送です。
是非、見てねぇぇぇ
**********************
お疲れ様でした。
シーズン2の撮影が終わり、作品の余韻に浸りながらも
リラックスしたムードで行われた対談のようですね。
シーズン1を語る対談に比べると、まだその火照りが残っていたかのように
伊野尾くんが熱くなるという珍しい?表情を見ることができました。
読んでくださった方にそれが上手く伝わるといいのですが
なんせテキストでございますし、ご容赦ください。
WOWOWで「准教授・高槻彰良の推察 シーズン2」放送開始前のスペシャル対談が
10分間2回にわたって放送されました。
もう、シーズン2の1話を無料放送でご覧になった方も、いらっしゃるかと思います。
今回は、放送前スペシャル対談の パート1を 記載させていただきたいと思います。
内容はシーズン1についての裏話的なものとなっておりますので
まだ余韻の冷めない方への燃料として、いかがでしょうか。
****************************
高槻彰良を演じさせていただきました、伊野尾慧です。
深町尚哉を演じさせていただきました、神宮寺勇太です。
皆さん、准教授・高槻彰良の推察シーズン1は楽しんでいただけましたでしょうか。
はい、シーズン2に入る前に僕たち二人でシーズン1の振り返りをしながら、このドラマを熱く語ってみたいと思います。
*****************************
青い提灯の祭りから始まる、シーズン1の高槻との出会いをおさらいする映像
**************************
准教授・高槻彰良の推察シーズン1を振り返って
シーズン1は、やはりこの一話完結で、こう物語が進んでいくじゃない。
はい。
もちろん、こう怪異がベースでストーリーがあるんだけれども、そこになにか人間の悪意だったりとかいろんな思いで演出してたりとかするんだけど、それを1話から7話までやったのにも関わらず、8話で本当のこのファンタジーみたいな怪異が出てくるっていうのが凄い面白いなと思いましたし、あとこう1話完結なんだけれども全体を通してちゃんと尚哉の物語があって・・・
そうですね。
尚哉のストーリーだったり、先生のストーリーも少しずつ背景が変わってくる。
確かに。
確かに自分で見てても楽しいなって
そうですよね。やっぱりいろんな展開があるので、見ていてやっぱり僕も自分で撮ったのにも関わらず「あ、こうなってるんだ。」って新たな発見があったりとか。
高槻彰良について
やっぱりこう、1話の台本読んだ時に感じたのが「先生一人で喋ってることが多いな。」っていうのが・・・思って、淡々とこう喋ってるだけじゃ見てる人だったりとか聞いてる人とかって、ね、聞けたもんじゃない長い話しって、意外と。
だからその話を「いかに楽しく聞かせるのか」「どれだけ心地よく聞かせるのか」っていうのは、ちょっと意識してちょっとその辺りの工夫はしなきゃなぁっていうのは心がけて、台本読んだりとか現場に入っても考えてましたね。
だからこぅ謎解きのシーンって言うのは、このぅ研究室とかでもそうだけども、やっぱりなんかこぅ動きだったりとか、なんかものはいろいろ使えたらいいなぁっていうのは、思ってたりとかして。
監督さんもよく、たぶん伊野尾くんに仰ってたと思うんですけど、声が凄い心地良い声で、たぶんこのドラマって結構たぶん声が凄い重要になってくるじゃないですか
あぁ~、そうね。
嘘で歪む声だったりとか。たぶん僕は高槻先生のなんとなくたぶん声とか、そういう先生の雰囲気に少しずつ惹かれたのかなぁって、僕は勝手に思ってて。
原作読んでたときに、1話の最初にまぁ容姿のことも書かれてるんだけども、それ以上に「尚哉は先生の声を聴いてなんとなくこの人いい人かなぁ。」って思ったっていうふうに思うと、先生の声ってやっぱり温かみのあるっていうかどっか優しさのある声なのかなって、ちょっとそのへんは自分なりに意識して演じたかも知れませんね。
深町尚哉について
最初聞いたとき「ヤバいな」って思いました。
なんで。
いやだって「嘘が聞こえる人間」なんて、僕出会ったことがないので
あぁ~、そうねぇ。
あとやっぱりモデルになった人、原作の中でしかないですし。どうやって演じるかって、凄い迷ったんですけど。監督だったりプロデューサーさんと相談して、徐々にできて過程みたいのがおもしろかったです。
こういう役をこれから演じることって、なかなかないと思うんで自分も凄い良い経験になったなぁって思いました。
そうだよね、嘘が判るっていうのは日常生活で我々が知ることができないこぅ人間の感覚だから、そこを想像して演じるってのは本当に難しいことだと思うし。
こう改めて私生活で、もし尚哉だったらどういう反応するんだってのは、凄い気になりましたね。
あと、モノローグをやっぱり・・・
やらせていただきました。
ね。
しっかり読ませていただきました。
言うじゃない。あの尚哉の声が凄い良くてグッと物語に引き込まれていくというか、こう1話の冒頭なんかって言うのは、本当に尚哉の孤独を感じさせるような声で・・・。(その様子が流れる)いいなぁって思いました。
ありがとうございます。本当に嬉しいです、メチャクチャ。褒められると、声は。
(うんうん)本当に照れてるじゃないですか。
いやぁぁぁ。嬉しいですね、やっぱり。
印象的なシーン
尚哉が、嘘が判る能力があるじゃない。その嘘の演出が凄い印象的だよね。
そうです。それお話してましたよね。
声が歪むっていうのがさ、尚哉にしか判らない能力だけどそれを視聴者の皆さんにも伝わるようなあのちょっと不気味な音。
(遠山さんの嘘コンボシーン登場)
あれは印象的だなぁと思いました。
あとやっぱその時の先生の顔っていうのを、僕一回も現場で見れてないんですよ。こうやって(顔を背けている)るんで、後ろで先生が優しく見守ってらっしゃるのが、オンエアで見て分かりました。
チラチラ見る。チラッチラッ チラッチラッ 尚哉の方見てるなと思って。
あの顔してるとは思わなかったんですけど、凄いチラチラ見てる。
WOWOW版でもチラチラ見ますね。
あ~見てるんですね。
演じてて楽しかったのは、やっぱ7話の最後のシーン。それこそこの教室(研究室)で、先生が背中の羽の傷を尚哉に見せるところはやってて凄い楽しかったです。
あの時初めて僕が(背中の傷を)見るってことですもんね。
やっぱ高槻先生って少し年も上で先生だから、そこまで感情的になる部分がシーズン1では少なかったんだけども、あそこでは少し感情的な部分、尚哉だからこそ見せるっていうところが演じてて凄い楽しかった。
あそこからメチャクチャグッと縮まりましたもんね、(先生と尚哉の)距離感が。
あれがあるからの8話だからね。
あ~、そうですね。(手つなぎシーン)
手つなぎ8話とか・・・ず~っと、手ぇつないでたもん。コイツ足速ぇぇんだよ。
へへへ。それメチャメチャ言う。すいません。
ホントに。
それほんとにすいません。
いや、それは俺が悪いのよ。
言いたくなかったけど、本番前に「神宮寺くん、ちょっと足ゆっくりできないかって。」
小声でもぅ相談みたいな感じで。
「もちろんです、もちろんですぅ。」って。
ちょっと緩めてもらって。
裏話ですね、完全に。
***************************
さぁ、まだまだ話したい事沢山あるんですけども、時間が来たということで。
はい。
ここまで。
WOWOW×東海テレビ共同制作連続ドラマ 准教授・高槻彰良の推察シーズン2は
10月10日(日)夜11時放送です。
ぜひ、見てね~。
いかがでしたでしょうか。対談の書きおこしと言うのは、話し手の癖になる言葉やその方の持つ性質のようなものが出てきて面白いですね。
伊野尾くんは、口頭で状況を相手に説明しようとする気持ちが強い(理論的)な方のようで
それが溢れすぎると「こぅ」という言葉が頻繁に登場するようです。
神宮寺くんをドラマでうまくリードしてあげたいという気持ちが感じられ、意外と兄貴っぽい一面もあるみたいですね。(前面ではなく、一面であります。広範囲の人に沢山の興味はないというか。エロで人見知りを回避するというか。)
それに対して、神宮寺くんは「凄い」またはそれに類似した意味の単語が重複して出ており、このドラマの出演に大きな刺激を受けていることが伝わってきます。
第四小学校の教室
高槻彰良(青和大学文学部の准教授)伊野尾 慧
深町尚哉(青和大学文学部の新入生)神宮寺 勇太
生方瑠衣子(高槻の研究室に所属する大学院生) - 岡田結実
の3人が、担任の平原まりか(第四小学校5年2組の担任) - 志田未来 に話しをしている。
高槻:この学校ではコックリさんは禁止されているそうですね。なのに禁を破ってまで3人が行ったコックリさんへの質問はあまりにも優等生的でした。だから聞いたんです。「他に何か質問したのって。」
神倉里帆(第四小学校5年2組の児童) - 米村莉子 は、教室で高槻に教えなかったが
公園で話をした 石井あかり(第四小学校5年2組の児童) - 船附純白 と 光村杏奈(第四小学校5年2組の児童) - 木村夏蓮 は高槻に内容を話してくれた。教室に貼りだしてある絵の中の1枚「千原康太」は、サッカーの絵が描かれておりサッカーが好きであろうこと。石井はサッカーをしないのに、願いが叶うという話の時にサッカーが上手くなれるかどうかを気にしていた、よって千原康太が好きこと、そして光村はカットバンの内側に「両想いになるおまじない」で好きな子の名前を書いていた、相手は「辻昭雄くん」と、彼の名前の書かれた絵を指さした。そしてこのクラスには「中村翔くん」という男子がおり、神倉が好きなのはこの子ではないかと、平原に話す。平原は、「そうかも知れません。でも、それがなにか。」と答えた。
高槻:皆このクラスに自分たちを好きな人はいますか?と聞いたそうです。皆自分の好きな人を指して欲しいと潜在意識で強く願う。辻くん、千原くん、中村くん。そのことが予期意向となって、無意識にコインを動かしたんです。(「つ」と「ち」と「な」を探して十円玉が動き出す描写)その3文字が3人の脳裏に一つの名前を浮かび上がらせた。意識すればするほどコインは動くんですよ「ち」「な」「つ」とね。これがコックリさんが「ちなつ」と指した理由ですよ。
ロッカーが開いたのは偶然ですよ、古くて扉が曲がってますからね。(曲がった扉を開け閉めして見せる)
子供たちに潜在意識という解説は難しいですから、コックリさんはお祓いをしていなくなったと話せば安心しますよ。
生方は立ち上がり、自分はお祓いのバイトもしているので、お祓いについては任せてくださいと平原に告げる。
平原:ありがとうございます これで気が楽になりました。
頭を下げ、そう礼を述べた。
しかし、その声は歪んで尚哉の耳に届く。(顔を背ける尚哉を高槻が見ている)
高槻:コックリさんをやるように仕向けたのは、貴女ですよね。
平原:私、私はやり方を知りません。
声の歪みに尚哉は、俺もう無理とばかりに席から離れていく。高槻は尚哉が苦しむ様子を察したかのように、少し責め口調で平原を問いただす。
高槻:コックリさんに使った紙、燃やしたんですよね。コックリさんに使用した紙はすぐに燃やす。これはコックリさんの作法です。貴女は相当詳しい筈だ。貴女はあの3人にコックリさんのやり方を教え、最後の質問を指定しコックリさんが「ちなつちゃん」の名前を告げるように仕向けた。でも何のためにそんなことをしたんだろうと考えたとき、思い出したんです。貴女はちなつちゃんが転校したと言ったときこう言った「私のクラスの児童になんてことを」あなたにとってちなつちゃんは、まだこのクラスの児童なんですね。
そして、この教室に貼ってある絵は26枚。これは5年2組全員の絵ですね。
平原:はい。
高槻:でもこの教室に机は27ある。(尚哉は机を見渡す)
平原:ちなつちゃんの席です。いつでも戻って来られるようにと思って、なのに。
放課後、3人の女子が帰りの挨拶を平原にしたとき、彼女はちなつの転校を教えたそうだが3人はちなつのことを全く覚えておらず「そんな子はいない」と答えたことがあった。
尚哉は、友達想いのいい子で一体感があったんですと答えた平原の声が歪んでいたことを思い出す。
平原は、「こんなの理想のクラスじゃない。私頑張ってるのに何が足りないんだろう。誰か仲間外れになっている子はいないか、勉強が楽しくない子がいないか」と、目を配っているつもりなのに、どこまでやっても足りない。そう言って取り乱し始めた。大事なクラスメイトを忘れるなんて、きっと私が楽しい思い出を作ってあげられなかったのかな。自分以外の人が担任なら、こんなことは起きなかったのかも もう私が担任じゃ、皆が可哀想 手あたり次第の悩みをぶちまける。
高槻は平原の手を取り、ちなつが転校先でちゃんと過ごせていることを知らせる。生方も平原に「ちなつちゃんは、このクラスが楽しかったと言っている」と、その様子を伝えた。しかし、神倉たちがそうでもなかったことを気に病むと、高槻はこう言って平原を諭した。
高槻:あなたの言う理想のクラスは、大人の価値観の理想じゃないですか?忘れることも子供にとっては成長の証です。子供の毎日は初めてで溢れてるんだから。
平原は落ち着き 気が楽になりました。 と言い、その声はもう歪んではいなかった。高槻にハンカチを差し出されたとき、教室のロッカーは安心したかのように、音を立ててそのドアを開けたのだった。
高槻の研究室にて
「頭をおさげください。」
鈴の音を鳴らした生方が巫女の装いで、うやうやしく高槻と尚哉の二人を祓う。
これから、5年2組のお祓いに出かけるようだ。
生方が出ていくと、高槻が尚哉に飲み物をすすめる。
何飲みたい?選択肢はココアかコーヒーか紅茶かほうじ茶。紅茶とほうじ茶はティーパック仕様、因みにココアは初めてココアパウダーを作った国、オランダ産だよ。
コーヒーをお願いします。
おススメだよっ!
甘いもの苦手なんで。
大仏柄のマグカップにコーヒーが注がれ、尚哉の前に出される。(尚哉:え、大仏。大仏なの?の顔)そして、自分のカップにこれでもかとマシュマロを入れたココアを用意する高槻にも驚く。
(唇にのこったマシュマロの泡を指で拭き取る仕草をしながら)このレポートの件だけど、不思議なお祭りに迷い込んだ少年は、そこで何か食べたんじゃないかな。(目の前に尚哉が書いたレポートを置く)
どうしてそう思うんですか?
(ボードの前に歩き出し)どこかに行ってその場所のモノを食べる行為には、その共同体に属するという意味があるんだよ。古事記に出てくる黄泉戸喫(よもつへぐい)がまさにそれだ。(ボードに文字を書く)イザナミは死者の国のモノを食べたから、その国の者となってしまった。少年が嘘が判るようになったことも、異界のものを食べることによって向こうの世界に半分足を踏み入れてしまったからだと思う。嘘が判るようになった少年は、辛い思いをしたと思うな。(尚哉の形相が変わる)
大人たちは自分の持っていない能力を持った年下の人間を嫌うから。
やっぱりこれは、君自身が経験したことなんだね。
ここには「少年は他人の嘘が判るようになってしまったそうです。」と書かれている。「なったそうです。」ではなくて。
これは、少年が嘘が判るようになったことが否定的に捉えられていると
君が知っている証拠だ。
深町君は時々顔をしかめるよね。
もしかしたら君には、嘘がなにか他の人とは違う音で聞こえてるんじゃないかな。
嘘を聞くと、声が歪むんです。
それは、お祭りに行った後からなんだね。
正確に言うと、「祭りで飴を食べてから」です。
青い提灯の祭りで(尚哉の回想)
祖父- 吉満寛人 に社殿へ連れて来られた子供の頃の尚哉-嶺岸煌桜。
台の上には、尚哉から見て右から「りんご飴」「あんず飴」「べっ甲飴」が並んでいる。
祖父はひとつを選べと言う。
尚哉:飴?これを食べるだけでいいの?
祖父:注意して選べよ、りんご飴を選べばお前は歩けなくなる。あんず飴を選べばお前は言葉を失う。べっ甲飴を選べばお前は孤独になる。
*********************
歩けない大変さや、言葉を失う辛さは想像できたけど、子供だったから孤独になるって意味がよくわからなかったんです。だから選んだ。嘘が判るようになってからも、初めはなぜそれが孤独と繋がるのか分かりませんでした。でもそのうち気が付いたんです。嘘を見抜いてしまう人間なんて、誰もそばにいて欲しいと思わない。友達も・・・親もです。
なるほど。
ということなんで、失礼します。
背を向けて部屋を出て行こうとする尚哉に、高槻は言葉を投げかける。
君はもうここの人間だよ。
ここのコーヒー、飲んだだろ?
尚哉が振り返る。
だからもし、話し相手が欲しいときはここに来ればいい。
僕は君の前で嘘は言わないから。(尚哉に歩み寄る)
何より・・・
素晴らしいよっ!
(抱きつかれる尚哉:へ?俺今告白しましたよね?孤独って言いましたよね、聞こえませんでした?コ・ド・クって。)
僕は怪異を経験した人間と初めて出会った。
君との出会いは事件だよっ!
いや、今、事件に会ってるのは俺ですけどっ!(汗)
強く抱きしめられ、高槻に放してくれるようなんとか敬語で伝える尚哉。
ゴメン、痛かった?
いっやっ、痛くはぁないですけど。こういうのどういうリアクションしていいかワカラナクテ。
ゴメン。
お、俺この後授業あるんで失礼しますっ!
逃げ出すように研究室を後にする尚哉。
ベンチに座り、気を取り直してイヤホンをつけかけてやめる。ずっと聞きたかった風や木々の揺れる音が聞こえた。
(尚哉の声で)
先生と出会った意味は、当時はまだよくわかってなくて、この大学に来て良かったかもな。と思った程度だった。
あの時はまだ、先生にも大きな秘密があると知らなかったから・・・。
研究室で
一人尚哉のレポートを見つめる高槻。
やっと見つけた。
そう言って、感慨深げに目を閉じる。
再び瞼が開いたとき、その両目は青く光っているのだった。
***********************
第1話(その3)終了です。 およそ、12000文字のテキスト乙
お疲れ様っす。
その3の描写を細かく記載するために、1話を敢えて3分割させていただきました。
簡単に「女王の教室」のアンチテーゼで終わらせないのが憎いですね。
そして、神社~神話のくだりはあの時とっても必要になります。
水煮がどうなったかはミステリーですが。
お寺ではなく神社で起きたことですから、神話へ話が流れるのは当然っちゃ当然ですな。
wowowで、エピソード1の1話をオンデマンドで視聴できると気づいたオラ。
いそいそと見逃した第1話の書きおこしをしています。
1話の流れ全体を知りたいので、既に通しで1回見ています。
よくよく思い出すと、8月の本放送をテレビをつけっぱにしてそのまま寝落ちしてたらしく
所々、見覚えというか聞き覚えがあります。(録画設定は失敗していた)
大事な1話ですし、負け惜しみで言うわけではないですが
今度で終わろうと思っている第1話(その3)について
あの小話、意外と大事です。
ここテストにでます ( ー`дー´)キリッ
むしろアレをのせるために、話を3分割しないと不自然だったのです。
そういうことで、楽しみにしてくださる方がいるのかどうか分かりませんが
前クールのドラマ「コールドゲーム」のセリフのやうに「トラスト・ミー」なのであります。
よろしくどうぞ。
尚哉の部屋
スマホが鳴り続ける音で起こされた尚哉(青和大学文学部の新入生)神宮寺 勇太
母 - 小林さやか からの電話のようだ。
寝起きの声で電話をとる。
母:尚哉、一人暮らしでもちゃんとやってる?
尚哉:ちゃんとやってるよ。
母:お母さん、尚哉がいないと寂しくて。
朝からこんなことで目を覚ますなんて、高槻の研究室を目指す足取りも重くなりそうだ。
ドアの横にある小窓を覗き込みながら、研究室のドアを恐る恐る開ける尚哉。
すると、まるで事件現場のように書類や本が散らかった床に、被害者かのような恰好で女性が横たわっている。
救急車を呼ぶか尚哉が尋ねると、どうやら彼女 生方瑠衣子(高槻の研究室に所属する大学院生) - 岡田結実 は
床で頭を冷やして気持ちよく寝ていたというのだ。
高槻がいると思ってやってきた尚哉に、生方は新入生への自己紹介をする。
生方:彰良先生ほどじゃないけど私も民俗学の研究をしているから、良かったら内容を話してみて。
若干押しの強さに怯えながら、壁に追い込まれた尚哉は彼女に相談内容を話す。
尚哉:バカみたいって言われるかもしれないですけど、コックリさんのことで・・・。
高槻:コックリさん!!!今、コックリさんって言ったね。
研究室に目を輝かせながら、高槻が入ってきた。
尚哉が、自分は高槻の講義を受けた学生であることを説明しようとすると、高槻は服装からスラスラと尚哉の座っていた席の位置を話し始めた。
生方曰く、彰良先生は、一度見たものは忘れないの。ということらしい。
尚哉は高槻に、昨日公園で 大河原智樹(第四小学校5年2組の児童) - 千葉新 から聞いた話をする。
尚哉:その小学生は嘘は言ってないんですけど、親は信じてなくて・・・。
素晴らしいっ!否や高槻は椅子から立ち上がり、
コックリさんに会いに行こうっ! ピクニックかヒーローショーでも見物に行くようなテンションで、研究室を出ていく。
第四小学校 校門前
校門の前で、尚哉は高槻に最近の小学校は簡単に中に入れないことを話すと、高槻はそれを分かっているふうで
わざと防犯カメラに映るよう振舞っている。
高槻:これでも常識はわきまえてる。
尚哉:(これでも)・・・はぁ。
名前も聞かずにここまで来たため、高槻がそのことを話すと尚哉は自身の名前を告げる。
高槻の脳裏には、青い提灯の祭りの話が書かれたレポートの名前が浮かんでいた。
校門前で二人の男性が話しているのを見て、副校長の真鍋和夫(第四小学校の副校長) - 温水洋一 が対応に出てくる。
高槻はここぞとばかり自身の名刺を差し出し、コックリさんが学校に及ぼしている影響(集団ヒステリー)について真鍋に話し、自分の民俗学の研究が役に立てるのではないかと、真鍋に学校立入りの許可を得る。
学校内にて
真鍋の案内で、高槻と尚哉が5年2組の教室にやってくる。道すがら真鍋が二人に状況を説明した。
先週の放課後、女子児童3人
神倉里帆(第四小学校5年2組の児童) - 米村莉子
石井あかり(第四小学校5年2組の児童) - 船附純白
光村杏奈(第四小学校5年2組の児童) - 木村夏蓮
がコックリさんを行ったという。
このような騒ぎになることを心配した学校側は、コックリさんを禁止していたのだがと真鍋は残念がる。
教室を見回す高槻。教室には担任の平原まりか(第四小学校5年2組の担任) - 志田未来 と コックリさんを行った生徒の一人 神倉 がいた。
高槻は神倉に歩み寄って自己紹介をし、コックリさんには何を聞いたのか尋ねた。
彼女は、成績が上がるかどうかとかを聞いたといい、他の子は何を聞いていたか高槻に聞かれると石井は「ピアノが上手になるか」、光村は「父親に犬を飼ってもらえるか」を聞いていたという。高槻が念を押しても、聞いたのはそれだけといい。その後、勝手に十円玉がグルグル回り「つ」「ち」「な」を指し、そのうちそれが「ち」「な」「つ」になったというのだ。
その時、掃除道具のロッカーの扉が開いた音に驚き、神倉は「お願い、許して。」と言って教室を駆け出ていってしまった。
追いかけようとする平原を制して、真鍋が神倉の対応に出ていく。
平原は高槻に対して、あれから授業に参加できなかったがやっと教室にきた神倉を怖がらせたことを怒る。
高槻:怖がっているのはコックリさんが子供たちを連れて行こうとするからだそうですね。
平原:はい。
高槻:何があったか教えてくれますか?
平原は職員室にいたのだが、子供たちの叫び声を聞いて駆けつけてみると、「コックリさんが帰ってくれなくなった。」と空いた窓の横にあるロッカーにコックリさんが入っていったと 神倉たちは平原に話した。
高槻:神倉さんはあのロッカーをみて「許して」と言いました。そしてその前に話したのは、コックリさんが「ちなつ」と指した話だった。何か心当たりがあるんですか?
平原:「みずぬまちなつちゃん」のことだと思います。この学校では4年から6年までクラス替えがなく、ちなつちゃんは4年生で2組になった3年間一緒に過ごすはずでした。でも、大病をして学校に来られなくなって、そのまま・・・。
素晴らしい。尚哉「え?」、平原「え?」
完璧です。子供たちのであふれる昼間の教室が日常なら、放課後の教室は非日常。故に放課後の教室には怪異が生まれる。コックリさんの暴走からロッカーの怪異に繋がって、その裏付けとして浮かび上がるかつての同級生の霊。
僕もぜひ、別の世界に行ってみたい。
語りかけながら平原の手を取り、自分に引き寄せる高槻・・・。危なさにひいてる、ドン引きしてるよ、尚哉。
あーた、ミュージカルの王子さまですか?
いそいそと自分からロッカーに入り、尚哉に扉を閉めるよう催促する高槻。
高槻がふざけているように思えた平原は、ちなつは死んだわけではなく出席できないまま進級し、療養のため転校したのだと怒りだす。ロッカーから頭にクモの巣をつけたまま身体を出し、悪びれる高槻。私のクラスの児童になんてことを、高槻を責めるような目で見る。
尚哉は高槻の頭についた蜘蛛の巣を取り除きながら、俺なんかが言うのもなんですが、もう少し言動には気を付けた方がいいんじゃないですか?と高槻をたしなめる。
高槻:深町君は優しいね。
尚哉:いや、そういう問題じゃなくてですね・・・。
ロッカーから出てきた高槻は、平原にコックリさんに使用した紙を見せて欲しいと依頼するが、「すぐに燃やしてしまった」と、どうも歯切れが悪い。
教室を出た三人。
平原:子供たちが安心できるよう、よろしくお願いします。こんな事がある前は、このクラスは友達想いのいい子で、一体感があったんです。
どういうことか、尚哉にはその声が歪んで聞こえた。(高槻は、尚哉の表情を見ていた。)
夜:佐々倉古書店で
店主の佐々倉花江 - 和泉ちぬ が営む古書店に、高槻と尚哉が入ってきた。高槻のことを「彰良ちゃん」と呼び親しい女性らしい。ここはレア物の民俗学の研究の古書が揃っていて、研究に役立つと尚哉にアドバイスする。まだ民俗学を専攻するつもりではないことを尚哉が伝えると、高槻は大学では何を勉強したいのかと尋ねる。尚哉は「まだわからないんです、親と離れて一人暮らしがしたかっただけ。」と、曖昧な答えをした。
高槻:そ、僕も一人暮らし。自由でいいよね。
踏み込んだ話をされずに、少し安心する尚哉。花江が、高槻に頼まれてセレクトした古書を持ってくる。コックリさんについての知識を高槻に聞かれた尚哉は、「交霊術の一種だとか、来るのは低級な動物の霊だからあまり良くない・・・程度です。」と答えた。
高槻:よく知ってるじゃないか、コックリさんはこの字を充てられることが多いんだ。(古書に「狐狗狸」と表記されている)字のとおりかつては狐の霊が現れるとされていた。コックリさんは歴史の中でいくつも形を変えてきたけれど、5年2組で行われてきたのは一番有名な、こいつを使ったものだと思う。(古書に挟まれたコックリさんの紙を開いてみせる)
高槻の問いに尚哉がコックリさんをやったことがないと答えると、やってみようか と二階へ上がっていく。
十円玉に手を置いて「子供だましだと思っても、緊張するでしょ?」と言われて、思わず上腕をほぐす尚哉。
高槻は、上腕をほぐす尚哉をみて「正解だ」と伝える。硬貨に手を置いて緊張状態に置かれることで無意識に筋肉が動く「不覚筋動(ふかくきんどう)」が起きると言われており、そのせいで動かしているつもりがなくても硬貨が動く。それに加えて人間の潜在意識が硬貨をある方向に動かすと言われている。例えば質問してみようか。と言い出した。
高槻は、コックリさんに尚哉が大学に来て楽しいと思っているかを尋ねた。
すると、二人の手を載せた十円玉は「はい」の周りをまわりながら「いいえ」を指した。
高槻:やっぱり君は優しいね。深町君は僕の前だから「はい」と答えるべきと思っている。でも「いいえ」と答えた方が正直だとも思う。その迷いが不覚筋動と一緒になって、この十円玉を動かしているんだよ。この潜在意識を「予期意向」と呼ぶ。
ここから僕が考えたことは、神倉さんたちがちなつちゃんになにか強い想いを抱いていたのであれば、十円玉が「ちなつ」と動くことがあり得るということ。
尚哉:強い想いって何ですか。
高槻:例えば、罪悪感・・・かな。
青和大学 高槻の研究室にて
生方がフィールドワークから戻ってくる。みずぬまちなつについて、確かに療養のため転校しており今は治療の成果が出て「第四小学校は楽しかった。」と言っているそうだ。尚哉は成果について感心していると、民俗学の院生はフィールドワークが得意であることを生方に自慢される。高槻はいじめの可能性はないようだと言う。生方が尚哉に、「いじめがもしあったらコックリさんで「ちなつ」と出る可能性があることを高槻が考えた」と伝える。
しかし、潜在的な動機がないとすると、合理的な説明が残念ながら思いつかない。これは正真正銘の怪異だよね。と高槻が言う。尚哉が堪らず立ち上がり、(平原の声が歪んだことを思い出し)でもあのクラスにはなにかあると思います。少なくとも平原先生は児童たちが友達想いだとは思っていないです。と言い出した。生方は、自分の調査内容を疑うの?と訝るが尚哉はそこを否定する。高槻が間に入り、わかった怪異以外の可能性も考えてみよう。と言うのだった。
公園の小川(ビオトープ)で
生方は、虫眼鏡で水際の草を見ている高槻に「尚哉が何か特別なのか」を尋ねる。怪異にしか興味がない高槻が、尚哉の話に耳を傾けたからだ。高槻は思い出し笑いなのか、微笑みながら「特別優しいってことくらいかな。」そう質問に答えた。
少し離れた所に、智樹とコックリさんに参加した残りの女子2人を連れた尚哉がやってくる。
高槻が子供たちに挨拶をしていると、てんとう虫を見つけた生方が駆け寄ってくる。
ヨーロッパでは、てんとう虫が身体にとまると幸運が訪れるという言い伝えがあるのだそうだ。
子供たちはてんとう虫を欲しがらない、幸運には興味がないのかな?と、今度は高槻が桜の木を指さす。
舞っている花弁が、地面に落ちるまでに捕まえたら願いが叶うと言われるらしい。
女子が近寄ってきて「掴めたらサッカーが上手くなりますか?」と尋ねる。彼女はサッカーをしないのにそんなことを聞いてきた。高槻は、記憶にあったあることを思い出す。(教室に貼り出された絵に、サッカーをする少年が描かれており「千原康太」と名前が出ている)
高槻:そうか、そういうことか。
高槻は、もう一人の女子に近づく。指に巻かれたカットバンを見て「このおまじない効くといいね。」という。(少女は指を隠す)
女子二人に、最後にコックリさんに何か質問したことをこっそり教えて欲しいと尋ねる。
女の子がカットバンをずらして中を高槻に見せ、耳元で質問の内容を話す。
高槻は歩き出しながら
残念だけど、そう簡単に本物の怪異とは出会えないみたいだ。
そう言って、右手の人差し指を鼻にあてた。
26と27だ。高槻は何かを確信したようだ。
第1話(その2)は、ここまで。およそ1万2千文字でストッピングっ 30:00
深町尚哉(10歳時:嶺岸煌桜)は、熱を出して寝かされていた。
ここは尚哉の祖母 - 中島はるみ の家。
夏休みを過ごす予定だったが残念ながら熱のせいで、従兄:和也 - 生駒星汰 と
行くはずだったお祭りにも出かけることができなかった。
従兄に、赤い提灯のお祭りが楽しかったことを聞かされる。
祖母も枕元にやってきて
お爺ちゃんが生きていれば・・・お祭り張り切っていたわよねぇ。
そう言って、昨年亡くなった祖父がいないことを残念がる。
従兄は、ヒーローの赤いお面を尚哉に渡してくれた。
真夜中
眠っていた尚哉は、祭りの太鼓の音で目が覚める。
お祭り、まだやってる?
体調が少し良くなったし、せっかくだから見に行きたい。
音に誘われるように、太鼓の音を辿り畔に沿って裏山の神社へ歩いていく。
赤い提灯がいっぱい点いていて屋台もいっぱいあって、凄くにぎやかで楽しかった。
和也はそう言っていたが、提灯の色は青く、皆が無言でお面を被り
太鼓櫓の周りを踊っている。
不思議に思いながらも、和也にもらった赤いお面を被り祭りの中へ入っていこうとする尚哉。
こんなところで何をしている。
尚哉が振り返ると、そこにいたのは亡くなったはずの祖父だった。
祖父:尚哉、お前はここへ来ちゃだめだ。こんなところへ来ちゃいけなかったんだ。
代償は払わなければいけない。
尚哉:代償?
8年後、青和大学キャンパス
先輩学生たちが、新入生のサークル勧誘活動をしている。
尚哉(青和大学文学部の新入生)神宮寺 勇太 は、大学1年になっていた。
賑やかな学内を、一人で歩き出す尚哉。
(回想)
祖父:代償を払わなければいけない。お前はこれからの人生、一つ背負っていくことになる。
そういって、祖父は幼い尚哉の手をひき社殿の中へ入っていく。
201号教室 民俗学Ⅱの講義
(尚哉の声)
なぜこの講義を取ろうと思ったのか、よく覚えていない。たまたまその時間に他に取りたい講義が無かったのかもしれない。
新入生たちがざわついている。正面のスクリーンには、民俗学についてのスライドが上映されておりコックリさんや幽霊の絵が映し出されていた。
尚哉に話しかけてきたのは、難波要一(尚哉の同級生) - 須賀健太 うろ覚えの名前を羅列してくるので、尚哉はつけていたイヤホンを外し名前を名乗る。外した拍子に、学生たちの声が尚哉の耳に流れ込んでくる。
女子A:私こんなに仲良くなれそうな人初めて。
女子B:大学っていいよね、チョー楽しい。
女子C:(誘われて)ゴメン、その日バイトあるんだよね。
尚哉は、耳に違和感を感じているのか少し顔を背け始める。
(難波と話していた男女)
男子:高校では長距離の学内記録もっててさ。
女子:へぇ、すごーい。
尚哉の耳に届く声は、彼にどんどん不快感を与えているようだ。
女子D:ていうか、その服似合ってるよ。
女子E:昨日の飲み会楽しかったね。
会話を楽しむ学生たちから離れた席を目指して、耳をふさぎ苦しそうにする尚哉。
その様子を後ろから眺めている男性がいた。
スライドが祭囃子に切り替わると、驚いた顔でそれを見る尚哉。
一瞬、青い色の提灯を思い出している。
スクリーンが巻き上がり、
民俗学Ⅱへようこそ。
そう言って後ろの席にいた男性が壇上に向かって階段を降りてくる。
この授業を担当する准教授の高槻彰良(青和大学文学部の准教授)伊野尾 慧 です。
女子:先生?顔ツヨっ!
男子:イケメンだな。
スマホからまだ目を離さない難波に、高槻は民俗学についてスマホで検索するよう促す。
難波:民間伝承を素材として一般庶民の生活・文化の発展の歴史を研究する学問・・・です。
軽く礼を伝えながら、講義台へ向かう高槻。
高槻:中でも僕が興味を持っているのは、現代の怪談と言われる「都市伝説」です。怪異なんて、自分には関係ないと思っている人もいるかもしれない。高槻:でも、怪異は特別なものじゃない。日常と日常の間の非日常に潜んでいる。例えば「祭り」これこそ日常と日常の間の非日常だね。この授業は、皆の興味のある話題から進めたいと思っています。そこで、今まで聞いたことのある不思議な話について、簡単にレポートにまとめて授業の終わりに出して欲しい。(ざわつく学生に)難しく考える必要はないよ。(ボードにビミョーな口裂け女の絵を描く)例えば、これでもいい。口裂け女だ。
いや、それWAONのマークにしか見えませんがなっ!
ボードを見た学生たちは笑っており、尚哉も顔を少し横に向けて笑う。
(尚哉の声)
心の奥底で何かを求めていて、自分でも気づかずに引き寄せられたのかも知れない。
・・・この人に。
オープニング の6000文字超え!
雨降りの公園、トンネルを通り抜けようとすると小学生男子らしい子供 大河原智樹(第四小学校5年2組の児童) - 千葉新がうずくまっている。
通りがかった尚哉は、心配して声をかける。
尚哉:なんか怖いことでもあるの?
智樹:ねぇよ。
いきなりくらった不快感に、尚哉は顔を横に向ける。
尚哉:聞くよ。
智樹:コックリさんに連れていかれる。
尚哉:コックリさんて、占いとかするヤツ?
智樹:そいつが学校に出て、俺たちを連れてこうとしてる。どうせ嘘だと思ってんだろ。
諦め顔で、傘を拾い歩き出す智樹。いや、信じる。そう言った尚哉に、驚いて振り向く智樹。
一緒に歩きながら、クラスで怖がっている様子を聞く尚哉。
智樹の 俺は怖くないけどさ。 という強がりがなんだか可愛く思えた。
団地の前で、智樹の母親-吹越ともみ が待っていた。
遅くなった智樹を叱る母親に、尚哉はコックリさんを怖がっている話をするが、母親は息子が他人の気を引こうとウソを言ったのだろうという。尚哉は、智樹が嘘を言っているわけではない、本当に怖がっているので話を聞いてやって欲しいと頼む。母親は何を根拠にそんなことを言うのかと、とりあってくれずに智樹を家へ連れ帰って行くのだった。
子供の頃の尚哉の回想
尚哉は橋の上で、母親- 小林さやか に「誰かが嘘をつくと声がグニャっと曲がるからわかる。」と伝えるのだが、母親は怒って尚哉をなじるだけで信用してもらえなかった。
そのことを思い出した尚哉は、団地をあとに戻っていった。
高槻の研究室(尚哉の声で、彼の書いたレポートが読み上げられる)
これは噂で聞いた話です。ある少年が青い提灯の祭りに迷い込んだそうです。その祭りでは全員がお面をつけていて、無言で踊っていて、亡くなったばかりの少年のおじいさんがいました。その祭りから帰った後、少年は他人の嘘が判るようになってしまったそうです。/ 深町尚哉
他人の嘘が判るようになってしまった・・・か。高槻は、そのレポートを読んで何か思いを巡らせているようだった。
折角だから第1話は、惜しんで起しています。今回はその1ということで、ここまで。12:09
大河原智樹(第四小学校5年2組の児童) - 千葉新
大河原(智樹の母) - 吹越ともみ
尚哉の祖父 - 吉満寛人(第4話)
尚哉の祖母 - 中島はるみ
尚哉の母 - 小林さやか
和也 - 生駒星汰
WOWOWのオンデマンドで、とりあえず第1話を見てやったぜぇぃ。
金・土・日で、なんとか。1話書き込むぜぇ。
参るどだろぉ~。(ぃゃ